魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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人間になっちゃった③

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 ジャンヌは足に白い炎を噴射し、ユビワを抱くウィムについていく。
 今夜は曇ってしまい、月からの『光』の吸収ができない。かなり消費するから飛びたくない。
 ウィムは半壊している城に降り、バルコニーから入る。
 ジャンヌも降りて中に入ってみれば。
「お久しぶりです。聖女様」
「う!」
 その声で鳥肌を立ってしまった。そこに白の吸血鬼のイーグス・フォードがいた。
「おまえ・・・」
 吸血鬼は聖女の血が魅力のようで噛みついても『光』に耐え切れずに死ぬ。だかイーグスは『光』に抗体を持ち、吸うことができる。
「こっちは会いたくないわよ」
 よく部屋を見れば、壁から伸びている木の枷に拘束されているアキセがいた。しかも長い髪にドレスまで着て。
「何してるの」
 冷めた目を向ける。
「お前が無視した結果だろうか!」
「無視?なんのことよ」
「いましたよ。あなたがあの女の子を助けた時に」とイーグスが言う。
「いたの」
「とぼけるにもほどがあるんだか・・・」
 アキセは少しキレ気味に言う。
 アキセの顔色が悪い。体調が悪いようだ。
「なんでこいつもいるわけ」
「折角ですから一緒に楽しみましょうかと」
 肩を触られる。
 イーグスに睨みつける。
「それにあの女の子のことも」
 イーグスが耳元で囁く。
 ユビワのことを探っている。ウィムはユビワを抱きながら窓際に寄り沿う。
「不思議なんですよね。人間ではないのは分かります。何もないところから武器を取り出せたことにも。それにあなたがあの子のことをユビワと呼んでいることにも」
 そういえば、イーグスからユビワを助けた時に名前で言った。
「まさかとは思いますが、コルンの発明品の指輪が人になったということですか」
 鋭い。
「思い込みにもほどがあるわね。何、コルンの発明品を狙っているの」
「確かに魅力的ですが、これ以上魔女に目をつけたくないので。それにあの男に注意を
向いてくれないじゃないですか」
 風評被害にアキセを当てるということか。
「まあ、すぐに答えなくてもいいですよ。じっくり訊きますから」
 上着を下ろされる。
「仕事を終わったばかりなので、少し弾みたいんですよ」
 やっぱりこの展開。
 イーグスが肩に噛もうとした時だった。
 何もないところから四角の箱が現れる。四角の箱が地面に触れた途端に割れ、黒い球体が姿を見せる。黒い球体は、文字や記号が青く光り、黒い槍が四方八方に伸びる。黒い槍が壁に当たっても、黒い槍からクモの巣のように黒い槍が伸びていく。
 ジャンヌは咄嗟に床につく。ウィムとイーグスは避ける。
 ウィムからユビワが離れた。今、目が見えていないから横たわっているだけ。そこに黒い槍が迫ってくる。
あの球体には文字や記号が描いていた。つまり、魔術で作ったもの。白い炎を当てれば、浄化させる。
 ジャンヌは白い炎を飛ばし、ユビワに迫る黒い槍を浄化させる。すぐにユビワの元に行こうとしたが、アキセが倒れているユビワを抱き、部屋から抜ける。
 いつの間に。
 アキセの木の枷が無くなっている。黒い槍で拘束具を壊したところか。
 すぐに追いかけようとしたが、肩に衝撃。背中に重みも感じる。
イーグスが血を抜いていく。
「この・・・」
 力が抜ける。動けない。
 ウィムは大きく手を振り、風の刃を飛ばし、黒い球を壊す。黒い槍が塵となって消える。
「生意気あの子」
「どうするおつもりで?」
 イーグスはウィムに訊く。
「もう少し楽しみたいな」
「僕もです」
 部屋が崩れかけている。
「僕は場所を変えます」
「そう。じゃあまた後で」
 ウィムは姿を消す。
「では移動しますか」
 イーグスが笑顔で見るので、ジャンヌはにらみ返す。
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