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舞扇の魔女②
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急な衝撃で目を覚ます。
どこかの建物の中にいるようだ。
体を地面に押し付けている。金の角の生えた男に腕を後ろに押さえられる。その横にアキセも同じような体勢で銀の角の生えた男に押さえつけられている。
ジャンヌは、なぜか『光』が使えず、ただの人間と変わらないから、手を出せない。あの時、痺れさせたのは、この二人だろう。
「で、なんであんたもいるのよ」
「俺だって知らねえよ。俺も何も手を出せないんだから」
「はあ?」
「キンガク。ギンガク。ご苦労」
割り込むように女の声がした。
長い黒髪に黒い瞳。長い袖と裾。腰に紐で留めている。扇を持つ女だった。
「魔女ね」
「どうも聖女。よくも息子の髪を燃やしてくれたな」
魔女は見下ろす。
「息子?」
「そうだ。紅孩児の母である舞扇(ぶせん)の魔女ラセツ・コウジョだ」
この魔女がコウガイジの母。
「「え!全然予想と違う!」」
思わずハモった。
「あんなバカだから、親もバカかと思った」
「ジャンヌ。違う。逆に親が頭よすぎて、子がバカになるタイプだよ」
「何言ってるの。親の権力を利用して調子込んでいるタイプよ」
「それとも甘やかしすぎで気付けない親バカだな」
「あ~ありえる」と思わず納得する。
「ふん!」
急に頭を踏まれる。視線を向ければ、ラセツが顔をしかめて、ジャンヌを見下ろす。
「踏むならそこの男にしなさいよ!最終的に髪に止め刺したのは、左にいるこいつだから!」
「俺にふるな」
「同罪だ」とラセツは言う。
「あの子は顔だけしかなかったのに・・・」
ラセツが悔やんでいる。
やっぱ思っていたんだ。
その時、奥から足音。コウガイジが滑りながらやってきた。
「げ!おふくろ・・・」
コウガイジが驚いている。
それよりもコウガイジの頭が鳥のとさかのように髪が伸びている。
「ぷう」と我慢もできずに噴き出す。
アキセも同じように。
「おふくろ!こいつは俺の獲物だぞ!おふくろが邪魔すんじゃねえ!」
「あ“あ”!」とドスの入った声に殺意を込めた目つきで返すラセツ。
「すみませんでしたああああああああああああああああああああああああ!」とコウガイジはすぐに床に頭をつく。
どうやらラセツの前では頭が上がらないようだ。
「私の息子でありながら、本当にみっともない」
ラセツは頭を抱える。
「おまえがモタモタしているから、私が手を出す羽目になるんだ!」
「だから見せたくなかったんだ」とコウガイジは言う。
隠していたのか。
「まあいい。これからじっくりしてやるから」
ラセツの発言に思わず冷や汗をかく。
もしかしてわざわざ連行したということは。
「これから長く付き合いましょう」
ラセツは笑顔で言う。
「「え・・・」」
つまり殺さずに長く拷問するということか。
アキセも察したようだ。
「紅孩児は、聖女とさっさとやりなさい」
「よっしゃー!」と紅孩児が喜ぶ。
まさか聖女の弱点を。
「キンカク。聖女を紅孩児に渡してから、コルンに指輪を届きな」
「承知ました」
コルンと組んでいたのか。だから、コルンの発明品を使って『光』が使えないのか。
キンガクに立たされる。
「ラセツ様。こやつはどういたしますか」とギンカクが言う。
ギンカクはアキセの対応に訊く。
「地下に連れてきな」
「え?」とアキセが唖然している。
「ラセツ様。まさかとは思いますが、不倫はよくありません」とギンカクは言う。
「おまえ、私を何だと思ってる。私は旦那一筋なのよ。不倫なんてありえない」
「そう願いたいです」とギンカクの横に刃が通る。
「冗談です」
ギンカクは静かに言う。
「冗談は嫌いだ」
「失礼しました」
ギンカクはアキセを立たせられる。アキセの顔をかぶり物でかぶせられ、ラセツと一緒に連れていく。
ジャンヌにも顔にかぶせられる。
ジャンヌは顔に被り物をかぶせられ、何も見えない。キンカクに連行されている。
「キンカク。いい加減渡せよ」
「あなたは何かと手を焼かすことが多いので」
「いつもじゃねえって!」
身内でもそうなのか。
「着きました」
どうやら着いたようだ。
「着いたからいい加減寄こせ!」
コウガイジに無理やり掴まれる。
「ではごゆっくり」
キンカクは去ったようだ。
開く音がした。急に倒される。
やっと被り物が取れたと思えば、部屋の中にいるようだ。しかもコウガイジと二人だけ。
「今までの恨みを晴らしてやる」
コウガイジが睨みつけるので、にらみ返す。
「まだそんな目つきするのか。だったら」
コウガイジが赤い槍を振り、炎が渦のように体を包まれ、服を焼かれてしまう。
首を掴まれ、ベッドに倒される。縄を取り出し、縛りつけようとしている。
必死に抵抗しようにも歯が立たない。
「おとなしくしろ!」
縄で手を体の後ろに縛りつけられる。
前回以上にヤバい。これは。
「穢してやる!」
反抗しようにも『光』や力も出ないただの人間と変わらない。このままではコウガイジと。
目をつぶった時だった。
「ふにゃ~」と情けない声がした。
「ん?」
目を開ければ、コウガイジがベッド脇に眠っている。
