魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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獅炎の魔女②

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「あ~いたいた」
岩山に着いた。岩の陰で、ジャンヌはボルガと様子を見ていた。
 火の魔女が何人も囲み、ヒュパティアを痛めつけている。蹴ったり、焼いたりと嫌らしく痛めつけ、火の魔女たちは笑っている。
 魔女らしい嫌がらせ。
「よかったね。まだ生きているよ」
 ボルガが陽気に言う。
「じゃあ。とっとと終わらせよう」
「え?!」
 ボルガが岩陰から飛び出す。
 立っていた火の魔女の目の前に着地する。目にも留まらない速さで回し蹴る。火の魔女の頭を蹴り飛ばす。さらに手を上げ、体を真っ二つにする。
あっという間に魔女の1人を退治した。
 他の火の魔女たちは、怯えて逃げていく。ボルガをそれほど恐れられているのか。
「あ~あ。最近の魔女は手ごたえなくてつまらないよ」
 ボルガは呆れるように言う。
 今は怖気づいている場合ではない。ここからは逃げきれるかの勝負。
 ジャンヌは白い炎を飛ばす。
 ボルガは白い炎をまともに当たる。さらに白い炎を飛ばし、ボルガの前に壁のように広がる。
 あれで浄化するとは思えない。目くらましにしかならないが、少しでも時間を稼ぎたい。
 ジャンヌはすぐにヒュパティアに駆け寄る。
 ヒュパティアは体中に火傷しているが、まだ息がある。抱えて逃げようとしたが。
「だ~め」
 ボルガがヒュパティアを取り上げ、岩に投げつける。
「は・・・」
 いつの間に。足音すら立っていなかった。白い炎の壁まで作ったのに、壊れた様子もない。よく見れば、ボルガの体に白い炎が全く浄化されてない。
「何。逃げようとしてるの。ダメだな~」
 ボルガが笑顔で圧をかける。
「せっかくこれから邪魔をされずに君とやれるんだからさ」
 ボルガは体を伸ばす。
「やっぱり」
 目的がジャンヌと戦うことだったのか。
「ヒュパティアをサバトに引き渡したのは、私と戦うためなの」
「それは違うよ。そこの聖女が単に捕まっただけ。ただこれでジャンヌが来るかなと思って、君が疲れない内にさっさと倒したんだよ」
「それって私じゃなかったらどうしたのよ」
「あ、そこまでは回らなかった」
 変なところでボケるな。
「けど、ジャンヌが来てくれてよかった」
ボルガは、ジャンヌが戦わせる状況になるために、救出を手伝い、聖女の力を使わせないためにさっさと魔女を倒した。
「俺は強い奴と戦いんだ。特に火を使う者とね。ジャンヌも目をつけていたんだ。それに赤の聖女ラクシュミー・バーイーと赤の聖女オリガでしょ」
「オリガはいないわよ」
 赤の聖女はラクシュミーだか、以前はオリガも聖女の名を持っていた。
 会ったことはないが、話では追放したと訊く。
「え?死んでいないでしょ。まあ、その内相手はするけどね。今はジャンヌと戦いたい」
 目つきが変わった。獲物を狩るような目だった。
「これで楽しく戦おうぜ!」
 手を鳴らしながら言うボルガの目の前に突然、一つの文字が浮かぶ。青く光る文字から水が噴き出す。
 その時、背後から腕を掴まれる。振り向けば、アキセがいた。
「来い!」
 アキセと一緒に消える。ヒュパティアを置いて。
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