魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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怪物を産む国 前半⑤

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 もうどこにいったのよ。
 ジャンヌはユリアを探し回っていた。
 黒い怪物が作った道を辿っていけば、大通りに出た。
 見つけた。
 兵士たちが、黒い怪物を矢や槍で攻撃していた。
「ジャマ!」
 黒い怪物は兵士たちを払う。兵士はカースネロの槍から雷を放つ。黒い怪物はまともに受け、そのまま倒れる。
 黒い怪物がいるということは。
「離して!」
 ユリアの声がした。
 ユリアは兵士に捕まっていた。必死に抵抗している。
 ジャンヌがユリアを助けに行こうとした時だった。
「ハナセ!」と別の怪物が兵士を突進する。
4つの目。襟巻のような皮膚を持ったトカゲの頭。大きい2本の指。4本のずっしりした足。長い尾だった。
「今度は何?」
 ジャンヌがロザリオを構えようとした時だった。
「待て!ジャンヌ!」
 止めたその声はイルだった。
「イル・・・どうして・・・」
 逃げてくれたと思っていたが。
「あいつには攻撃するな」
「それは・・・」
「ママ」
 イルに訊こうとしたが、トカゲの怪物の発言で口が止まる。
「ママ?」
「あいつは、母親を探していたんだ」
 あのトカゲの怪物もユリアの子供。双子とは言っていた。もう一人の子供も生きていた。
「ママ・・・」
 トカゲの怪物が声をかけるも、ユリアは下を向いたままだった。
 その時、トカゲの怪物に突進された兵士が起き上がる。
「この!」
 兵士がトカゲの怪物にカースネロの槍で攻撃しようとした時、蛇のように伸びた手が兵士を壁に押しつぶす。
「ママ・・・」
 黒い怪物が起きた。
「ママ!」
 黒い怪物が兵士を潰しながら迫ってくる。このままでは襲われる。
 ユリアとトカゲの怪物に駆け寄ろうとした時だった。
 急に辺りが光出す。


「ここは・・・」
 いつのまにかコロシアムにいた。
 ジャンヌがいたのは客席で、ユリアがそばにいた。
 闘技場にはイル、トカゲの怪物に黒い怪物がいた。
「ママ・・ドコダ・・・」
 黒い怪物に襲われそうになっている。
 転送された。魔術で聖女を転送できない。こんなことをできるのは一人しかいない。
「いい眺めだろ」
 客席にアキセが傲慢に座っていた。
「アキセ・・・」
 アキセに睨みつける。
「面白いことになったな」
「おまえって奴は!」
 アキセに殴ろうとしたが、アキセが指飾りで横に切った途端に爆発音がした。
「まさか・・・」
 闘技場を向けば、イルの左腕が失っていた。左腕が途切れ、腕から血が流れている。
「次はどこにするかな。右腕かな。足かな?」
 アキセの今までの悪行の中で一番頭に切れ、殺意が芽生える。イルを巻き込ませ、殺そうとするなんて。魔術だとしたら。こいつに白い炎を当てれば。
「俺に丸ごと炎をぶつけても意味ないぜ。起爆を失ったら、爆発仕組みだ。直接あの獣に触って浄化するしかないな」
「だから、わざわざ離れさせたのか!」
 アキセに怒鳴る。
「いいから。そこの女を殺したらどうだ」
 ユリアは自身のことだと知り、怯える。
「別に私じゃなくてもよかったじゃないの」
「依頼主は聖女じゃないとダメだって言っているんだ」
「ただの人間よ!まさかとは思うけど、その依頼主に入れ知恵したでしょ」
「違うって。王が困っていたんだよ。そいつが魔女に見えるって」
「ふざけるな!それだけで聖女を使うのか!」
「おまえ。聖剣ほしいだろ。あいつを助けたいだろ。女一人殺すくらいで済むからいいじゃないか」
 アキセが横目で見つめる。
「しゃねえな。サービスだ。あいつが生きてたら治してやるって、だから女を殺せって」
 ユリアは人間。魔女ではない。アキセの思惑通りにしたくない。けどこのまま黙ってもイルが大量出血で死ぬ。
「悩んでいる君の顔もそそるけど、のんびりしてたら爆発前に出血死するぞ」
 どうする。このままではイルは死んでしまう。
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