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怪物を産む国 前半④
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翌朝。
トカゲの怪物が誤って檻を全部開けてしまい、閉じ込めていた怪物たちは逃亡し、街を暴れている。かなり大騒ぎになってしまった。
混乱している隙に逃げるべきだか、トカゲの怪物と一緒にトカゲの怪物の母親を探さなければいけない。本当に見つかるかどうかも怪しいが。
イルとトカゲの怪物は、裏道にいた。
「心辺りはあるのか」
「ニオイシカワカラナイ」
「匂いだけか・・・」
トカゲの怪物の嗅覚しか頼りがないようだ。
「ニオイ。オモイダシタ。イマチカイ」
トカゲの怪物が興奮する。
「ママガチカクニイル」
「あ?」
「ママ・・・ママあああ!」
トカゲの怪物は走る。
「おい!」
ジャンヌと女はボロ屋に隠れていた。
いろいろとややこしなってしまった。
アキセにイルを人質に取られ、魔女に仕立てた女を殺させようとした。その女の子供も襲われそうになって、城から女と一緒に脱出した。
さらに第一コロシアムから怪物たちが脱走したという情報も入った。街は脱走した怪物たちを捕まえるのに必死だった。第一コロシアムにはイルがいる。騒動に巻きれて逃げてほしいが、アキセに爆弾をつけられている。アキセも逃がすつもりがないはず。
どうやってこの状況を乗り越えるか。
今は少しでも情報を得よう。
女は部屋の隅で震えている。連れてからずっとこの状態だった。
「聖女様・・・私を助けてください・・・」
女は藁でもすがるように、泣きながら助けを求めている。震えからしても尋常ではない。よく見れば、体中に痣がある。暴力もされたようだ。
「あなた。名前は?」
「ユリアと申します・・・」
震えながらも答えてくれた。
「あの城で何かあったの?」
「私は・・・奴隷として売られました・・・城で王様の相手をしていました・・・王様の子供を生みました・・・双子でした・・・」
「双子?」
双子。二人子供を産んだのか。昨日襲ったのは、一人だった。もう一人はどこに。
「それが・・・」
ユリアはさらに体を震える。
「あの怪物は王様が殺したんです・・・」
「え?」
殺したとしたら、なぜ生きている。どういうことだ。
「それから・・・私に怒鳴ったり・・・殴ったり・・・」
「分かった。もう話さなくていいから」
昨日襲ってきた怪物は、ユリアと王の子供ということか。双子と言っていたが、一人はどういうわけが生き残ったということなのか。
それにユリアがジャンヌに殺させる理由で一体。普通の人間なら王だけでもできないことはない。それに他の人間にやらせることだってできる。わざわざ聖女を使ってまで殺させる。
その時だった。
「おい!ジャンヌ」
アキセの声がした。
そこに黒い鳥がいた。よく見れば、黒い鳥の体に白い文字や記号が這いずっていた。魔術のものだろう。
「おい。ジャンヌ。一緒にいるんだろ」
黒い鳥からアキセの声がする。
「何が目的だ」
「君の嫌な顔を見たいだけ」
その発言だけで殺意が芽生える。
「それだけでここまで大事にしてくれたわね」
「怪物の脱走は俺じゃないぞ。俺の指定した場所に来いよ。じゃないと」
イルを爆発させると脅している。怒りがこみ上げる。
「クズが」とドスの入った声で返す。
「いい顔してる」
今のアキセの顔が想像するだけでムカつく。
殺しが目的なら。
「提案があるんだけど」
「なんだ。訊いてやる」
「この人を殺したいんでしょ。だったら、彼女を国の外に出すのもありじゃないの」
殺しなら国から追い出すのも変わりがないはず。
「あ。何、言ってるんだ」
思わず血管が切れそうになった。
「こいつは、依頼主に体の一部を持ってかないと納得しないんだ」
「この・・・」
「そんな余計なことしなくていいからさ。指定された場所に来てくれない」
「その依頼主って王じゃないの」
「だから、何も考えなくていいんだよ」
白い炎を黒い鳥に向けて投げる。
「おいおい。壊すなよ」
また黒い鳥が現れる。
「ち」
「そこに来いよ。影武者を使うのは無しだからな。その鳥が監視するからよ」
黙り込む。
「分かった。君が言うこと聞けば、あの獣を解放してやるし、聖剣もあげるからよ」
今、耳を疑うことを訊いた。
「今なんて・・・」
「やっぱり。聖剣も目的か」
「まさか・・・」
「もうゲットした」
陽気に言うので腹立つ。
「アキセ」
「なんだ」
「お前の首を洗っておけ」とジャンヌは殺意を込めて言う。
「その前に俺の命令を訊け」とアキセは傲慢に返す。
その時、ボロ屋が急に壊れる。
大きい嘴。黒い蛇のような長い体からぬめりのある液体を出している。黒い手がクモのように伸びている怪物だった。
「ミツケタ・・・・」
昨晩に現れたあの黒い怪物だった。
「ママあああああああああああああああああああああああああああ」
黒い怪物が迫ってくる。
「いやああああああああああああああああああああああああ」
ユリアが飛び出す。
「待って!」
ジャンヌはユリアを追いかける。黒い怪物も。
「なんか盛り上がってるな」
アキセは指飾りを添えて映像を見ていた。指飾りで切り、映像を消す。
「見つけたのか」
声をかけたのは、依頼主のこの国の王のゴーシュだった。
「見つけましたって」
「早く殺せ。私はこの騒ぎを収める」
「その剣」
ゴーシュの腰に付けているのは、聖剣に指さす。
「仕事はしますので、その剣を前払いで頂いても」
