魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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再現された②

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 このまま出でもジャンヌが人質になってしまう。ジャンヌが怪我せずに助けられるとしたら。
イルは詩い、とさか男を穴に落とす。
「うわ!」
 その衝動で離れたジャンヌは森の中へと走る。
 意外にうまくいった。自分でも驚いてしまう。
 イルは穴を覗き込む。登れないほどの幅を狭く、底が見えないほどに深くした。姿が見えない。
「誰だ!邪魔したのは!」
 声が響く。生きているようだ。
「お前、何者だ?なんで狙っているんだ?」
 穴に向かって訊く。
「何!?あの聖女の仲間か!」
 やはりジャンヌとは面識あるそうだ。
「聖女とは何かあったのか」
「俺の頭をこうなった復讐だ!」
ジャンヌ。どうすればこうなる。敵を作っているじゃないか。
「おまえが子供に変えたのか」
「じゃあなきゃ、襲わないだろうか!」
ペラペラしゃべるな。普通ここまで話すか。
「どうすれば、元に戻れるんだ」
「そんなの知らん!」
 使い方分からないのに、使ったのか。
「他に仲間は?」
「それは教えん」
 変なところで黙りやがって。でも、この様子だと仲間はいるようだ。
「お前も邪魔するなら容赦しない!」
 底から赤くなっている。飛んでくるようだったので、精霊術ですぐに穴を埋める。
 ドンとぶつかった音がしたと思えば、地面から赤いとさかが生えた。
――この髪どうなっているんだ。
 念のため、さらに土を固めるように精霊術を使う。


 他に仲間がいるようだ。
 あとこんなことをできるとしたら、あんまり思いつきたくないがアキセしかない。
 そういえば、以前ジャンヌと一緒に転送ができた。魔術を使うことなく。あのコインに触れれば転送ができた。今の技術でできるものとは思えない。
 しまった。あいつの名前を出して訊けばよかったと少し後悔する。
 とりあえず、ジャンヌを探すか。


 匂いを辿りつけば、ジャンヌは木陰で泣いている。
 本当にあのジャンヌとは思えない。もう少し生意気な子供だと思っていたが。
「シスターサリー・・・どこにいるの・・・」
 シスターサリー。ジャンヌの知り合いだろうか。その人間を今呼ぶわけにもいかない。生きているかもどこにいるかも分からない。
 静かに近づく。ジャンヌと目が合い、小さく震える。
「おまえ。ジャンヌだろ」
「知らない。ジャネット・・・」
 昔の名前だろうか。
「俺のことを覚えていないか?」
「知らない・・・知らない・・・」
 記憶が子供のままのようだ。泣き止まない様子がない。どうしたものか。
「あ・・・」
 ジャンヌが顔を上げた。その先には自身の尾だった。
 子供になってもこの尾に反応するのか。
 イルは溜息を吐くも、尾をジャンヌの前に向ける。ジャンヌは少し警戒しているが、少しずつ触り、「柔らかい・・・」と尾を触る。
 これで落ち着ければいいか。
「おまえが襲ってきたあの赤い奴は追い払った」
「なんで・・・」
 ジャンヌは訊く。
「俺の知り合いに似ていたから」
「その・・・ジャンヌっていう人に・・・」
「そうだな」
「ありがとう・・・」
 ジャンヌは尾を掴みながら言う。
「でも・・・」
「ん?」
「もう一人いた・・・」
 まさか。
「どんな奴が分かるか」
「黒い服を着てて。黒い髪をしていた」
 結局あいつも関わるのかと一気に方が重くなった。


 洞窟の中に子供になったアキセが小さな檻の中にいた。
「クソ・・・あのとさかバカめ・・・」
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