魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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星が生まれる日①

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「お!絶景ポイント!」
 ジャンヌは広がった丘に着く。今夜は月がなく、星々が輝いていた。
「今夜は綺麗ね」
 背後に物音がした。
「来ると思った」
 ジャンヌが振り返れば、星獣(アストラ)の白い狼のスピカに乗った星の聖女アタランテがいた。
「先輩も来たんですね」
「私も好きよ。流星群」
 流星群。
 月が消えた一瞬に、月から『光』を満たされた星は、一番に輝き、この世界に落ちる。落ちた星は、獣の姿を得て、聖獣(ルーチェス)の一種、星獣(アストラ)として生まれる。
 ちなみに日中でも虹から生まれる虹獣(シエルズ)もいる。
 スピカが遠吠えした瞬間、暗い空に浮かんでいた星たちは円を描くように地に落ちていく。
 何度見てもこの現象が好き。幻想的で。何より新しい命が生まれる瞬間が何より。
 星の一つが、近くに落ちた。
「先輩。行きましょ!」
「はいはい」


 人間の顔と体。エルフの耳。狼の口。大猫の腕。大トカゲの足。狐の尻尾。体を隠すため、大きいロープとかぶりを着ているラ・イルは森の中で空を見ていた。
「今日は星が落ちるのか」
 奥から声や匂いがする。これは知っている。逃げなくては。また巻き込まれる。
 その時、横から白い狼が飛び出し、逃げ道を防ぐ。
 匂いからして普通の狼ではない。魔獣(モンスター)でもない。ここは逃げるか。
「スピカ、ナイス!」
 その声で肩が重くなった。振り向けばジャンヌがいた。
「久しぶり。イル」
 ジャンヌは陽気に手を振る。顔に手を当てる。
「どうしたの。顔が悪いよ」
「おまえと会ったからだ」
 頭が痛い。
「それは失礼だよ」
「おまえと会ったら、確実に事件に巻き込まれるだろうが」
「その分、助けてるでしょ」
 ジャンヌは不満げに返す。
「イルだと分かったからさ。逃がさないようにスピカに先に行かせたの」
「なんで分かった?」
「それは言えない」
「おい」
 言ったら、その対策されるから言わないつもりか。
「先輩?お知り合いですか」
 ジャンヌの背後に少女がいた。
 長い茶髪をポニーテールに縛る。青い目。左腕に青い宝石が等間隔に埋め込まれている銀色の腕輪。狩人のような恰好をした若い少女。
 先輩。ジャンヌの後輩ということはこの子も聖女ということか。
 後輩と目が合う。ただ視線が尾の方に。
「わーふさふさ!」
 目をキラキラにした後輩が飛び出し、尾を触る。
「おい!」
 ジャンヌもすかさずイルの尾を触る。
「ちょ!ジャンヌまで!」
「「フサフサ~」」
「やめんか!」
 


「先輩!いい尻尾ですね!」と後輩は目を輝く。
「でしょ。私もあれはたまらなくて~」
「こいつら…」
 イルは手に怒りを込める。
 スピカは後輩に近づき、尾を差し出す。
「スピカの尻尾もフサフサだよ~」
 後輩はスピカの体を触る。
「そいつはなんだ?後輩ってことは聖女か?」
「あ、ごめんごめん!この子も私と同じ。星の聖女アタランテと星獣(アストラ)のスピカよ」
「よろしくお願いします!」
 アタランテはまだイルの尾を狙っている。スピカは少し威嚇をしている。
「そうだ!先輩。早く行きましょうよ!」
 アタランテは急に思い出したように言う。
「そうね。星獣(アストラ)を見に行くけど一緒に行く?」
 今回は魔女がらみではないようだか。
「俺はいい」
「そうなの。魔女と関係ないけど」
「だから。いいって」
「分かった。また別の日にするよ」
 会う前提になっている。
「じゃあ、また」
 ジャンヌとアタランテ、スピカはそのまま去っていく。
「たく」
 イルも歩き出す。
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