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オカマシスターズ②
しおりを挟む2時間前
アキセは森の中で歩いていた時だった。
急に足元から根が伸びた。指輪から道具を召喚する暇もなく、根が体を拘束し、地面に叩きつける。さらに4本の土の柱が伸び、押し付けるように交差させる。
「な!」
「捕まえたぞ。ガルム」
訊いたことのある声。顔を上げれば、男装姿のレオンだった。
「なんだ。コゼットちゃんか」
「レオンだ!その呼び名は寄せ!」
レオンは怒声を上げる。
レオンにはリリスから「コゼット」と名付けられているが、本人は嫌がっている。
「つーか、俺にここまで拘束する?」
「するさ。姑息な手で逃げるだろ!」
こいつ。
「で、おまえの目的はなんだ?」
レオンがわざわざ捕まえにくるとはどういった理由だろうか。
「お前をリリスに差し出す」
「は!」
思わず言葉を失った。
レオンは思い出す。
レオンはよきの魔女リリス・ライラ・ウィッチャーのお気に入り。
男でありながら、女のような美顔。日々、リリスに人形のように遊ばれている。
そんなリリスから、「そろそろ女の子にしましょうか」と言われた。
つまり男をやめろということ。あそこを切るということ。
レオンは全力で逃げた。
「あ~思い出しただけで、吐き下がする」
レオンは震える体を手でこする。またリリスに何かされたようだ。
「あのリリスが俺なんかでつり合い取れるか」
「それは心配いらない」とレオンの口の端が上がる。
レオンが取り出した折り畳みの手鏡を見せられる。手鏡が眩しいほど光る。
目を開ければ、鏡の中にはもう一人のレオンがいる。
「え!?」
つまり、アキセがレオンに変身したということ。
「おまえ!」
声までもレオンだった。服までも。
「そのままあの魔女が納得するが、バーカ」
レオンが悪い笑みを見せる。
「まさか、その鏡!」
こんなことができるのは限られている。
「コルンの発明品」
「やっぱり!」
見たことある鏡だった。
以前、ジャンヌに色無の魔女を退治する際に使った鏡だった。あの後、コルンが改造したようだ。
「おまえ、いつから」
レオンに睨みつける。
「ジャンヌさんの紹介」
――ジャンヌ。教えやがったな。
「コルンがおまえに使うって言ったら、すっげー喜んでこれをくれたぜ」
コルンめ。
「おまえ。俺の姿に変身するつもりか」
「それはない」とレオンはすぐに返す。
思わず、言葉を失った。
「まあ、安心しろ。お前の姿は適当な奴に身代わりにさせて、評判を落としてやるからよ」
「おま!俺の悪評を広める気が!」
「もともと悪評は広がっている!」
生意気に返す。
「あ~あと」
レオンは詩う。
手に違和感。風が触ったような。
レオンの前に風に包まれた指輪を掴む。
「あ!」
「これも頼まれているんだ」
指輪はレオンの手に渡ってしまった。
「じゃあ、後でリリスと一緒に楽しんでくれ。俺は遠くから祈っているから~」
レオンは勝ち誇ったようにその場を勢いよく走る。
「おい!こら!」
後ろから物音がする。
「え!」
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