「女を殺してからだ」
ゴーシュは部屋を出る。
「臆病者が」
トカゲの怪物が誤って檻を全部開けてしまい、閉じ込めていた怪物たちは逃亡し、街を暴れている。かなり大騒ぎになってしまった。
混乱している隙に逃げるべきだか、トカゲの怪物と一緒にトカゲの怪物の母親を探さなければいけない。本当に見つかるかどうかも怪しいが。
イルとトカゲの怪物は、裏道にいた。
「心辺りはあるのか」
「ニオイシカワカラナイ」
「匂いだけか・・・」
トカゲの怪物の嗅覚しか頼りがないようだ。
「ニオイ。オモイダシタ。イマチカイ」
トカゲの怪物が興奮する。
「ママガチカクニイル」
「あ?」
「ママ・・・ママあああ!」
トカゲの怪物は走る。
「おい!」
ジャンヌと女はボロ屋に隠れていた。
いろいろとややこしなってしまった。
アキセにイルを人質に取られ、魔女に仕立てた女を殺させようとした。その女の子供も襲われそうになって、城から女と一緒に脱出した。
さらに第一コロシアムから怪物たちが脱走したという情報も入った。街は脱走した怪物たちを捕まえるのに必死だった。第一コロシアムにはイルがいる。騒動に巻きれて逃げてほしいが、アキセに爆弾をつけられている。アキセも逃がすつもりがないはず。
どうやってこの状況を乗り越えるか。
今は少しでも情報を得よう。
女は部屋の隅で震えている。連れてからずっとこの状態だった。
「聖女様・・・私を助けてください・・・」
女は藁でもすがるように、泣きながら助けを求めている。震えからしても尋常ではない。よく見れば、体中に痣がある。暴力もされたようだ。
「あなた。名前は?」
「ユリアと申します・・・」
震えながらも答えてくれた。
「あの城で何かあったの?」
「私は・・・奴隷として売られました・・・城で王様の相手をしていました・・・王様の子供を生みました・・・双子でした・・・」
「双子?」
双子。二人子供を産んだのか。昨日襲ったのは、一人だった。もう一人はどこに。
「それが・・・」
ユリアはさらに体を震える。
「あの怪物は王様が殺したんです・・・」
「え?」
殺したとしたら、なぜ生きている。どういうことだ。
「それから・・・私に怒鳴ったり・・・殴ったり・・・」
「分かった。もう話さなくていいから」
昨日襲ってきた怪物は、ユリアと王の子供ということか。双子と言っていたが、一人はどういうわけが生き残ったということなのか。
それにユリアがジャンヌに殺させる理由で一体。普通の人間なら王だけでもできないことはない。それに他の人間にやらせることだってできる。わざわざ聖女を使ってまで殺させる。
その時だった。
「おい!ジャンヌ」
アキセの声がした。
そこに黒い鳥がいた。よく見れば、黒い鳥の体に白い文字や記号が這いずっていた。魔術のものだろう。
「おい。ジャンヌ。一緒にいるんだろ」
黒い鳥からアキセの声がする。
「何が目的だ」
「君の嫌な顔を見たいだけ」
その発言だけで殺意が芽生える。
「それだけでここまで大事にしてくれたわね」
「怪物の脱走は俺じゃないぞ。俺の指定した場所に来いよ。じゃないと」
イルを爆発させると脅している。怒りがこみ上げる。
「クズが」とドスの入った声で返す。
「いい顔してる」
今のアキセの顔が想像するだけでムカつく。
殺しが目的なら。
「提案があるんだけど」
「なんだ。訊いてやる」
「この人を殺したいんでしょ。だったら、彼女を国の外に出すのもありじゃないの」
殺しなら国から追い出すのも変わりがないはず。
「あ。何、言ってるんだ」
思わず血管が切れそうになった。
「こいつは、依頼主に体の一部を持ってかないと納得しないんだ」
「この・・・」
「そんな余計なことしなくていいからさ。指定された場所に来てくれない」
「その依頼主って王じゃないの」
「だから、何も考えなくていいんだよ」
白い炎を黒い鳥に向けて投げる。
「おいおい。壊すなよ」
また黒い鳥が現れる。
「ち」
「そこに来いよ。影武者を使うのは無しだからな。その鳥が監視するからよ」
黙り込む。
「分かった。君が言うこと聞けば、あの獣を解放してやるし、聖剣もあげるからよ」
今、耳を疑うことを訊いた。
「今なんて・・・」
「やっぱり。聖剣も目的か」
「まさか・・・」
「もうゲットした」
陽気に言うので腹立つ。
「アキセ」
「なんだ」
「お前の首を洗っておけ」とジャンヌは殺意を込めて言う。
「その前に俺の命令を訊け」とアキセは傲慢に返す。
その時、ボロ屋が急に壊れる。
大きい嘴。黒い蛇のような長い体からぬめりのある液体を出している。黒い手がクモのように伸びている怪物だった。
「ミツケタ・・・・」
昨晩に現れたあの黒い怪物だった。
「ママあああああああああああああああああああああああああああ」
黒い怪物が迫ってくる。
「いやああああああああああああああああああああああああ」
ユリアが飛び出す。
「待って!」
ジャンヌはユリアを追いかける。黒い怪物も。
「なんか盛り上がってるな」
アキセは指飾りを添えて映像を見ていた。指飾りで切り、映像を消す。
「見つけたのか」
声をかけたのは、依頼主のこの国の王のゴーシュだった。
「見つけましたって」
「早く殺せ。私はこの騒ぎを収める」
「その剣」
ゴーシュの腰に付けているのは、聖剣に指さす。
「仕事はしますので、その剣を前払いで頂いても」
「女を殺してからだ」
ゴーシュは部屋を出る。
「臆病者が」
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