魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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獅炎の魔女④

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 その言葉で血の気が引く。
「あの怪我だったからさ。長く持たないと思ったし。短く終わるのも嫌だったんだ。まあ、時間制限がないと、熱くなっちゃうからさ」
 ボルガが一歩ずつ近づいて来る。
 確実に殺さないと言っても殺しにかかる。
 全力でこの場から逃げるにしてもすぐに追いつかれる。唯一の手段は、光の鏡を作って聖女の地に逃げるしかない。
 まだ日は昇っている。空に飛んで、少しでも時間を稼ぐ。
 足に噴射し、空へ逃げようとしたが、足に掴まれる。そのままボルガに地面へと叩きつけられる。
 地面が割れ、体の骨にヒビが入ったほどの衝撃。ボルガが上げた足をそのまま下ろす。
 横に転がりながら体勢を立て直すが、ボルガに回し蹴りで右肩に入り、そのまま地面に叩きつけられる。そのまま胸に蹴られ、木にぶつけられる。
 胸が苦しい。体中が痛い。右肩が動くだけで痛む。胸を抑えながら、ゆっくり体を起こす。
「これで全力?」
 ボルガが言う。
「ん~まだ手足動けるよね。もう少し頑張ろうよ」
 ボルガが近づいて来る。
 立ったらすぐ攻撃される。近づいてきても攻撃される。空に逃げても阻止される。
 どうすればいい。
「ん?」
 ボルガが視線を変えた瞬間、ボルガの頭が爆発する。
「え・・・」
 頭を失った体は後ろへ倒れる。
「何が・・・」
 どうして急に頭が爆発した。何もしていないのに。
「おい!」
 アキセがきた。ボルガに蹴りつけたのにもう回復している。コルンの発明品を使ったところか。
「何をしたのよ・・・」
 爆発したのはアキセだろう。だだなんで攻撃ができた。魔術を使ったにしても、ボルガほどの魔女なら、そこまでの破壊力がないはず。
「いいから逃げるぞ!」
 その時、アキセの背後でボルガの左腕が不気味に上げる。
 血の気が引いた。
 アキセも振り向き、さすがにアキセも顔が青くなっている。
 ボルガの左腕が自身の体に突き刺す。体の中から何かを取り上げる。倒れていたボルガの体がゆっくり起き上がる。頭が獅子の顔をした炎に包まれている。
「俺もびっくりしちゃったよ。魔術っていうんだっけ」
 ボルガの声がする。
「けど、こういう姑息な戦いって嫌いなんだよね」
 獅子の炎の仮面を取りながら、笑顔で圧をかけるボルガは言う。
「これ何」
 ボルガが見せたのは、文字を刻んだ弾だった。弾なら銃を使ったはずが、銃声の音が全くなかった。
「よく見れば、魔女文字(ウィーンもじ)使っているね。でもこれでやられる俺じゃないよ」
 ボルガは握って弾を砕く。
「それにさっき、俺に蹴られたよね」
 ボルガが踏み出すと地割れする。確実に怒っている。
「なんでそんなに回復しているの。もしかして君も強いのかな」
 地割れするほど歩き出しながら近づく。
 手に炎を生み出す。
「試しにこれに耐えて」
 ボルガが炎の球を投げる。
 炎の球は速く、避けられる間も与えず、迫ってくる。
その時だった。
 輝く赤い炎が炎の球とボルガに浴びる。
 あの炎は。
 目の前に女が着地した。
 長い赤髪を結び、褐色の肌。身長は10代前半並みに小さい女。
「ボルガあああああああああああああああああああああ」
 赤の聖女ラクシュミー・バーイーが怒鳴る。
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