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夢喰の魔女⑤
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「ルナは?」
ルナがいない。
「大丈夫よ。そっちはバクに頼んだから。まあ、危うく君の知り合いに襲われるところだったけど」
ロリコンに格下げ決定。
「私からの教訓。夢の魔女は目を狙いなさい」
「目?」
「目は夢の出入り口にもなっているからよ。目を潰せば、こっちの勝ちよ」
ネスティスの紫の手が、水から抜けるように人の肉体になっている。
「実体しかけている」
ルナから本を食べられたと言っていたが、その影響だろうか。
「終わらせるよ」
「はい!」
ロザリオを構える。
スズノは、槍を振り回りながら、足元に刺し、目にも止まらぬ速さで花のように銀色の結晶が広がっていく。
ネスティスは大きく手を振り、紫の液体が波のように立ち、壁となって銀色の結晶を防ぐ。
その時、頬に水が頬に触れる。上を向ければ、水が滝のように迫ってくる。
「え?」
ジャンヌは前に飛び出す。かわしたつもりが、滝は方向を変え、目の前に来る。
――そんなのあり。
横からスズノが槍で振り下ろし、滝を切る。滝は蒸発するように消える。
「ここは夢よ。常識なんて通じない。どこからどんな攻撃するかなんて予想できないんだから」
「どうやって相手するんですか!」
「だから、いま夢と切断しているの」
よく見れば、足元だけでなく、上空にも銀色の結晶が、雪の結晶のように広がり、壁を張っていく。スズノが槍を振り回した時に飛ばしたのだろうか。
その時、ネスティスが背後に跳ぶ。塞ぎっていない銀色の結晶の隙間に。
「逃げる!」
スズノは慌てる様子がない。
銀色の結晶の壁から銀色の槍が伸びる。ネスティスの体と首を貫通する。首が離れる。
「ち。外したか」
スズノは舌打ちしながら言う。
離れた首から紫の液体が漏れ、また体を作る。
やはり目を狙わなければ、終わらないようだ。それ以外に切っても、再生するということか。
「でも、これで魔女の夢と切断する。夢で攻撃することはない」
もう辺りは、銀色の結晶に囲まれていた。
これで魔女を閉じ込めたことで、逃げ場を失い、夢の攻撃はなくなった。あとは目を狙うだけ。
体を再構成したネスティスは足に着いたとたんに足が銀色に結晶化する。
「行くよ!」
スズノとジャンヌは走る。
ネスティスの体から紫の槍を伸ばす。
ジャンヌはかわし、ロザリオで斬っていく。スズノも同様にかわしながら、槍で切っていく。
ネスティスの体が銀色の結晶に侵食し、攻撃が止んだ。
一気に距離を詰め、ジャンヌとスズノはロザリオと槍でネスティスの頭を貫通する。
ネスティスは悲痛な叫びを上げるも、顔まで銀色の結晶化する。
ジャンヌとスズノはロザリオと槍を払い、結晶化したネスティスは砕け散る。
ネスティスを退治できたことで安堵の溜息を吐く。
「お疲れ」
スズノが言う。
「よくあんなのと戦ってますね」
「私の苦労分かってくれる」
夢は常識が通じないからどんな攻撃するか予想ができない。考えるだけで疲れる。
「今回は夢と切断できたからよかったけど、あれで効かない夢の魔女がいるわよ」
「うわ~戦いたくない」
その時、割れる音はする。
銀色の結晶の壁は、役目を終えたように、ヒビが入り、砕けていく。その隙間から光が差す。割れた壁からバクが戻ってきた。
「くう」
疲れたのか、スズノの肩に乗る。
「バクもお疲れ」
スズノはバクの頭をなでる。バクはスズノの耳元で囁く。
「ルナちゃんは無事ね。あら、ルシアとあの男も生きているようね」
その二人は魔女ごと飲み込んでほしかった。
「仕留めそこなったか」
スズノは悔やんでいる。
「ジャンヌ。次はちゃんとルシアを仕留めてね」
笑顔で軽く脅している。
ルシアを退治すれば、仕事を負担が減らせるからだろう。
「機会があれば・・・」
「それにあなた。魔女になめられているでしょ。これから先苦労するわよ」
「私だって解放したいところです」
「そこまで言うようになれば、もう大丈夫ね」
スズノは安心したように言う。
「ん?」
「あまり夢を意識しちゃだめよ。夢は複雑だから『光』が届かない場合があるのよ。普通の聖女は入れないから、狙っている魔女が多いの」
スズノは光の方へ向く。
「あなた。悪夢を見たことがないでしょ」
もしかして。
「あの・・・」
「もう夢の中にはいっちゃだめよ」
眩しくなるほど光り、スズノとバクは光の中へと消える。
目を覚めれば、日が昇り、芝生の上に横になっていた。
城はなくなっている。ルシアのタタリが消えたようだ。ルナも近くで寝ている。ルナの指に指輪がなかった。アキセに回収されただろう。
スズノのことを思い出す。
そうか。見ていたんだ。ずっと。
ルナを家に返した。
「ほんとうにありがとうございました」
ルナの父は頭を深く下げる。
「いえいえ。もう魔女に騙されないでよ」
「はい・・・」
ルナもかなり反省しているようだ。
「ルナちゃん。アドバイスをしてあげる」
