魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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再現された③

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 アキセは思い返す。


「しつこい。来るな。消えろ。ついてくるな」
 アキセはジャンヌの後を歩いていた。
「んなよ。一緒にいてもいいだろ。ガードとしてさ」
 ジャンヌが身震いをする。
「あんたが絡むとロクなことがないからよ!」
 その時、ジャンヌは腕を上げ、上から何かを掴んだ。それはボールほどの白い球だった。しかも5と数字が表示している。
「何これ」
 確かこれはと思い出そうとしたが、爆発する。
 アキセは咄嗟に後ろに下がったが、ジャンヌは爆発に巻き込まれてしまった。
「ジャンヌ?」
 煙が晴れれば、幼いジャンヌだった。
――うわージャンヌにこんなかわいいことがあったのか。
狂暴で短気で暴言を吐くとは思えない可愛さだった。
 ジャンヌは、涙目になる。
「え?!」
 ジャンヌを持ち上げられたのは、赤いとさか頭の紅孩児だった。
「あの聖女でもこんな時があったのか」
「んだよ。おまえかよ」
 召喚した銃を構えようとしたが。
「おっと!」
 紅孩児が赤い槍をジャンヌに向ける。
「分かるよな」
――知性が低いくせに人質という手段を使うのか
 ジャンヌが涙目になって暴れようとしている。
「こら!大人しく!」
 その隙に銃を撃つ。
 それはトリモチ弾で紅孩児の顔に当たる。その衝動でジャンヌから手を離す。ジャンヌは森の奥へと逃げる。
「んだよ。助けてやったのに、逃げるのかよ。たく」
 頭をかきながらアキセはジャンヌの元へ行こうとしたが。
「こら!」
「あ?」
 振り向けば、トリモチを燃やしながら紅孩児は怒鳴る。
「よくも俺の顔にトリモチをつけやがって!」
「窒息死しろよ」
「つーか、おまえらのせいであの後大変だったんだぞ!」
 そういえば、舞扇(ぶせん)の魔女ラセツ・コウジョの城を脱出してから見てなかった。
「部屋にも城の外にも原因不明で出られなくてずっとおふくろは怒るし。俺も危うくトラウマになりかけそうになったんだぞ!」
 ジャンヌとユビワは何を仕掛けたんだ。
「やっと城の外に出られても、部屋の方だってコルンのものだと分かるまで取れだけかかったと思う!しかも!」
 まだ続くのか。
「キンカクとギンカクよりも3日も説教を食らわせたんだぞ!」
 説教で済むのか。
「俺らを連行した罰だ」
 その時、頭に何かが当たる。よく見れば、あの玉と同じものが見えた。
「あ!」
 爆発を受けてしまう。
 自身の手を見れば、小さくなって、服も合わない。自身も幼くなった。
 またこの展開。いい加減逃れたいんだか。
 その時、背中を踏まれる。
「うわ!」
 見上げれば、「は~い」と風鳴の魔女ウィム・シルフだった。
 だから、上から落ちてきたのか。


 現在。


 指輪を奪われ、捕まってしまう羽目に。
「クソ・・・」
 急に檻が宙に浮く。
「あなたにもこんなかわいいとこあったのね」
 ウィムだった。風で檻を浮かせている。
「あのバカに入れ知恵しやがって」
「え~復帰祝いに手伝っているだけよ」
 ウィムは煽るように言う。
「それにしても5歳児に再現したはずなのに、なんで記憶がそのままなの?」
あの球体は、コルンの発明品『復元お年玉』で設定した年や記憶、服までも再現する道具。
そういえば、あの時に表示されたのが、5だった。つまり5歳の姿に再現されたということ。ジャンヌも5歳児にまで再現され、アキセと紅孩児のことも認識してなかった。
――あ。俺には子供の頃の記憶がなかったんだ。
 記憶がないから、体が5歳児になっても記憶は再現できず、服も当時の記憶を元に再現するから、大人の服のまま。それに魔力が手に入れたのもその頃ではないから、魔力も使えない。
「ふ~ん」
 ウィムは見つめる。
「それより」
 ウィムが指輪を見せびらかす。
「あ!返せ!」
 手を伸ばして指輪を取ろうとしたが、小さい手だったから届かない。
「さて、どうしようかな」
 ウィムはイタズラな笑みを見せる。
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