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豊富な国⑤
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城から転送して逃げられた。今、路地裏にいるようだ。
アキセに確かめたいことがある。
「正直に言え!私を騙したのか!」
アキセを壁に押し付ける。
前科がありすぎて疑いたくなる。
「あれは間違いなく魔女だった!」
「けど、魔術師だった」
「俺だって知らん!コルンので探したんだぞ。だとしたら、騙された・・・」
その言葉で一気に青ざめる。
魔女がこちらの行動を読まれているということ。魔術師の話を訊いている限り、魔女と接触はしていない。あの状況でウソをついていたとは思えない。
魔女は別の目的で動いている。城に誘いこんだ理由が別にある。引き離すためが目的なら。
「まずい・・・」
ロムが危ない。
「すぐにロムの元へ転送しろ!」
「分かったから、そんなどっ!」
その時、アキセに突き飛ばされ、アキセの肩に何かが当たった。
襲撃。
「ち」とアキセは肩を押さえる。
さらに何かが壁に当たり、壁から陣が光る。
「これは!」
アキセは言い切る前に陣とともに消える。
「消えた・・・」
魔術で転送されたのか。これではロムの元へ転送ができない。
周りを見ても、人影は見当たらない。
これではっきりした。狙いはロムだということを。転送させないためにアキセを転送させたとしか思えない。
すぐにロムがいる廃屋へ走る。
遅かった。
廃屋に着けば、扉が開いていた。
アキセが魔術で封じているはずが開いている。
ロムが逃げ出したとは考えにくい。誰かが開けたとしても争った形跡がない。ロムを知っているのは。まさか。
ロムはエッダに引っ張られ、町の中を走っていた。
「どこに行くんですか?」
「まず、新聞社に行って、この国に知らせるんです。新聞社なら食いつくはずです」
「その前になんでエッダさんが?」
「作戦失敗したと聞いて、すぐにドワーフさんを探しました」
「待って。どうして?」
失敗したにしても場所が分かった。
「猫が知らせてきたんです。魔術とかで作った猫だと思いますが、あなたの居場所も猫が案内してくれました」
「鍵をどうやって?」
鍵は閉めていたはず。
「猫が開けてくれたんです」
エッダはその猫に誘導してきたそうだ。だとしてもその猫は見当たらない。
聖女はエッダとの協力はあまりよくなかった。作戦失敗したとしても、エッダに伝えるだろうか。
「今ドワーフさんを守れるのは、私だけなんですよ。早く公表しましょう。これで私も名前が残れます」
今、耳を疑った。
エッダから手を払う。
エッダは払われたことに驚いていた。
「今、名前が残れるってどういうことですか・・・」
「私、普通に生きるのが嫌なんです」
「は・・・」
「毎日学校に行って友達と話したり、遊んだり、卒業したら、このまま家具屋の娘として生きていくんだろうなって。何も残せず、ただの一般人で消えていくんだろうなって。だから何か一つみんなに残るようなことをしようと思ったんです」
エッダは、隠すこともなく答える。
「そこで工場の秘密を明かしてやろうと思ったら、まさかドワーフが重労働していたとは思いませんでした。でもこれでネタは十分でした。後はどうやって公表しようか考えていたところであなたを見つけました。あなたが公表すればもっと効果的です。お願いします。協力してください」
私のためにって聞こえる。
「訊きますけど、公表したあと、何を考えていますか・・・」
「まだ考えてないです。公表した後に考えようとしていたので」
そんな言葉は訊きたくなかった。
「何それ・・・」
そんな答えも訊きたくなかった。
「信じたかった」
「ん?」
「本当のことを知っても信じたくなかった。国がウソをついていたことに。僕たちは国のために思って休まず働いていたのに。道具を有り余ったり、捨てたりして。あんな簡単に・・・けど・・・あなたの想いを訊いてまた信じたいと思ったのに。変えたかったのに。そんな理由で!」
声を上げれば、エッダは一歩下がる。
「ちょっと・・・落ち着いてよ・・・」
エッダは懐から包丁を取り出す。
「やめて・・・私はここまでする気がないから・・・落ち着いて・・・」
エッダは震えながら包丁を向ける。
その包丁もドワーフが作ったもの。食べ物を切る道具。
使い方を知らないなら使うな。もう触るな。
「触るな!」
ロムはエッダの手にしがみつく。
「離して!」
エッダから包丁を奪う。
「道具に触るな!」
エッダに刺す。
「触るな触るな触るな触るな触るな触るな。触るなあああああああ!」
包丁で何度もエッダを刺した。
何度も刺さっている内にエッダの声は徐々に消え、全く動かなくなった。
あれ。
血生くさい。エッダの体が赤い。動いていない。
「あ・・・あ・・・」
手に赤く染まっている。
目の前に赤く染まっているエッダが倒れている。息もしていない。
よく見れば、これは自分が作った包丁。食べ物を切るために作った道具。人を殺す道具ではない。
「あ・・・あ・・・」
息が乱れていく。
「ロム!」
その時、ジャンヌが来た。
「あなた。何を!」
ジャンヌは驚愕し、責めるように声を上げる。
「違う!・・・殺すなんて!・・・」
その時。
「もううるさいわね~」
窓から寝ぼけた女が顔を出す。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ」
女は叫び声が響く。
「人殺しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
なんだなんだと女の叫び声で次々に家から人が現れる。騒がしくなる。
「ロム。ここは離れ・・・」
急に聖女が倒れる。
