魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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怪物を産む国 後半⑦

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「この子たちと遊んでよ」
 バイカリは鋭い目つきをする。
 周囲の建物からあちこちにいた怪物が一斉に集まってくる。
 怪物と相手する暇がない。
その時、アキセは黒い尾から消える。
 魔術かコルンの発明品で転送したところか。目の前に現れたアキセは、黒いグローブをつけた手が地面につけた途端に大きい土の壁が囲むように盛り上がる。
 これで怪物の進入は防いだ。だが、長くは持たないはず。
 バイカリは影から伸びた黒い尾がアキセの方へ迫ってくる。アキセの手元から土の槍が伸びる。その隙にアキセが距離を取るが、別の黒い尾が迫ってくる。
 アキセは召喚した銃を撃ち出す。炎の球を生み出し、黒い尾にぶつける。
 アキセを追いかけるということは、アキセの言った通り、あの聖剣を恐れているのか。
「そうだ。この子もいるんだよね」
 何かを閃いたバイカリは指を鳴らすと、バイカリの前に大きい影を生み出す。
 その影から黒い手が伸びる。その手は見たことがある。それは、昨日燃やしたはずの黒い怪物が飛び出した。
体中に火傷の跡。異臭を放ち、骨が一部見える。
「まだ使えるからね」
 バイカリは不気味に笑う。
「ママ・・・」
 まだ生きている。魔女の悪行に反吐がでる。
「そうだよ。ママの為に殺してきて」
 バイカリが低く言い、黒い怪物が迫ってくる。
「あいつは俺がする!魔女のところへ」
 イルは黒い怪物に突っ込む。
 アキセはバイカリが聖剣を恐れていると言ったが、ロザリオでも退治できるはず。アキセを待っていられない。
 ロザリオを構えた時だった。
 足元が揺れる。咄嗟に上へ跳び上がる。
 地面が割れ、長い触角が伸びる。
 ロザリオで斬るもまた触角が伸び、体を絡まれる。
「しま!」
 そのまま土の中へと引っ張られる。


 ジャンヌが土の中に引っ張られた。
 『光』が届かない土の中に追い込み、『光』を消耗させるのが狙いだろう。すぐにジャンヌを助けなければ。
 アキセが視線をそらした隙に、黒い尾が腹に直撃する。そのまま土の壁へ飛ばされる。すぐに立ち上がろうとしたが、黒い尾が壁に押し付ける。
「ねえ」
 バイカリがゆっくり近づいてくる。
「聖剣を頂戴」
 黒い尾が迫ってくる時だった。
 バイカリは急に後ろに振り向き、黒い尾を払う。
 何かを払った。地面にぶつかる音がした。何かがいる。
 その時、それは転がりながら姿を見せる。昨日ジャンヌと一緒にいたトカゲの怪物だった。背後から飛び掛かろうとしていたのか。
「まだいたの」
 バイカリは見下ろす。
 バイカリが視線をそらした隙に、指飾りを召喚し、記号を描く。
 自身が風となり、黒い尾をすり抜ける。すぐに姿を戻し、足にウェズボートを召喚し、そのまま土の中へと入る。
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