魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
310 / 654

オカマシスターズ⑤

しおりを挟む
 以前、初めてオカマを見たのはユーベルだった。
 これはこれで癖が強い。
「あら~コゼットちゃん!思っていたより可愛いわね~」
 男の声で女性を強調するような声だった。どうやらレオンが目的のようだ。
「それにそこの男もいいじゃないの~私好み」
 アキセのことだろう。アキセの顔をしたレオンも青ざめる。
「あれ、もしかして聖女かしら」
「そうだけど」
「聖女がいるなんて訊いてなかったけど」
「誰から聞いたのよ」
「リリス様よ」
 もう察してしまった。これはリリスの差し金だということを。
「あら~ラムナちゃん~」
 別の声がした。そこには3人。話に訊いているリーズ、クルツ、カロッサだろうか。
――どれも濃いな。
「もう合流していたのね」
「探すのも大変だったのよ」とリーズは言う。
「ラムナちゃん。あの子でしょ。言っていたエルフって?」とクルツは言う。
「あら、可愛いじゃないの」とカロッサは言う。
「そうよ。リリス様から遠慮なく食べていいって」
 リリスめ。
 レオンが目的なら。
「ねえ。あいつを差し出すから、ここは見逃してくれない」
 レオンの姿をしたアキセを差し出そう。
「俺は!」
 レオンはガシっとすかさずアキセの首を腕で抑える。
「ん。そうね。私たちも別に聖女と喧嘩するつもりはないのよ。それで手を打ちましょう」
「よかった。魔女と違って物分かりがよくて」
「喧嘩する相手は選びますわよ」
 ジャンヌはレオンに親指を立て、引き渡すように合図を出す。
 レオンも頷き、首を絞めているアキセを引き渡そうとした時だった。
 急に一瞬光に包まれ、ぼっと音がし、光が消えた時には二人とも元の姿に戻る。
――タイミング悪い時に
「あら、私たちを騙そうとしたの」
 オカマたちの目つきが変わる。戦闘に入るような目つきだった。
「でも、渡してくれるよね」
 笑顔でラムナは言う。
「そっちの黒い方を渡すからそれで打たない?」
「話しが違うわよ」
 ドシっとラムナは一歩踏み出す。地面が揺れた。
「ごめんね。今回はエルフとその男と今夜したいのよ」
 今、アキセを追加された。
「だから、言ってるじゃないの。男の方をやるって!」
「狙った獲物は逃がすつもりはないから」
 その時だった。
「お姉様~」
 声をした方へ向けば、水色の長髪。黄色の瞳。ロングスカートとシャツとブラザーを着たユーベルがやってきた。
「間に合えた~」
 ユーベルは嬉しそうに言う。
「ユーベル。用事は終わったの?」
「ええ」
 ユーベルとアキセが目と合う。
 アキセは冷や汗をかく。レオンから離れ、走り出そうとした瞬間にユーベルは瞬時にアキセを抱く。
「お姉様。ダメよ。この人は私のなんだから!」
 ユーベルも逃がさないように力強く抱き着く。
「そうだ。思い出した。ユーベルの彼氏だった」
 リーズは言う。
「ちょっと待った!それは完全に誤解だ!」
「何よ。初夜はあんなに積極的だったのに~」
 ユーベルは顔を赤らめて言う。
「どっちかっていうとお前の方が攻めたから」
 どんなやり取りしていたのよ。この二人は。
「そうだ!いつでも狙えるし、久しぶりにお姉様とお茶しない?」
 ユーベルは提案する。
「で、その後で皆で今夜、いい男捕まえてやりましょう」
 今、どんでもないこと言ったような。
「あらいいわね」
「そうね」
「いいわよ」
「やりましょ!」
 ユーベルの提案にのるオカマたちだった。
「よかったわね。私がいて」
 ユーベルはアキセにウィンクしてオカマたちの元へと歩く。
 オカマたちはどこかに行く。
「「助かった~」」
 アキセとレオンが腰を引く。
 その時、どこから聞こえる笑い声が響く。
「あーあ、おもしろかった」
 木の枝の上で座っているよきの魔女リリス・ライラ・ウィッチャーがいた。
「リリス・・・」
 ジャンヌは言う。
「いい暇つぶしになった」
 それだけでこんな大事になったのか。
「待て!まさか暇つぶしで俺の・・・」
「そうよ。でもよかったわね。唯一の男の要素が無くならなくてすんだわね。面白かったからまたやろうかしら」
 レオンがリリスとは反対方向に足を一歩踏み出そうとした時に「どこに行くのかな」とリリスは瞬時にレオンに抱きつく。
「じゃあ、この子連れて帰るから。また遊んでもらってね」
「ちょ!」
 リリスは黒い羽をはらい、レオンと一緒に消える。
 何も動けなかった。リリスのきまぐれ一つで殺されるからだ。
 レオンには申し訳がないが、そのまま去ってよかった。
 その時、背後から胸を触られる。
「う!」
「これで俺を縄に縛ったことも引き渡そうにしたのもチャラにしてあげるからさ」
 アキセが耳元で囁く。
 プチ。
「気安く触るな!」
 ロザリオで振るが避けられる。
「あとこれも」
 指輪を見せびらかす。
「あ!」
 アキセは指輪をはめ、召喚した指飾りで記号を描き、風と共に消えた。
「たく・・・」とジャンヌは悪態をつける。


 その夜、オカマたちの前にリリスがレオンを差し出したという。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝
ファンタジー
庭師であった祖父の薫陶を受けて、立派な竹林好きに育ったヒロイン。 大学院へと進学し、待望の竹の研究に携われることになり、ひゃっほう! 忙しくも充実した毎日を過ごしていたが、そんな日々は唐突に終わってしまう。 で、気がついたら見知らぬ竹林の中にいた。 酔っ払って寝てしまったのかとおもいきや、さにあらず。 異世界にて、タケノコになっちゃった! 「くっ、どうせならカグヤ姫とかになって、ウハウハ逆ハーレムルートがよかった」 いかに竹林好きとて、さすがにこれはちょっと……がっくし。 でも、いつまでもうつむいていたってしょうがない。 というわけで、持ち前のポジティブさでサクっと頭を切り替えたヒロインは、カーボンファイバーのメンタルと豊富な竹知識を武器に、厳しい自然界を成り上がる。 竹の、竹による、竹のための異世界生存戦略。 めざせ! 快適生活と世界征服? 竹林王に、私はなる!

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

素直になる魔法薬を飲まされて

青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。 王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。 「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」 「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」 わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。 婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。 小説家になろうにも投稿しています。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...