上 下
243 / 642

美髪の魔女③

しおりを挟む
「つまり魔女を余計に怒らせ、私に退治させようと」
「はい・・・」
 ジャンヌは頭にいくつもの瘤があるアキセは一連の話をした。
「自業自得だから、ほっときたいけど。あんたのせいで魔女に目をつけられたから、狩りをする破目になったじゃないの」
 ジャンヌは不機嫌に言う。
「ジャンヌにも非があると思うが・・・」
 完全にアキセのトラブルに巻き込まれた。毎回そうだけど、今回は本当に腹が立つ。
「手伝いますので、なにぞとお願いします」
 アキセが情けなく要請する。
「さて、どうしようかな~」
 タダでするつもりはない。自身の髪を見て思いつく。
「あんたならさあ。この髪の薬くらいとれるでしょ」
 もう髪が身長以上に伸びてしまっている。伸び続けている。しかも妙な違和感がする。コルンの発明品だから髪が伸びるだけでは終わらない。それにこのままでは戦いづらい。いつまで薬が切れるが分からない。この薬を取るには  アキセの魔力で抜いてもらうしかない。
「出来ないことはないですか・・・」
「魔女狩りしてやるから、この髪の薬を取れ」
 アキセに命令する。
「俺。長い方が女らしさ増していいけど・・・」
 アキセの髪を掴む。
「だったら、赤ハゲ以上に髪を燃やしてやるぞ」と睨みつける。
「分かりました!」
「前払いで今すぐやれ」
「今ですか・・・今やったら、もうやめるような・・・」
「それはあんた次第になるわよ」
 アキセが何か閃いたような顔をした。
「分かった。切った髪は俺に頂戴」
「やめた!」とはっきり断る。アキセから去ろうとしたが。
「ちょ!分かったから!薬とります。髪はいりませんから!魔女を退治してください!」
 アキセが足にすがりつく。
「しつこい!」
 その時炎が飛んでくる。
 足にすがりついたアキセを蹴り飛ばし、炎にぶつかる。
「あっつ!」
 炎に包まれ、地面に転がるアキセ。
「見つけたぞ!」
 コウガイジが現れた。しかも髪がなくなっている。
「「ぷっ!」」
 ジャンヌと焦げたアキセは嘲笑う。
「「わハハハハハハハハハハハハハハハ」」
 森の中でこだまするほど響く。
 話を訊いていたが、実際見るだけでも笑われずにはいられない。
「殺してやる!」
 コウガイジは顔を赤らめて襲ってくる。
 コウガイジから距離を取るも、髪が引っ張られ、地面に伏せられる。コウガイジが赤槍で髪を刺していた。
「何、髪に槍を刺し込むのよ!」と怒鳴る。
「燃やしてやる!」
「その前に切るわよ!」
 ジャンヌは、ロザリオで自分の髪を切り、コウガイジから距離を取る。
 ロザリオを構えるも、また急に髪が身長以上に伸びる。足に力が入らなくなり、膝をつく。ロザリオで体を支える。
 何これ。体力が一気に持ってかれる。さっき感じた違和感はこれだった。もしかして体力を奪って髪を伸ばしているってことか。コルンめ。
 目の前にコウガイジの赤い槍が迫ってくる。
 横からくる風の球がコウガイジを吹き飛ばす。 
「やっぱ。普通の育毛剤じゃないか」
 指飾りをつけたアキセが呑気に言うので、イラつく。
「そんな呑気にいうな!」
 と切れ気味に返す。
「とりあえず、逃げる」
 このままでは戦えない。髪を持って逃げる。
「待ってって!」
 アキセも追いかける。
「魔女を退治してくれるなら援助しますけど」
 プチ。この状況を抜け出すにはもう協力するしかない。
「はいはい。手伝えばいいんでしょ!絶対に薬を取りなさい!髪はあげないから!こっそりもなし!」
「ち。分かった。魔女退治と薬を取るまで」
 結局こうなるのか。
「あれ、確かこの先・・・待った!」
 アキセに腕を掴まれる。
「何よ!」
「この先に川がある!」
 川がある。水が弱点を察して川に追い込もうとしたのか。
「まさか・・・」
「そこまで頭回っているとは思えない。ダリヤと組んだな」
 その時、森の中から金色の糸が蛇のように襲ってくる。アキセと左右に跳ぶ。
「おまえ!よくも!」
 追いついてきたコウガイジが赤い槍を振り下ろして、アキセに襲う。
「もう追いつきやがって!」
 アキセは召喚した銃で撃つも、コウガイジは赤い槍を手で回してかわす。そのままアキセと距離を詰める。アキセも近距離は避けたいようで、コウガイジから距離を取る。そのままアキセと離れる。
 魔女の姿が全く見えない。遠くから的確に狙ってくる。
 髪を抱えながらでは戦えない。とりあえず、この場から離れなくては。
 その時、ジャンヌの足に金髪が絡め、体を倒される。このままでは川に引っ張られる。その前に足に白い炎を流し、金髪を燃やす時だった。上から片割れの大ハサミを持った金髪が上から振り下ろす。横に転がって避けるも、髪を切られてしまう。
切られたのは、腰から下までだったが、それでもまだ髪が急に伸び、体力が奪われる。息が上がる。膝がつく。早く立たなければ。次の攻撃が来る。
 金髪が蛇のように迫り、また体を絡められる。白い炎で燃やそうとしたが、片割れのハサミを持った金髪がジャンヌの髪を切断する。
 今度は大部切られ、さらに髪が伸びる。
 ダリヤに気付かれた。髪を切れば、動きが鈍くなることを。抵抗するにも白い炎が生み出せない。そのまま引きずられる。
 森が抜け、川が見えた。それに髪を伸ばしたダリヤも。
「いらっしゃ~い」
 不気味に嬉しそうに笑うダリヤ。
 そのまま川に落とされる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

Heroic〜龍の力を宿す者〜

Ruto
ファンタジー
少年は絶望と言う名の闇の中で希望と言う名の光を見た 光に魅せられた少年は手を伸ばす 大切な人を守るため、己が信念を貫くため、彼は力を手に入れる 友と競い、敵と戦い、遠い目標を目指し歩く 果たしてその進む道は 王道か、覇道か、修羅道か その身に宿した龍の力と圧倒的な才は、彼に何を成させるのか ここに綴られるは、とある英雄の軌跡 <旧タイトル:冒険者に助けられた少年は、やがて英雄になる> <この作品は「小説家になろう」にも掲載しています>

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます

柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。 社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。 ※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。 ※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意! ※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

処理中です...