魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
236 / 648

豊富な国③

しおりを挟む
 茶髪の10代前半といった少女だった。
「あなたは?」
「エッダと申します。ドワーフの事情は知っています。重労働の中で働いていることに」
「それはこの国民が知っているの。それともあなただけ知っているの?」
「おそらく私だけかもしれません・・・」
「だったら、どうして知っているの?」
 やはり国はドワーフのことを隠している。だったらなぜ知っている。
「私の家は、家具を売っています。仕入れる時は工場から卸しています」
「工場?」
「はい。工場は、魔術でモノを作っているとしか訊いていません。それに工場へは立ち入り禁止になっています。私は工場がとても気になっていたので、遠隔でも見られる魔道具で工場の進入をしました」
 好奇心にしても恐れ知らずだな。
「え!入ったの!」
「はい。確かに機密にしては、警部は薄かったです」
「ん・・・」
「その魔道具の機能とどこで手に入れた?」
 アキセがエッダに訊く。
「この国の魔道具専門店で買いました。魔術で鳥を飛ばして、鳥が見た物を眼鏡に写すものです」
「そうか」
 魔術に関してはアキセの方が詳しい。何か感じたのだろうか。
 それにしても一般人でも手に入れるほどの魔道具が簡単に進入できた。警備が薄いだけだろうか。
「映像を見て、驚きました。まさか、ドワーフが作っていたとは思いませんでした」
 それで極秘情報を知ってしまったのか。
「あなたの経緯は分かったけど、で、どうして私をつけてきたの」
「私・・・ドワーフを助けたいんです!」
 何を言い出すかと思えば。
「こんなのは間違っています。ドワーフの現状を国民に知らせるべきなんです。そうすれば、みんな気づきます」
 あんまり先のことを考えていない。
「あなたもドワーフを解放しに来たんですよね。だったら」
「いらない」
 エッダの言葉を遮るように言う。
「え・・・」
「あなたの想いは分かった。けど私は別の目的があるから、ドワーフと一緒にいるだけ」
「でも!」
「僕も」
 横から入ったのは、ロムだった。
「仲間は多い方がいいのでは。エッダさんもこの国のために変えたいと思っています」
 現実を知っても、まだ国民と手を組みたいものだろうか。エッダの想いを聞いて、まだ信じたいのかもしれない。
「聖女様は魔女を狩れば、去るんですよね」
 ロムとの約束は魔女狩りまでの約束だった。確かにその後のことも考えてほしいとは言ったが。
「魔女を退治すれば、全て解決するはずです。その後は立て直すためにも協力が必要になります」
 エッダはただの一般人。解決したとはいえ、何かできるとは思えない。
 でも、それ以降は関わらない。何をしようと関係がない。
「分かった。だったらせめて私の用事が終わるまでは待機ということにしてくれる。今の時点であなたは必要ない」
 いらないと言ってるのと変わらないが。
「分かりました・・・」
 エッダは去る。
 何を準備するのやら。
 確かに魔女狩りまでしない。最後まで見るわけでもない。余計な詮索をしない。
 ただなんだろう。このざわつきは。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...