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エルフの国④
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「聖女様。我々の争いに巻き込んでしまい、申し訳ございません」
ジャンヌはルーベルムに食事を誘われた。
一時的に部屋に監禁されたが、ルーベルムから話を訊きたいということで夜の食事に呼ばれた。
長いテーブルの上に食事が並べられる。ジャンヌは側面に座る。
「牢屋に入ると思いました」
「何をおっしゃいますか。エルフェイムが私の治療阻止のために捕獲されたと聞きまして」
ルーベルムが口を柔らかく言う。
先ほどまで弱弱しい老人が、今では、長い金髪と緑色の瞳。筋肉質のある美優の男になっている。
どう考えても。
「聖女様もあの者に囚われていただけでは?」
ハロルトは戴冠式と魔女狩りまでの契約だったが、ここは下手に動かず、様子を見る。
「そうですね。無理やり連れてこられました。助けていただきありがとうございます」
「こちらが謝罪するところです」
ルーベルムは笑顔で返す。
「その王子はどうするおつもりで?」
「王子ではない」
ルーベルムは断言する。
「しばらくは娯楽に使いましょう」
だいだい予想はつくか。
「エルフは、自然相愛で聞いていましたけど、そんな娯楽を持つようになったんですね」
エルフは最近、人間に近づいていると聞いていたが、本当のようだ。
「あやつは罪人ですよ。罪人に権利はありません。例え、娯楽として使っても」
「そうですか」
「我々にとってエルフェイムが危険だ。あやつは精霊(スピリット)を独占し、惑わしている。エルフにとっては凶器だ。あんなものを王に就かせてはいけない」
「なぜ、あなたは、精霊術を使えたんですか。王子が精霊(スピリット)を支配していたというのに」
「私には昔から従っている精霊(スピリット)がいるんだ。エルフェイムに惑わすこともなく。私が完治してもまたそばにいる」
精霊にもいるのだろうか、魔女に惑わしても抗体を持てば効かないということを。
「それに突然現れたあの者にも感謝しなくては」
「あの者?」
「エルフェイムの精霊(スピリット)術を封じた仮面の男だ」
「封じたね・・・」
ただ魔力で声を奪ったんだけど。
「話しが長くなってしまった。お詫びに何か差し上げましょうか」
ルーベルムは言う。
「なら、この首輪をどうにかしてくれます」
王子に付けられた首輪を指す。
ハロルトから首輪をつけられた。精霊術を使えるなら外せるかもしれないが。
「分かりました。では」
ルーベルムは詩う。
床から伸びたツルが椅子ごと絡める。城は木や石で作られているため、精霊がいる。城の中からでも精霊術が使えるということ。
予想はしていたが。
「いい加減でないか」
答えるように何もないところから、あの仮面が現れた。
「お疲れ様です」
仮面が消えれば、アキセが陽気に言う。
「やっぱり・・・」
組んでいたか。
「早く聖女を殺せ」
「急かすなよ。王様」
アキセが椅子の横に立つ。
その時、指に違和感があった。
指を見れば、2つにねじ込んだ指輪がはめてある。見たことがある。コルンの発明品の一つ『脳通し指輪』は直接頭に入ってくる。
「首輪を取ったら逃げるぞ」
頭にアキセの声が入る。
アキセの手が首に近づく。魔力で首輪を引き抜くつもりだろう。
その時、アキセの手が紫色の羽に貫通する。
ルーベルムが詩えば、壁から伸びたツルがアキセの手首を絡める。壁へとアキセは引っ張られる。アキセの手首が壁に貼り付けられる。さらにもう片手にも紫色の羽に刺される。
「騙せると思ったのか」
女の声。
紫色の髪に両端に大きい紫色の羽が足まで垂れている。紫色のドレスを着た女だった。
「この毒羽(どくば)の魔女セミラミス・アッシリアから」
セミラミスは見下ろす。
「そんな裏切るなんてひどいじゃないですか。ちゃんと聖女を殺そうとしたのに」
アキセがへらへらという。
「おまえらの関係は噂で知っている。愛人関係でおまえがリリムだということも」
――ちょっと愛人関係ということに文句が言いたい。
かざなりの魔女ウィム・シルフに流した噂を聞いていたのか。
「なんだ。あの噂を聞いたのか。あともしかしてリリスに根に持ってます?」
アキセが冷や汗をかきながら言う。
「根に持つ。何にだ」
セミラミスが険しい顔になっている。
完全にリリスに恨みをもっている。リリスは最強の魔女。勝てないから、その子供であるリリムを襲うこともある。
「おまえ。首輪を取ろうとしたのか」
「なんのことでしょうか」
「往生際が悪い」
アキセの手が紫色に染まっていく。
アキセが苦しんでいる。
「おまえの魔力といったところが、魔術も道具を使っていないところを見ると」
勘がいい。
このままでは状況が悪化する。癪だかアキセを助けるしかない。
手の向きをアキセに向け、手の中に『光』を結晶化し、結晶の刃を飛ばす。アキセの手首に絡めたツルを破いた瞬間、目の前に球体が出現する。床に触れた途端に煙幕が広がる。