ジャンヌはルナに言う。
「口説いている男ほど気を付けて。男はそこまで器用な生き物じゃないから」
ルナがいない。
「大丈夫よ。そっちはバクに頼んだから。まあ、危うく君の知り合いに襲われるところだったけど」
ロリコンに格下げ決定。
「私からの教訓。夢の魔女は目を狙いなさい」
「目?」
「目は夢の出入り口にもなっているからよ。目を潰せば、こっちの勝ちよ」
ネスティスの紫の手が、水から抜けるように人の肉体になっている。
「実体しかけている」
ルナから本を食べられたと言っていたが、その影響だろうか。
「終わらせるよ」
「はい!」
ロザリオを構える。
スズノは、槍を振り回りながら、足元に刺し、目にも止まらぬ速さで花のように銀色の結晶が広がっていく。
ネスティスは大きく手を振り、紫の液体が波のように立ち、壁となって銀色の結晶を防ぐ。
その時、頬に水が頬に触れる。上を向ければ、水が滝のように迫ってくる。
「え?」
ジャンヌは前に飛び出す。かわしたつもりが、滝は方向を変え、目の前に来る。
――そんなのあり。
横からスズノが槍で振り下ろし、滝を切る。滝は蒸発するように消える。
「ここは夢よ。常識なんて通じない。どこからどんな攻撃するかなんて予想できないんだから」
「どうやって相手するんですか!」
「だから、いま夢と切断しているの」
よく見れば、足元だけでなく、上空にも銀色の結晶が、雪の結晶のように広がり、壁を張っていく。スズノが槍を振り回した時に飛ばしたのだろうか。
その時、ネスティスが背後に跳ぶ。塞ぎっていない銀色の結晶の隙間に。
「逃げる!」
スズノは慌てる様子がない。
銀色の結晶の壁から銀色の槍が伸びる。ネスティスの体と首を貫通する。首が離れる。
「ち。外したか」
スズノは舌打ちしながら言う。
離れた首から紫の液体が漏れ、また体を作る。
やはり目を狙わなければ、終わらないようだ。それ以外に切っても、再生するということか。
「でも、これで魔女の夢と切断する。夢で攻撃することはない」
もう辺りは、銀色の結晶に囲まれていた。
これで魔女を閉じ込めたことで、逃げ場を失い、夢の攻撃はなくなった。あとは目を狙うだけ。
体を再構成したネスティスは足に着いたとたんに足が銀色に結晶化する。
「行くよ!」
スズノとジャンヌは走る。
ネスティスの体から紫の槍を伸ばす。
ジャンヌはかわし、ロザリオで斬っていく。スズノも同様にかわしながら、槍で切っていく。
ネスティスの体が銀色の結晶に侵食し、攻撃が止んだ。
一気に距離を詰め、ジャンヌとスズノはロザリオと槍でネスティスの頭を貫通する。
ネスティスは悲痛な叫びを上げるも、顔まで銀色の結晶化する。
ジャンヌとスズノはロザリオと槍を払い、結晶化したネスティスは砕け散る。
ネスティスを退治できたことで安堵の溜息を吐く。
「お疲れ」
スズノが言う。
「よくあんなのと戦ってますね」
「私の苦労分かってくれる」
夢は常識が通じないからどんな攻撃するか予想ができない。考えるだけで疲れる。
「今回は夢と切断できたからよかったけど、あれで効かない夢の魔女がいるわよ」
「うわ~戦いたくない」
その時、割れる音はする。
銀色の結晶の壁は、役目を終えたように、ヒビが入り、砕けていく。その隙間から光が差す。割れた壁からバクが戻ってきた。
「くう」
疲れたのか、スズノの肩に乗る。
「バクもお疲れ」
スズノはバクの頭をなでる。バクはスズノの耳元で囁く。
「ルナちゃんは無事ね。あら、ルシアとあの男も生きているようね」
その二人は魔女ごと飲み込んでほしかった。
「仕留めそこなったか」
スズノは悔やんでいる。
「ジャンヌ。次はちゃんとルシアを仕留めてね」
笑顔で軽く脅している。
ルシアを退治すれば、仕事を負担が減らせるからだろう。
「機会があれば・・・」
「それにあなた。魔女になめられているでしょ。これから先苦労するわよ」
「私だって解放したいところです」
「そこまで言うようになれば、もう大丈夫ね」
スズノは安心したように言う。
「ん?」
「あまり夢を意識しちゃだめよ。夢は複雑だから『光』が届かない場合があるのよ。普通の聖女は入れないから、狙っている魔女が多いの」
スズノは光の方へ向く。
「あなた。悪夢を見たことがないでしょ」
もしかして。
「あの・・・」
「もう夢の中にはいっちゃだめよ」
眩しくなるほど光り、スズノとバクは光の中へと消える。
目を覚めれば、日が昇り、芝生の上に横になっていた。
城はなくなっている。ルシアのタタリが消えたようだ。ルナも近くで寝ている。ルナの指に指輪がなかった。アキセに回収されただろう。
スズノのことを思い出す。
そうか。見ていたんだ。ずっと。
ルナを家に返した。
「ほんとうにありがとうございました」
ルナの父は頭を深く下げる。
「いえいえ。もう魔女に騙されないでよ」
「はい・・・」
ルナもかなり反省しているようだ。
「ルナちゃん。アドバイスをしてあげる」
ジャンヌはルナに言う。
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