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夢喰の魔女③
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「何よ。泣きたいのはこっちなんですけど」
ジャンヌは泣きつくルシアを見下ろす。
ルシアがここまで泣きつくとは。
「だって!だって!来たんだもん!」
「何が」
もう嫌な予感。
廊下の隙間から紫の液体が漏れている。
「あれって・・・」
「僕の天敵の夢喰(むくい)の魔女ネスティス・ドリーゴーストだよ~」
紫の液体は槍に変えて伸ばしていく。
「まさか魔女が二人も出るなんて!」
ロザリオを出し、白い炎を向ける。
白い炎に包まれた紫の液体は、蒸発するように消える。だか、次々と壁の隙間から紫の液体が溢れていく。このままでは切りがない。
「ルシア!ネスティスはどこにいる!」
ルシアに訊く。
「今ここにいない」
「役立たず!」
ジャンヌはロザリオで次々に紫の液体を撃退する。
「てか。私に押し付けるつもり!」
「主導権を奪われたから僕戦えない」とルシアが言う。
「俺も」とアキセが言う。
「おまえはウソだろ!」
――完璧に押し付ける気満々じゃないの。
「俺は今諸事情で・・・」
「ルナちゃんに結婚指輪として持ってまーす」とルシアが陽気に言うので、さらに腹が立つ。
「たく!お荷物二人!」
ルシアの元に紫の液体が襲いかかる。
「うわー助けて~ジャンヌ~」
ルシアが目の前に回り、ジャンヌを突き飛ばす。
「ルシア!」
一番ルシアに殺意が芽生えた。
目の前に紫の槍が向けていた。防がれない。
その時、紫の槍に白い光線が通る。
目の前に迫ってきた紫の槍は消える。
白い光線は、廊下を埋めるほど広がった。光線が消えれば、紫の液体も消えていく。
方向は後ろだった。振り向けば、鼻を伸ばし、ネコよりやや大きめの4本足の生き物が浮いていた。
『光』を感じる聖獣(ルーチェス)か。
聖女以外にも『光』を持つ獣だか、なぜ、聖獣がなんでこんなところにいる。
「くうううううううう」
聖獣(ルーチェス)が威嚇している。
「よくやった。バク」
奥から女の声。とても訊いたことのある声。
黒と銀の混ざった長い髪を結う。黒の目。袖がない丈の長い上着 銀色の袖。胸には白い布で留めている。ズボンに似ている穿物。透き通る銀色の長い衣を纏う。刃元に長い布紐を巻いた槍を持った女だった。
おそらく聖女だとしても聖女の地で見たことがない。
よく見れば、聖女の陰でルナがいた。どうやら、聖女に助けられたようだ。
紫の液体は壁の中へと消える。
「逃げ足の速いこと」
鋭い目つきをする聖女。
「あなたは・・・」
その時、ジャンヌの横で光の刃が通る。
その先はルシアだった。光の刃がルシアを壁に張り付かせる。ルシアも驚いている。
「あなたね。くうそうの魔女ルシア・ファンタジアね」
聖女は笑顔でルシアに近づく。
「え?何!?」
「あなたのおかげでこっちの仕事を増やしているのよ。知らないでしょう」
ルシアが冷や汗をかく。
「え?僕、何かした?」
ルシアがとぼけるように言う。
「ただでさえ、忙しいのに過労で死にたくないわ。余計なことをしないでくれるかな」
聖女の笑顔の中に殺意を感じる。
槍がルシアの首に添える。
「ごめんなさい!」
ルシアが子供のように泣いている。
どうやら聖女はルシアに恨みがあるようだ。
「すみません。あなたは・・・」
恐れながらジャンヌは聖女に訊く。
「あ~ごめんね。初対面になるね。白の聖女ジャンヌ・ダルク」
――私のことを知っている。
「私は夢の聖女ハゴロモ・スズノよ。そっちは聖獣(ルーチェス)のバクよ」
