魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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博戯の魔女⑤

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 地下室。
 イラ立っているウィムは風で眠っているレオンを壁に当てる。それでもレオンは起きる気配はない。
「荒れてますな」とウィムにちょっかいを出したら、ウィムが振り返る。
 アキセは魔力対策に壁から伸びた木の枷を手首につけられ、さらに動かないように足までも木の足枷をつけられている。
「俺を解放した方が早いと思うんだけどな」
 魔力でレオンの記憶を奪えば、すぐ分かる。
「イヤよ。絶対に反抗するもの」
「お見通しで。分かりました。ここで大人しくしますよ。今のお前を見るだけでも滑稽で面白いから」
 その時、首に斬られた感覚がある。目に映らない風の刃で切ったようだ。いつでも殺せるっていう脅しをかけている。
「そういえば、今回の目的はなんだ?」
 ウィムの目的を探る。
「今回の博打は、魔女が負けるって分かっているもの。あんな自信過剰で勝ち誇った人って急に負けたらどうなるか。あんたも知っているでしょ」
 ウィムがイタズラな笑みを見せる。
「しかも相手は人間に負けるって。とても嫌でしょうね」
「そうか。嫌になった魔女が怒ってドナートに襲い、ドナートも自身を守るためにジャンヌを戦わせるってことか」
「それが見たいんだよね~まあ聖女が勝てたとしてもその後の生活も面白そうだし」
 ウィムは言う。
 ジャンヌと魔女と戦わせるのが目的のようだ。
 それにしてもまさかジャンヌがレオンを燃やすとは思わなかった。
 作戦を立てたにしてもドナートに『勝利はわが手にミサンガ』の力で白状させられるのは目に見えている。だからジャンヌはレパートリーが広いレオンを使ったんだろう。レオンが精霊術を使い、口封じに殺したと思いきや、普通に体を回復している。リリスが気に入っているだけあって、レオンに不死の力でも与えたようだ。
 レオンが生き返ることを知ってジャンヌは作戦を立てた。いつ知ったのだろうか。
 それよりもレオンが目覚めるまで何を仕掛けたのかは分からない。白い炎で燃やしたということは回復を遅くして、時間を稼ぐといったところだろう。
 問題は、レオンがどんな精霊術をかけたということ。ウィムがいるから風を使わないと思うが、使わないとしたらどんな方法で伝えようとしている。
 エルフは精霊を操る。この状況で操るとしたら、風と土だろう。風は使えないとして残るとしたら土。土を使おうにしてもどうやって伝える。
 その時だった。
「うう・・・」
 唸り声がする。レオンが起きたようだ。
「ここは・・・」
 その時ウィムが大きく払い、風を飛ばす。風は、レオンの目を横一線に切る。
「うわあああああああああああああ」
 目を押さえるレオンにウィムは胸を踏む。
「さあ。精霊術を解きなさい」
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