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怪物を産む国 後半⑥
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ジャンヌとイルはバイカリの元へ行こうにも怪物たちが散らばっている。
「これ・・・着く前に私が尽きそう・・・」
小道から顔を出してジャンヌは言う。
「怪物が放っているからな」
イルも言う。
「さすがに俺も全部対応できないぞ」
「そうね。派手に動いて魔女から来てもらうしかないかな」
「来なかったらどうする」
「それも可能性あるからな~」
代わりに怪物が一斉に襲いかかるのが目に見える。他に考えていた時だった。
「だったら、一気に城まで送ろうか」
アキセの声。
奥にアキセが立っていた。
一気に怒りがこみ上げたジャンヌはすかさずアキセに顔を一発殴る。
「これで気が済んだ」
それでもへらへらするアキセにさらに腹が立つ。
「よくもまあ。私たちの前に出たもんだな。おい!」
ジャンヌはアキセに怒鳴る。
「だから、殴らせてあげただろ」
「それだけで許せると思ったんだ!」
アキセは、何もないところから手に聖剣を見せる。
「どういうことだ・・・」
「これを渡すから、協力する」
――もうだめだ。我慢ができない。
「もうその手には騙されない!」
ジャンヌが殴ろうとした時だった。
「待て!」
イルに腕を掴まれ、止められる。
「落ち着け。まずは冷静になれ」
「そういうやり口なのよ。そいつは!」
今まで我慢してきたのが吐き出した。自分でも抑えられない。イルもアキセに対して怒りがあるはず。
「どういう風の吹き回しだ」
イルがアキセに訊く。
「あの魔女がムカついただけだ」
たったそれだけで。
「あんたの動機が単純しすぎて血管がプチ切れそうよ・・・」
アキセに睨みつける。
「魔女は聖剣を恐れている。俺から聖剣を奪おうとした。今は普通の剣だか、ジャンヌなら使えるはずだ」
「だから何よ!」
ジャンヌは声が枯れるほど吐き出す。
「イルを殺そうとして・・・魔女を復活させて・・・で今度は何。ムカつくから協力するって、ふざけるにも大概にしろよ!」
声を震えながら怒鳴った。
「ジャンヌ」
イルが優しく声をかける。
「怒りたいのは分かる。俺も今すぐにこいつに殴りたいところだ。だか、今はそういう場合じゃないだろ」
「分かるけど・・・分かるけど・・・」
揉めている場合じゃない。けど、頭と心が一致しない。
「もしかして・・・こうなると分かって、イル来てくれたの」
「それもある。こいつのことだ。理由をつけて、またジャンヌに近づくと思った。こいつの顔を見れば、怒りが一杯になって冷静でなくなる。そんな状態で魔女と戦えるとは思えない。ジャンヌは魔女を殺して、この国のタタリを終わらせたいだろ。だったら、あの子のためと思って協力した方がいい」
イルの言い分も分かる。分かるから余計に腹の虫が治まらない。
「ああ!」
ジャンヌは頭をかきながら、壁に拳をぶつける。
「クソクソクソ!」
声を上げて、自身を溜まったものを吐き出して、決心する。
「今は協力してやる。けど、これで許せると思うな!」
「分かった・・・」
アキセは聖剣を渡そうとした時だった。
背後から伸びた黒い尾が聖剣を弾く。
「ち!」
その時弾いた聖剣が消えた。指輪の中に仕舞っただろう。
アキセに黒い尾に絡まれ、引っ張られる。
すぐにジャンヌとイルは大通りに出る。
そこには、影から黒い尾を伸びたバイカリがいた。
「聖女。まだいるんだ」
バイカリは見下ろす。
「これ・・・着く前に私が尽きそう・・・」
小道から顔を出してジャンヌは言う。
「怪物が放っているからな」
イルも言う。
「さすがに俺も全部対応できないぞ」
「そうね。派手に動いて魔女から来てもらうしかないかな」
「来なかったらどうする」
「それも可能性あるからな~」
代わりに怪物が一斉に襲いかかるのが目に見える。他に考えていた時だった。
「だったら、一気に城まで送ろうか」
アキセの声。
奥にアキセが立っていた。
一気に怒りがこみ上げたジャンヌはすかさずアキセに顔を一発殴る。
「これで気が済んだ」
それでもへらへらするアキセにさらに腹が立つ。
「よくもまあ。私たちの前に出たもんだな。おい!」
ジャンヌはアキセに怒鳴る。
「だから、殴らせてあげただろ」
「それだけで許せると思ったんだ!」
アキセは、何もないところから手に聖剣を見せる。
「どういうことだ・・・」
「これを渡すから、協力する」
――もうだめだ。我慢ができない。
「もうその手には騙されない!」
ジャンヌが殴ろうとした時だった。
「待て!」
イルに腕を掴まれ、止められる。
「落ち着け。まずは冷静になれ」
「そういうやり口なのよ。そいつは!」
今まで我慢してきたのが吐き出した。自分でも抑えられない。イルもアキセに対して怒りがあるはず。
「どういう風の吹き回しだ」
イルがアキセに訊く。
「あの魔女がムカついただけだ」
たったそれだけで。
「あんたの動機が単純しすぎて血管がプチ切れそうよ・・・」
アキセに睨みつける。
「魔女は聖剣を恐れている。俺から聖剣を奪おうとした。今は普通の剣だか、ジャンヌなら使えるはずだ」
「だから何よ!」
ジャンヌは声が枯れるほど吐き出す。
「イルを殺そうとして・・・魔女を復活させて・・・で今度は何。ムカつくから協力するって、ふざけるにも大概にしろよ!」
声を震えながら怒鳴った。
「ジャンヌ」
イルが優しく声をかける。
「怒りたいのは分かる。俺も今すぐにこいつに殴りたいところだ。だか、今はそういう場合じゃないだろ」
「分かるけど・・・分かるけど・・・」
揉めている場合じゃない。けど、頭と心が一致しない。
「もしかして・・・こうなると分かって、イル来てくれたの」
「それもある。こいつのことだ。理由をつけて、またジャンヌに近づくと思った。こいつの顔を見れば、怒りが一杯になって冷静でなくなる。そんな状態で魔女と戦えるとは思えない。ジャンヌは魔女を殺して、この国のタタリを終わらせたいだろ。だったら、あの子のためと思って協力した方がいい」
イルの言い分も分かる。分かるから余計に腹の虫が治まらない。
「ああ!」
ジャンヌは頭をかきながら、壁に拳をぶつける。
「クソクソクソ!」
声を上げて、自身を溜まったものを吐き出して、決心する。
「今は協力してやる。けど、これで許せると思うな!」
「分かった・・・」
アキセは聖剣を渡そうとした時だった。
背後から伸びた黒い尾が聖剣を弾く。
「ち!」
その時弾いた聖剣が消えた。指輪の中に仕舞っただろう。
アキセに黒い尾に絡まれ、引っ張られる。
すぐにジャンヌとイルは大通りに出る。
そこには、影から黒い尾を伸びたバイカリがいた。
「聖女。まだいるんだ」
バイカリは見下ろす。
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