魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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再現された⑦

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 その時だった。
 アキセは急に飛ばされ、木にぶつかる。
「う!」
 地面から根が伸び、木ごと体を巻かれる。
「は~危なかった・・・」
 声をした方へ向けば、イルがいた。


 崩れそうな洞窟の中で詩う。動けない体を土の柱で押し、洞窟から脱出する。そのまま川に落ちるも地上に上がる。
 どうやら痺れは取れたようだ。
 急いでジャンヌの元で駆け付けようと、精霊術の風でジャンヌの居場所を探す。やはり隠れ場所にいない。誰かと一緒にいるようだ。
 風の精霊(スピリット)の声に辿っていけば、ジャンヌはアキセに押し倒されていた。
 かなり危ない。
すぐに詩い、風の球でアキセを吹き飛ばし、アキセを木ごと根で絡める。
「は~危なかった」
 イルは安堵の溜息を吐く。
「なんだ。もうつまらない」
 宙に浮いていた女が風と鈴の音と共に消えた。
 おそらく魔女だろう。
――よかった。魔女と戦わなくて済んだ。
「うわああああああああああああああああああああああん」
 ジャンヌは泣きながら、イルに抱き着く。
「怖かった~」
 本当にジャンヌの面影がない。泣き虫で人見知りで。
 あの性格になるまでジャンヌにもいろいろあっただろう。
「イル・・・」
 声が違う。
 見下ろせば、ジャンヌが元に戻っている。
「え~と・・・」
 ジャンヌがきょとんとしている。
「覚えていないのか」
「うん。何かあったの?」
 ジャンヌは首をかしげる。
「簡潔に言うとあいつのせい」
 イルはアキセに指を指す。
「分かった」
 ジャンヌは十字架を取り出す。
「ちょ!俺も被害者だから!」
 ジャンヌと一緒にアキセを痛めつける。



 ジャンヌはアキセと一緒にいたところまでしか覚えていなかった。ここまでの経緯をイルから聞いた。
 その結果、ジャンヌは顔を隠す。
「どうした?」
「いや・・・その・・・子供の私って何か言っていなかった?」
「何にも」
 イルは戸惑いもなく答える。
「そう・・・」
ウソを使っていないことを祈りたい。
「まあ可愛げはあったな」
「う」
 さらに顔を隠す。
「あの頃はね。まだ・・・ね」
 まだ聖女に覚醒していないから。
「でも助かったよ。ありがとう」
 ジャンヌはイルに言う。
「おまえの苦労もなんとなく分かった」
「だからイルを誘いたくなるの」
「はいはい」
 イルは呆れるように言うが、真面目な顔になった。
「なあ。ジャンヌ。話があるんだ」
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