スズノはバクを紹介する。
「スズノさん・・・」
「まあ、驚いちゃうよね。普段、寝ているから知らないのも同然ね」
「そうなんですか。そんなあなたがどうして?」
聖女の地に寝ているということは目の前にいるのは一体。
「夢の聖女は、夢の中にいる魔女を退治するのが仕事なの。今、目の前にいるのは、夢の私。つまり魂みたいなものかな」
「は・・・夢に中にいるなら、なおさらどうして?」
夢の中にいる聖女がここにいるってことは。
「今この空間は、夢と現実が入り交ざっていて不安定なことになってるの」
「それって・・・」
「そこに貼り付けたルシアが諸悪の根源よ」
スズノはルシアに殺意を向ける。
「あなたの空想を実現する呪力が夢と繋がるのよ。で、便乗して夢の魔女が現実に飛び込むの。その処理を毎回毎回私がしているの」
スズノの顔が険しくなっている。
相当ルシアのことでストレスが溜まっているようだ。
「今回は、夢が現実に侵食しているってとこね」
そういえば、ルシアが主導権を奪われたと言っていたが、夢の魔女に権利を奪われたってことか。
「あの・・・そろそろ魔女狩りしませんか」
アキセが横から静かに言う。
「そうね」
スズノが言う。
「のんびりしている場合じゃないわ。魔女がくる。ルシアを使っておびき出しましょう」
「そうですね」
さっき突き飛ばしたし。
「お慈悲をください!」とルシアが泣き喚く。
「すごい。魔女にそんな言葉知っているんだ」
「あら、何か言ったかしら」
聞き耳持たない。
「やっぱ聖女だ・・・」とアキセが言っていたようだか、無視する。
「そうだ。ルナちゃんが本を持っているから、本を燃やしたら魔女が消えるかも・・・」
なんか急にルシアが小物に見えてきた。
「ルシアちゃん・・・」
ルナが言う。
「本・・・あの紫に食べられちゃって・・・」
ルナが申し訳なさそうに言う
「もうこの魔女使いましょ」
「そうね」
「うわ~ん。ごめんなさい~」
ルシアは泣く。
その時、紫色の霧に包まれる。
ジャンヌは泣きつくルシアを見下ろす。
ルシアがここまで泣きつくとは。
「だって!だって!来たんだもん!」
「何が」
もう嫌な予感。
廊下の隙間から紫の液体が漏れている。
「あれって・・・」
「僕の天敵の夢喰(むくい)の魔女ネスティス・ドリーゴーストだよ~」
紫の液体は槍に変えて伸ばしていく。
「まさか魔女が二人も出るなんて!」
ロザリオを出し、白い炎を向ける。
白い炎に包まれた紫の液体は、蒸発するように消える。だか、次々と壁の隙間から紫の液体が溢れていく。このままでは切りがない。
「ルシア!ネスティスはどこにいる!」
ルシアに訊く。
「今ここにいない」
「役立たず!」
ジャンヌはロザリオで次々に紫の液体を撃退する。
「てか。私に押し付けるつもり!」
「主導権を奪われたから僕戦えない」とルシアが言う。
「俺も」とアキセが言う。
「おまえはウソだろ!」
――完璧に押し付ける気満々じゃないの。
「俺は今諸事情で・・・」
「ルナちゃんに結婚指輪として持ってまーす」とルシアが陽気に言うので、さらに腹が立つ。
「たく!お荷物二人!」
ルシアの元に紫の液体が襲いかかる。
「うわー助けて~ジャンヌ~」
ルシアが目の前に回り、ジャンヌを突き飛ばす。
「ルシア!」
一番ルシアに殺意が芽生えた。
目の前に紫の槍が向けていた。防がれない。
その時、紫の槍に白い光線が通る。
目の前に迫ってきた紫の槍は消える。
白い光線は、廊下を埋めるほど広がった。光線が消えれば、紫の液体も消えていく。
方向は後ろだった。振り向けば、鼻を伸ばし、ネコよりやや大きめの4本足の生き物が浮いていた。
『光』を感じる聖獣(ルーチェス)か。
