上 下
232 / 642

夢喰の魔女④

しおりを挟む
「あれ、ここは・・・」
 紫の霧に包まれた。
 ネスティスの仕業だろう。
 周囲が黒く染まって見えない。それに『呪い』が濃いおかげで『光』が消耗していく。早くネスティスを退治しなくては。
「タスケテ・・・」
 声がした。振り向けば、火に燃えていく人が手を伸ばしている。
 息が止まるところだった。
「タスケテ。聖女様~」
 あの時と同じ状況。
 でも、これは夢。夢の魔女が見せている。混乱を起こさせるために。落ち着けばいいだけ。冷静に。
 え。なにこれ。
 息が乱れる。鼓動が激しくなる。頭も痛い。気持ち悪い。
 あの時と同じ症状。
 克服したはずなのに。受け入れたはずなのに。
 落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け。
 これは夢。
 タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ。
 耳を塞いでも直接頭に入っていく。
 助けを求める男、女、子供の声が響く。
「うるさい!」
 怒鳴る。
「ルチア様みたいな聖女になりたいです」
 幼い女の声。目の前に幼いジャンヌがいた。
「教えてください教えてください教えてください教えてください教えてください教えてください教えてください」
 すがるように幼いジャンヌは言う。
 あの時は、純粋に人から守れる聖女になりたかったけど。
「分かってない!あなたは・・・何も・・・」
 ルチアと同じ言葉を。
「だから、ルチア様を」
 幼いジャンヌが言いかけた時だった。
 抱きしめられた。
「これは夢よ」
 スズノが強く抱きしめ、優しく言う。
「あなたの過去は消えないけど、自分を否定してはいけない。自分まで拒否したらもう何もできなくなる。だから・・・つらいことがあっても、過去を乗り越えて自分を手に入れなさい」
 スズノの中で優しく包まれる。
 あの時、ルチアにこんな風に言ってほしかったんだ。
「それに」
 スズノは言葉を詰まる。
「ルチアはあなたを責めるような人じゃないから」
スズノの瞳は、とても優しく見つめる。
「ルチアさんを・・・」
「あなたの『光』を消耗させて取り込むつもりだったのよ」
「でもどうして、『光』で効かないはず・・・」
 『光』は『呪い』を浄化する。タタリにかかることはないはず。
「それが夢を実現させない理由よ。夢は常識なんて通じない。だから私は夢を守っているの」
 スズノは立ち上がり、「いい加減に姿を見せな!ネスティス!」と槍を大きく振るう。
 周辺がガラスのように割れる。その先に紫色の液体から大きいベールをかぶった人型が姿を見せる。
「あれが今回のターゲット。むくいの魔女ネスティス・ドリーゴーストよ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

瓦礫の上の聖女

基本二度寝
恋愛
聖女イリエーゼは王太子に不貞を咎められ、婚約破棄を宣言された。 もちろんそれは冤罪だが、王太子は偽証まで用意していた。 「イリエーゼ!これで終わりだ」 「…ええ、これで終わりですね」

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます

柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。 社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。 ※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。 ※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意! ※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...