魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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雨粒の魔女⑤

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 ジャンヌはロザリオで払い、ビアムの首が離れる。
 その時、体だけ残ったビアムが裏拳する。
 ジャンヌは顔に受けるも、ビアムから距離を取る。
「ち。死に損ないが」
 ジャンヌは睨みつける。
「不意打ちサイて~」
 ビアムは、頭と体をくっつけながら言う。
「不意打ち上等だ!こおら!」
 ジャンヌは距離を詰める。
 その時、周囲の雨粒が、銃弾のように迫ってくる。白い炎を薄く張り、迫ってくる雨粒を浄化する。
「むう」
 ビアムは頬を膨らませる。
 一粒の『呪い』の量が少ない。これだけの白い炎の壁でも十分だが、それでも『光』の消耗を狙っているから、長期戦には持ちたくない。
 ビアムは領域が狭い。体が雨粒となって分解される。ただ雨粒になって、攻撃はしない。小さくなった雨粒が、『光』に耐えきれるとは思えないからだ。
 だったら。
 周囲に白い炎を波のように放ち、雨粒を浄化させる。ビアムが雨粒を作る前に、すぐに包み込む。
 ビアムの体が変わっていく。包まれる前に分解して逃げ出すつもりだ。
 すぐに白い炎を放とうとするが、ビアムの体から氷の針が伸びる。
――余計なことを
 ビアムは逃げることもなく、白い炎に包まれる。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ」
 さらにロザリオで白い炎ごとビアムを斬る。


 雨が徐々に弱まり、雲が明るくなってきた。
 アキセは木に体を預けている。
 アキセの手足に血がついているが、止まっている。よく見れば、手足に記号が描いている。それで血を止めているようだ。
そんなことより、すかさずアキセの胸倉を掴む。
「この際はっきり言う!」
 アキセに怒鳴る。
「え?」
 アキセが唖然している。
「どうせ、あんたは学習も懲りることもできない。消えろって言ったってしつこくついてくる。あんたの行いも許すつもりもない。信用もできない。だったら覚悟しろ!その分たっぷり痛めつけて利用してやるからな!」
 その時、日差しが届く。
「ふ」
 アキセが薄く笑う。
「こえ~女だ。それにお答えしようか。これからも」
 アキセに腕を掴まれ、じっと見つめる。
「ここまで言って。めげないあんたの精神にも呆れる」
 すぐにアキセから腕を払う。
「どうせ、さっきの約束なんて守るつもりも・・・」
「したんだけどな」
 その発言で思わず、目を見開く。
「そんなわけ・・・」
「ジャンヌが退治したから、守る必要がなくなった」
 アキセがまた軽く笑う。
「また!」
「そもそもも信じられないなら、なんで俺が魔女と戦うと思ったんだよ」
 思わず、言葉を失う。
「あの場から逃げるっていう選択肢もあったんだ。それに君が見捨てるっていうのも。なのに。魔女を退治に行くと思った。なんでだ」
「・・・う」
 思わず顔が熱くなる。
「つまり、俺のことをし・・・」
 ゴンガンゴンガンゴンガンゴンガンゴンガン。
銃弾のようにアキセを殴る。
「ふん!くたばれ!」
 ジャンヌはさっさと歩いていく。


 ジャンヌの脅迫めいたあの発言に笑ってしまう。別の見方だと追いかけてもいいことになる。
 アキセは思わず高笑いする。
「これからもからかってやる」とにやっと笑う。
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