聖女以外にも『光』を持つ獣だか、なぜ、聖獣がなんでこんなところにいる。
「くうううううううう」
聖獣(ルーチェス)が威嚇している。
「よくやった。バク」
奥から女の声。とても訊いたことのある声。
黒と銀の混ざった長い髪を結う。黒の目。袖がない丈の長い上着 銀色の袖。胸には白い布で留めている。ズボンに似ている穿物。透き通る銀色の長い衣を纏う。刃元に長い布紐を巻いた槍を持った女だった。
おそらく聖女だとしても聖女の地で見たことがない。
よく見れば、聖女の陰でルナがいた。どうやら、聖女に助けられたようだ。
紫の液体は壁の中へと消える。
「逃げ足の速いこと」
鋭い目つきをする聖女。
「あなたは・・・」
その時、ジャンヌの横で光の刃が通る。
その先はルシアだった。光の刃がルシアを壁に張り付かせる。ルシアも驚いている。
「あなたね。くうそうの魔女ルシア・ファンタジアね」
聖女は笑顔でルシアに近づく。
「え?何!?」
「あなたのおかげでこっちの仕事を増やしているのよ。知らないでしょう」
ルシアが冷や汗をかく。
「え?僕、何かした?」
ルシアがとぼけるように言う。
「ただでさえ、忙しいのに過労で死にたくないわ。余計なことをしないでくれるかな」
聖女の笑顔の中に殺意を感じる。
槍がルシアの首に添える。
「ごめんなさい!」
ルシアが子供のように泣いている。
どうやら聖女はルシアに恨みがあるようだ。
「すみません。あなたは・・・」
恐れながらジャンヌは聖女に訊く。
「あ~ごめんね。初対面になるね。白の聖女ジャンヌ・ダルク」
――私のことを知っている。
「私は夢の聖女ハゴロモ・スズノよ。そっちは聖獣(ルーチェス)のバクよ」
スズノはバクを紹介する。
「スズノさん・・・」
「まあ、驚いちゃうよね。普段、寝ているから知らないのも同然ね」
「そうなんですか。そんなあなたがどうして?」
聖女の地に寝ているということは目の前にいるのは一体。
「夢の聖女は、夢の中にいる魔女を退治するのが仕事なの。今、目の前にいるのは、夢の私。つまり魂みたいなものかな」
「は・・・夢に中にいるなら、なおさらどうして?」
夢の中にいる聖女がここにいるってことは。
「今この空間は、夢と現実が入り交ざっていて不安定なことになってるの」
「それって・・・」
「そこに貼り付けたルシアが諸悪の根源よ」
スズノはルシアに殺意を向ける。
「あなたの空想を実現する呪力が夢と繋がるのよ。で、便乗して夢の魔女が現実に飛び込むの。その処理を毎回毎回私がしているの」
スズノの顔が険しくなっている。
相当ルシアのことでストレスが溜まっているようだ。
「今回は、夢が現実に侵食しているってとこね」
そういえば、ルシアが主導権を奪われたと言っていたが、夢の魔女に権利を奪われたってことか。
「あの・・・そろそろ魔女狩りしませんか」
アキセが横から静かに言う。
「そうね」
スズノが言う。
「のんびりしている場合じゃないわ。魔女がくる。ルシアを使っておびき出しましょう」
「そうですね」
さっき突き飛ばしたし。
「お慈悲をください!」とルシアが泣き喚く。
「すごい。魔女にそんな言葉知っているんだ」
「あら、何か言ったかしら」
聞き耳持たない。
「やっぱ聖女だ・・・」とアキセが言っていたようだか、無視する。
「そうだ。ルナちゃんが本を持っているから、本を燃やしたら魔女が消えるかも・・・」
なんか急にルシアが小物に見えてきた。
「ルシアちゃん・・・」
ルナが言う。
「本・・・あの紫に食べられちゃって・・・」
ルナが申し訳なさそうに言う
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