「え?」
「大丈夫ですか!」
ピンク瞳。ピンクのボブ髪。ワンピースを着た12歳くらいの少女。人の姿をしたユビワだった。
どこかの建物の中にいるようだ。
体を地面に押し付けている。金の角の生えた男に腕を後ろに押さえられる。その横にアキセも同じような体勢で銀の角の生えた男に押さえつけられている。
ジャンヌは、なぜか『光』が使えず、ただの人間と変わらないから、手を出せない。あの時、痺れさせたのは、この二人だろう。
「で、なんであんたもいるのよ」
「俺だって知らねえよ。俺も何も手を出せないんだから」
「はあ?」
「キンガク。ギンガク。ご苦労」
割り込むように女の声がした。
長い黒髪に黒い瞳。長い袖と裾。腰に紐で留めている。扇を持つ女だった。
「魔女ね」
「どうも聖女。よくも息子の髪を燃やしてくれたな」
魔女は見下ろす。
「息子?」
「そうだ。紅孩児の母である舞扇(ぶせん)の魔女ラセツ・コウジョだ」
この魔女がコウガイジの母。
「「え!全然予想と違う!」」
思わずハモった。
「あんなバカだから、親もバカかと思った」
「ジャンヌ。違う。逆に親が頭よすぎて、子がバカになるタイプだよ」
「何言ってるの。親の権力を利用して調子込んでいるタイプよ」
「それとも甘やかしすぎで気付けない親バカだな」
「あ~ありえる」と思わず納得する。
「ふん!」
急に頭を踏まれる。視線を向ければ、ラセツが顔をしかめて、ジャンヌを見下ろす。
「踏むならそこの男にしなさいよ!最終的に髪に止め刺したのは、左にいるこいつだから!」
「俺にふるな」
「同罪だ」とラセツは言う。
「あの子は顔だけしかなかったのに・・・」
ラセツが悔やんでいる。
やっぱ思っていたんだ。
その時、奥から足音。コウガイジが滑りながらやってきた。
「げ!おふくろ・・・」
コウガイジが驚いている。
それよりもコウガイジの頭が鳥のとさかのように髪が伸びている。
「ぷう」と我慢もできずに噴き出す。
アキセも同じように。
「おふくろ!こいつは俺の獲物だぞ!おふくろが邪魔すんじゃねえ!」
「あ“あ”!」とドスの入った声に殺意を込めた目つきで返すラセツ。
「すみませんでしたああああああああああああああああああああああああ!」とコウガイジはすぐに床に頭をつく。
どうやらラセツの前では頭が上がらないようだ。
「私の息子でありながら、本当にみっともない」
ラセツは頭を抱える。
「おまえがモタモタしているから、私が手を出す羽目になるんだ!」
「だから見せたくなかったんだ」とコウガイジは言う。
隠していたのか。
「まあいい。これからじっくりしてやるから」
ラセツの発言に思わず冷や汗をかく。
もしかしてわざわざ連行したということは。
「これから長く付き合いましょう」
ラセツは笑顔で言う。
「「え・・・」」
つまり殺さずに長く拷問するということか。
アキセも察したようだ。
「紅孩児は、聖女とさっさとやりなさい」
「よっしゃー!」と紅孩児が喜ぶ。
まさか聖女の弱点を。
「キンカク。聖女を紅孩児に渡してから、コルンに指輪を届きな」
「承知ました」
コルンと組んでいたのか。だから、コルンの発明品を使って『光』が使えないのか。
キンガクに立たされる。
「ラセツ様。こやつはどういたしますか」とギンカクが言う。
ギンカクはアキセの対応に訊く。
「地下に連れてきな」
「え?」とアキセが唖然している。
「ラセツ様。まさかとは思いますが、不倫はよくありません」とギンカクは言う。
「おまえ、私を何だと思ってる。私は旦那一筋なのよ。不倫なんてありえない」
「そう願いたいです」とギンカクの横に刃が通る。
「冗談です」
ギンカクは静かに言う。
「冗談は嫌いだ」
「失礼しました」
ギンカクはアキセを立たせられる。アキセの顔をかぶり物でかぶせられ、ラセツと一緒に連れていく。
ジャンヌにも顔にかぶせられる。
ジャンヌは顔に被り物をかぶせられ、何も見えない。キンカクに連行されている。
「キンカク。いい加減渡せよ」
「あなたは何かと手を焼かすことが多いので」
「いつもじゃねえって!」
身内でもそうなのか。
「着きました」
どうやら着いたようだ。
「着いたからいい加減寄こせ!」
コウガイジに無理やり掴まれる。
「ではごゆっくり」
キンカクは去ったようだ。
開く音がした。急に倒される。
やっと被り物が取れたと思えば、部屋の中にいるようだ。しかもコウガイジと二人だけ。
「今までの恨みを晴らしてやる」
コウガイジが睨みつけるので、にらみ返す。
「まだそんな目つきするのか。だったら」
コウガイジが赤い槍を振り、炎が渦のように体を包まれ、服を焼かれてしまう。
首を掴まれ、ベッドに倒される。縄を取り出し、縛りつけようとしている。
必死に抵抗しようにも歯が立たない。
「おとなしくしろ!」
縄で手を体の後ろに縛りつけられる。
前回以上にヤバい。これは。
「穢してやる!」
反抗しようにも『光』や力も出ないただの人間と変わらない。このままではコウガイジと。
目をつぶった時だった。
「ふにゃ~」と情けない声がした。
「ん?」
目を開ければ、コウガイジがベッド脇に眠っている。
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