「聖女様・・・」
その時頭に衝撃がした。
アキセに確かめたいことがある。
「正直に言え!私を騙したのか!」
アキセを壁に押し付ける。
前科がありすぎて疑いたくなる。
「あれは間違いなく魔女だった!」
「けど、魔術師だった」
「俺だって知らん!コルンので探したんだぞ。だとしたら、騙された・・・」
その言葉で一気に青ざめる。
魔女がこちらの行動を読まれているということ。魔術師の話を訊いている限り、魔女と接触はしていない。あの状況でウソをついていたとは思えない。
魔女は別の目的で動いている。城に誘いこんだ理由が別にある。引き離すためが目的なら。
「まずい・・・」
ロムが危ない。
「すぐにロムの元へ転送しろ!」
「分かったから、そんなどっ!」
その時、アキセに突き飛ばされ、アキセの肩に何かが当たった。
襲撃。
「ち」とアキセは肩を押さえる。
さらに何かが壁に当たり、壁から陣が光る。
「これは!」
アキセは言い切る前に陣とともに消える。
「消えた・・・」
魔術で転送されたのか。これではロムの元へ転送ができない。
周りを見ても、人影は見当たらない。
これではっきりした。狙いはロムだということを。転送させないためにアキセを転送させたとしか思えない。
すぐにロムがいる廃屋へ走る。
遅かった。
廃屋に着けば、扉が開いていた。
アキセが魔術で封じているはずが開いている。
ロムが逃げ出したとは考えにくい。誰かが開けたとしても争った形跡がない。ロムを知っているのは。まさか。
ロムはエッダに引っ張られ、町の中を走っていた。
「どこに行くんですか?」
「まず、新聞社に行って、この国に知らせるんです。新聞社なら食いつくはずです」
「その前になんでエッダさんが?」
「作戦失敗したと聞いて、すぐにドワーフさんを探しました」
「待って。どうして?」
失敗したにしても場所が分かった。
「猫が知らせてきたんです。魔術とかで作った猫だと思いますが、あなたの居場所も猫が案内してくれました」
「鍵をどうやって?」
鍵は閉めていたはず。
「猫が開けてくれたんです」
エッダはその猫に誘導してきたそうだ。だとしてもその猫は見当たらない。
聖女はエッダとの協力はあまりよくなかった。作戦失敗したとしても、エッダに伝えるだろうか。
「今ドワーフさんを守れるのは、私だけなんですよ。早く公表しましょう。これで私も名前が残れます」
今、耳を疑った。
エッダから手を払う。
エッダは払われたことに驚いていた。
「今、名前が残れるってどういうことですか・・・」
「私、普通に生きるのが嫌なんです」
「は・・・」
「毎日学校に行って友達と話したり、遊んだり、卒業したら、このまま家具屋の娘として生きていくんだろうなって。何も残せず、ただの一般人で消えていくんだろうなって。だから何か一つみんなに残るようなことをしようと思ったんです」
エッダは、隠すこともなく答える。
「そこで工場の秘密を明かしてやろうと思ったら、まさかドワーフが重労働していたとは思いませんでした。でもこれでネタは十分でした。後はどうやって公表しようか考えていたところであなたを見つけました。あなたが公表すればもっと効果的です。お願いします。協力してください」
私のためにって聞こえる。
「訊きますけど、公表したあと、何を考えていますか・・・」
「まだ考えてないです。公表した後に考えようとしていたので」
そんな言葉は訊きたくなかった。
「何それ・・・」
そんな答えも訊きたくなかった。
「信じたかった」
「ん?」
「本当のことを知っても信じたくなかった。国がウソをついていたことに。僕たちは国のために思って休まず働いていたのに。道具を有り余ったり、捨てたりして。あんな簡単に・・・けど・・・あなたの想いを訊いてまた信じたいと思ったのに。変えたかったのに。そんな理由で!」
声を上げれば、エッダは一歩下がる。
「ちょっと・・・落ち着いてよ・・・」
エッダは懐から包丁を取り出す。
「やめて・・・私はここまでする気がないから・・・落ち着いて・・・」
エッダは震えながら包丁を向ける。
その包丁もドワーフが作ったもの。食べ物を切る道具。
使い方を知らないなら使うな。もう触るな。
「触るな!」
ロムはエッダの手にしがみつく。
「離して!」
エッダから包丁を奪う。
「道具に触るな!」
エッダに刺す。
「触るな触るな触るな触るな触るな触るな。触るなあああああああ!」
包丁で何度もエッダを刺した。
何度も刺さっている内にエッダの声は徐々に消え、全く動かなくなった。
あれ。
血生くさい。エッダの体が赤い。動いていない。
「あ・・・あ・・・」
手に赤く染まっている。
目の前に赤く染まっているエッダが倒れている。息もしていない。
よく見れば、これは自分が作った包丁。食べ物を切るために作った道具。人を殺す道具ではない。
「あ・・・あ・・・」
息が乱れていく。
「ロム!」
その時、ジャンヌが来た。
「あなた。何を!」
ジャンヌは驚愕し、責めるように声を上げる。
「違う!・・・殺すなんて!・・・」
その時。
「もううるさいわね~」
窓から寝ぼけた女が顔を出す。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ」
女は叫び声が響く。
「人殺しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
なんだなんだと女の叫び声で次々に家から人が現れる。騒がしくなる。
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急に聖女が倒れる。
「聖女様・・・」
その時頭に衝撃がした。
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