魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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偽物の聖女①

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 ジャンヌは小さな街に着いた。
 街の中央で人が集まっている。
 寄ってみれば、「ジャンヌ様~」といくつも声がする。
――なぜ私の名前がする。しかも様とつけられて
 もう嫌な予感がするので、すぐにフードをかぶり、顔を隠す。
 人の群れの奥へといけば、もう一人のジャンヌが立っていた。しかもシスターの格好をしている。
「私、白の聖女ジャンヌ・ダルクは、皆さまの祝福をお祈りいたします」
――私の顔と声で何を言っている。
「皆さまが祈ることで魔女だけでなく魔獣(モンスター)や異獣(エヴォル)、これから来る災いを吹き飛ぶことでしょう。そのためにも皆さまのお気持ちを私にくださいませ~」
 ニセモノからやせた男と太った男が出た。袋を持って金を回収していく。
――今時。なりすましする?しかも私を名乗って。そこまでやったことがないぞ。聖女を名乗るにしてもなぜ私にした。他にいるだろうか。
 もうたいだい予想ができる。さて、尋問と行こう。


 夜。町外れにあるテントに3人が戻ってきた。手には袋いっぱいに金が入っている。
「いや~儲かりましたね。ナンシー様!」
「これでしばらく暮らせますね」
「いや~聖女様々だね~」
 ジャンヌの顔で高笑いするナンシー。
「今日も人稼ぎしましたね」
 アキセは声をかける。
「あ。アキセ様~」
 ナンシーは顔を真っ赤にして駆け寄る。
「これもアキセ様のおかげですよ」
「いやいやそんなことはないですよ」
 ナンシーは、ジャンヌの顔で見惚れている。
――本物もこういう顔してほしいものだ。
 今、ナンシーにはコルンの発明品『なりすまし仮面』をつけている。つければ、いろんな顔になれるシンプルな仮面。
 ふと思いついたことでここまでやってしまった。
 バレる前に『なりすまし仮面』を回収しようとしたが、民衆の中に本物のジャンヌが見えた。逃げなくては。
「なあ。その面を・・・」
「なら、ちょっと待ってくださる!」
「化粧直しですか」
 太った男のデッドは言った途端にナンシーは殴る。
「そういうことを言うもんじゃないよ」
「デッド。気を付けた方がいいですよ」
 やせた男のビスは言う。
「お前たちは金を片付けな」
「「へいへい」」
 ナンシーの指示にデッドとビスは、テントの奥へと消えた。
「アキセ様。ちょっと待って下さる」
 ナンシーはテントの中に入っていく。
「あ・・・」
 その時アキセの顔の横に光る剣が見えた。とても見覚えのある剣だったので、冷汗をかく。
「んふ」と後ろから声がした。
「あら、こんなところで会えるなんて偶然」
 ジャンヌだ。怖くて振り向けない。
「そうですね・・・」
「ねえ、アキセ。この町で私の偽物がいるけど、何か知っているかな」
「さあ、俺もさっききたところだからな~」
 気のせいかロザリオが徐々に首元まで近づいているような。
「そう。それにしては、あのニセモノと親しく話してなかった」
 ダメだ。怖くて振り向けない。首にロザリオが触る感覚がする。熱くなっている。
「向こうから話しかけられただけです」
 とぼけるしかない。
「ほんと、あんたの言い訳を日が昇るまで付き合うつもりはないわよ」
 ダメだ。逃がすつもりがない。
「私、いくら手段を選ばないとはいえ、あそこまでやったことないぞ。変な噂が流したらどうしてくれるの」
 ちょっと首に感触が。
「許してほしいなら。変装した道具の破壊と集めた金を寄こせ」
 脅迫してきた。
「お金まで要求します?」
「慰謝料として頂くのよ」
 グサ。
 今、ロザリオが首に入った。
「ちょ!首入る!分かったから!まずロザリオを仕舞って!」
 その時だった。
「聖女様。こちらにいましたか」
 町人たちがくる。
「え?」
 思わず返事してしまった。
「助けてください。魔女に襲われています!」
 チャンス。
「ほら、ジャンヌ。助けを呼んでるよ」
 アキセはジャンヌを引き渡す。
「な!」
 町人たちに両脇掴まれる。
「聖女様こちらへ」
 ジャンヌをそのまま町人に無理やり引きずられる。
「あとで覚えてろ!」
 小物のように言っていく。
 よし、逃げよう。
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