魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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怪物を産む国 前半②

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「何者だ」
 ラ・イルは目の前のトカゲの怪物に言う。
 匂いがしたが、姿が見えなかった。トカゲの怪物の力だろう。
「ワカラナイ。ボクガナンナノカワカラナイ。ダカラママヲサガス」
「ママ?」
 怪物の親ということか。
「そのママってなんだ?魔女か魔族(アビス)か」
「マジョ?アビス?ワカラナイ。ケドオンナダトオモウ」
「オンナ?」
 女だけで分からない。
「種族分かるか」
「エート、ニンゲンッテイッテタ」
 その発言で疑いたくなかった。
「それって・・・」
「オンナトオトコガイッショ二ナニカヲシテタ。ソシタラオンナノハラガオオキクナッテ、ボクトオナジノガデタ」
 まさか、人間が怪物を生み出していたのか。今まで戦ってきたのは子供。あの時、怪物が叫んだ声の中に混ざっていたのは、子供の声だったのか。
 こんなことできるのは魔女しか考えられない。魔女がこの国にいるのか。だとしても怪物になった子供を商売に使うこの国にも腹立たしい。
「ママミツケタイ。ケド、ボクヒトリジャデキナイ。ダカラキョウリョクシテホシイ」
「何で俺なんだ」
「ハナセル。ツヨイ」
 昼の試合を見ていたのか。
「ホカノミンナニモハナシタ。ケドキイテクレナイ」
 怪物は言葉を発することも、理解もできない。だから話が通じるイルを選んだといったところか。
「ここから出すにしても街の外まで出してくれるか」
 アキセに一発殴りたいが、今は逃げることに専念するしかない。
「ワカル。ママトイッショ二デタイ」
 母を見つけて国を脱出というところか。どの道、抜ける手段がない。抜け出せるならこの際なんでもいい。
「分かった。協力する」
「ウン」
「俺はイルだ。お前は?」
「オマエ?」
 トカゲの怪物は首をかしげる。
「名前ないのか?」
「ナマエ・・・ナマエハママカラモラウカラナイ」
「だとしても不便だろ。仮につけてもいいか」
「イヤダ」
――やっぱ子供だな。
「分かった。名前はいい。ここから出る方法分かるか」
「ワカル」
 ドンと急にトカゲの怪物の尾で檻の外壁に叩きつける。
 壁には描いていた陣を力業で壊し、格子が崩れる。檻から出られるが、一斉に他の檻の格子も壊れていく。
「デレタ。イコ」
「・・・」
 先が思いやられる。
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