魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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エルフの国⑤

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 どうやら転送されたようだ。
 転送したおかげで椅子ごと絡めたツルが切れ、手足が自由になった。
 何気にアキセが胸を触ったので、「何気に胸を触るな」と軽くアキセの顔を叩く。
「助けてあげたのに」
 アキセは叩いた頬をさする。
「おまえ、わざと捕まっただろ」
 気付いていたか。
「あんたの動きを見たかったからよ」
 と返す。
「ルーズベルムが若返った時点で明らかに魔女と組んでいるのは明白。あんなの魔女の呪力でしかできないわよ。魔女に殺すように言われたところでしょ。あの食事にも毒とか盛られたはず。あとこの首輪はハロルトしか解けないと言っていたし。もしできるとしたら、直接首輪を操って絞め殺したはず。それがツルを使って捕まえただけだった。それに」
 アキセに見つめる。
「問題はおまえだ」
 とアキセに指さす。
「目的が読めない以上何をするか分からない。ただこれだけは分かる。魔女から解放されるには私が殺されては困るってことに」
「よく頭が回るな」
 アキセが感心する。
「俺の目的を知りたいか」
 アキセが誘うような目で見つめる。
「エルフェイムの力?」
「それもいい稼ぎになるけど、一番の目的は、純粋に君を助けようと思ったからさ」
 アキセが口説くように言うので、一気に鳥肌が立つ。
「え・・・」
 ドン引く。
「そんな嫌そうな顔をするなよ。傷つくな」
「イヤだって、あんたから純粋にって・・・」
 逆に気持ち悪くなった。いつも企んでいるから。
「本当に可愛げがないな。相手はエルフェイム。支配する範囲が広い。離れても風で動きや話も分かるんだ。で、困っている魔女と取引したんだ」
「そうですか。で。ここに転送した理由を答えてくれる」
「ここ牢屋」
「え?」
 土と石で作られた牢屋だった。
 天井には外に繋がる穴が一つ。出口に繋がれると思われる階段は途中で土の壁に防がれている。地下に作られた牢屋のようだ。
 土の格子の中に誰かいた。
 それは、手を壁に取り込まれている。体中に痣。髪も短く、水ぼらしい服に着せられているハロルトだった。
 顔が動いた。意識はあるようだ。
 どうして。わざわざハロルトの前に。
「俺の手。タタリにかかってさ」
 アキセの手がまだ紫色に染まっている。タタリにかかっていることは、魔女が倒さない限り解けない。
「つまり・・・」
「魔力を封じられた。それに痛くて魔術も使えない」
「肝心な時に使えないってどういうことよ!」
 少しキレ気味に言う。
「キスして」
「絶対にイヤ!」
 後は、直接タタリを浄化するしかない。つまり体内に直接光を入れるということ。前回はキスで直接『光』をいれようとした。
「だと思ってここに転送したんだ。協力してもらえるために」
 だから、牢屋に転送したということか。だとしたら。
「協力するにしても、あんたの魔力を使わないと・・・」
「魔力で具現化したものなら、念じれば使えるんだ」
「そういうこともできるんだ」
 アキセがハロルトに向く。
「協力すれば、声を返す」
 ハロルトは小さく縦にふる。
 アキセの手に小さな鈴が召喚した。
「ぐ!」
 アキセは鈴を落としてしまう。
 どうやらアキセのかかったタタリは、思っていたより悪化しているようだ。手を動かすことも触ることもできなくなっている。
 その時、鈴は土の中へと消える。
「これって・・・」
 鈴を土の中へと消えていった。
 牢屋が揺れている。
 まさか、牢屋ごと崩すつもりか。
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