視界は真っ白に染まった。そんな中、アキセが飛びつき、景色が変わる。
ジャンヌはルーベルムに食事を誘われた。
一時的に部屋に監禁されたが、ルーベルムから話を訊きたいということで夜の食事に呼ばれた。
長いテーブルの上に食事が並べられる。ジャンヌは側面に座る。
「牢屋に入ると思いました」
「何をおっしゃいますか。エルフェイムが私の治療阻止のために捕獲されたと聞きまして」
ルーベルムが口を柔らかく言う。
先ほどまで弱弱しい老人が、今では、長い金髪と緑色の瞳。筋肉質のある美優の男になっている。
どう考えても。
「聖女様もあの者に囚われていただけでは?」
ハロルトは戴冠式と魔女狩りまでの契約だったが、ここは下手に動かず、様子を見る。
「そうですね。無理やり連れてこられました。助けていただきありがとうございます」
「こちらが謝罪するところです」
ルーベルムは笑顔で返す。
「その王子はどうするおつもりで?」
「王子ではない」
ルーベルムは断言する。
「しばらくは娯楽に使いましょう」
だいだい予想はつくか。
「エルフは、自然相愛で聞いていましたけど、そんな娯楽を持つようになったんですね」
エルフは最近、人間に近づいていると聞いていたが、本当のようだ。
「あやつは罪人ですよ。罪人に権利はありません。例え、娯楽として使っても」
「そうですか」
「我々にとってエルフェイムが危険だ。あやつは精霊(スピリット)を独占し、惑わしている。エルフにとっては凶器だ。あんなものを王に就かせてはいけない」
「なぜ、あなたは、精霊術を使えたんですか。王子が精霊(スピリット)を支配していたというのに」
「私には昔から従っている精霊(スピリット)がいるんだ。エルフェイムに惑わすこともなく。私が完治してもまたそばにいる」
精霊にもいるのだろうか、魔女に惑わしても抗体を持てば効かないということを。
「それに突然現れたあの者にも感謝しなくては」
「あの者?」
「エルフェイムの精霊(スピリット)術を封じた仮面の男だ」
「封じたね・・・」
ただ魔力で声を奪ったんだけど。
「話しが長くなってしまった。お詫びに何か差し上げましょうか」
ルーベルムは言う。
「なら、この首輪をどうにかしてくれます」
王子に付けられた首輪を指す。
ハロルトから首輪をつけられた。精霊術を使えるなら外せるかもしれないが。
「分かりました。では」
ルーベルムは詩う。
床から伸びたツルが椅子ごと絡める。城は木や石で作られているため、精霊がいる。城の中からでも精霊術が使えるということ。
予想はしていたが。
「いい加減でないか」
答えるように何もないところから、あの仮面が現れた。
「お疲れ様です」
仮面が消えれば、アキセが陽気に言う。
「やっぱり・・・」
組んでいたか。
「早く聖女を殺せ」
「急かすなよ。王様」
アキセが椅子の横に立つ。
その時、指に違和感があった。
指を見れば、2つにねじ込んだ指輪がはめてある。見たことがある。コルンの発明品の一つ『脳通し指輪』は直接頭に入ってくる。
「首輪を取ったら逃げるぞ」
頭にアキセの声が入る。
アキセの手が首に近づく。魔力で首輪を引き抜くつもりだろう。
その時、アキセの手が紫色の羽に貫通する。
ルーベルムが詩えば、壁から伸びたツルがアキセの手首を絡める。壁へとアキセは引っ張られる。アキセの手首が壁に貼り付けられる。さらにもう片手にも紫色の羽に刺される。
「騙せると思ったのか」
女の声。
紫色の髪に両端に大きい紫色の羽が足まで垂れている。紫色のドレスを着た女だった。
「この毒羽(どくば)の魔女セミラミス・アッシリアから」
セミラミスは見下ろす。
「そんな裏切るなんてひどいじゃないですか。ちゃんと聖女を殺そうとしたのに」
アキセがへらへらという。
「おまえらの関係は噂で知っている。愛人関係でおまえがリリムだということも」
――ちょっと愛人関係ということに文句が言いたい。
かざなりの魔女ウィム・シルフに流した噂を聞いていたのか。
「なんだ。あの噂を聞いたのか。あともしかしてリリスに根に持ってます?」
アキセが冷や汗をかきながら言う。
「根に持つ。何にだ」
セミラミスが険しい顔になっている。
完全にリリスに恨みをもっている。リリスは最強の魔女。勝てないから、その子供であるリリムを襲うこともある。
「おまえ。首輪を取ろうとしたのか」
「なんのことでしょうか」
「往生際が悪い」
アキセの手が紫色に染まっていく。
アキセが苦しんでいる。
「おまえの魔力といったところが、魔術も道具を使っていないところを見ると」
勘がいい。
このままでは状況が悪化する。癪だかアキセを助けるしかない。
手の向きをアキセに向け、手の中に『光』を結晶化し、結晶の刃を飛ばす。アキセの手首に絡めたツルを破いた瞬間、目の前に球体が出現する。床に触れた途端に煙幕が広がる。
視界は真っ白に染まった。そんな中、アキセが飛びつき、景色が変わる。
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