魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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怪物を産む国 後半⑤

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「ここは・・・」
 アキセは目覚める。どうやら建物の中にいるようだ。この建物も見たことがある。城だ。
 体を起こそうとしたが、動けない。よく見れば、手足に黒い尾に絡まれ、囲まれていた。
思い出した。ジャンヌとイルを転送し、その後にバイカリに連れられた。
指には指輪がある。まだ脱出ができる。
「助けてくれ・・・」
 王のゴーシュの声がする。
 顔を上げれば、ゴーシュの体がバラバラになっていた。
「う!」
 思わず驚いてしまった。
「助けてくれ・・・」
 バラバラになってもゴーシュは生きている。もしかしてレオンのようにバイカリと契約して不死身になっているのか。
「あ~またやっちゃった」
 バイカリは、頭だけになったゴーシュを抱きしめる。
「大丈夫。死ぬことないんだから」
 ゴーシュの顔にこするバイカリと視線が合う。
「あ!起きてたの。ちょっと待っててね」
 バイカリはゴーシュに目を合わせてから、ぽっと手を離し、ゴーシュは黒い尾の中へと消える。
 バイカリが四つん這いで近づく。
 下がろうにも動けない。
「ねえ。どうやってなったの?」
 バイカリはねだるようにアキセに訊く。
「なんだ・・・」
 アキセの首を黒い尾が絡める。
「だから、どうやってその姿になったの?」
 バイカリは無邪気に訊く。
「知りたいな~教えてくれないかな~」
 頭を左右に揺らしてあざとく訊く。
「だから・・・なんのことだ・・・」
 バイカリの目つきが鋭くなった。
「教えてくれないの」
 バイカリに顔を両手で挟まれる。
「私。あなたの気持ち分かるよ」
「黙れ・・・」
 あの時の記憶を思い出す。
「でもあなたの場合、なんだか複雑ね。その姿になるまで大変だったでしょ」
「黙れ・・・」
 鮮明に思い出す。
「いろいろと教えてよ。私と似た者同士。友達になろうよ」
 バイカリは無邪気に笑う。
「だから、聖剣を頂戴」
 そういうことか。
「お前と一緒にするな!」
 バイカリの頭に直接エンジェライトを頭の中に転送する。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 バイカリが叫ぶ。
 その隙に手に『飛ばしコイン』を召喚し、転送して逃げる。



――クソ、やなことを思い出させやがって
 街の適当なところに出た。今は、朝のようで裏道にいるようだ。それに怪物が街で暴れている。
 別にこのまま逃げてもいいが。いや。バイカリの認識がイラつく。一緒にされたくない。このイラ立ちを治めるためにもバイカリを殺す。
バイカリを殺すにはジャンヌがいる。
ジャンヌは今どこにいる。
『探しモノ地図』を召喚し、確認する。街の中に入っている。しかもイルと一緒にいる。
 あの時のことを思い返す。
 ジャンヌがイルの魔族(アビス)化を止めた。左腕を生やしただけで、以前の姿に戻っている。
 その時、心臓が圧迫する。
なんだ。この感情は。違う。違う。
アキセはこの思いを魔力で奪い、形となって地面に投げ砕ける。
「違う・・・違う・・・」
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