魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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エルフの国③

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 そこは処刑場だった。
 城の広場に断頭台が設置されている。
 ハロルトは用意された玉座に座り、ジャンヌはその横に立っている。
 新しい王に就けば、先代、先代の従者、候補者、関係者は、反乱の対策として処刑することになっている。
 ジャンヌは処刑を止めるつもりもない。
 これはエルフの事情で、今までもこのやり方で国は成り立っていたはず。
 たまたまこの国に来て、部外者が不愉快だからという理由で、言い出すのもただの自己中でしかない。だからここは何もせず、見るだけ。
 首切り役人が大きい斧を持ってきた。
「わざわざオノでやるわけ?」
 精霊術で処刑するかと思っていたが。
「精霊(スピリット)は恩恵を与える。罪人を裁くためにない。共に恩恵を受けているエルフの血を精霊で穢していけないことになっている」
「他の種族ならいいのね」
「そういうことにもなるな」
 先代の従者が次々に首切り役人に大きい斧で切っていく。
 周りにいた貴族が楽しんでいる。
 どこかの国は、処刑を娯楽としている国もあると聞く。エルフでもそんな思想が出でしまったのか。
気持ち悪い。見ていい物ではない。
それに聖女様と助けを求めるエルフもいた。
「聖女様!どうして我々を助けてくれないのですか!」
 従者の1人が声を上げる。
「助けて下さい!」
 役人に押さえつけられ、断頭台に首を固定され、オノが降ろされる。
 都合のいい時に聖女にすがるのも嫌いだ。
「意外だな」
 ハロルトが言う。
「処刑に口出すかと思ったが」
 ハロルトに視線だけ見つめる。
「他人の事情に口を出さないようにしているの」
「賢明だな」
 ハロルトが前に向くと、「やっとか」と待ちに待ったように言う。
 それは、先代が現れたからだった。
 二人の役人に連れていた男は、体がやせ細く、とても弱弱しい年老いたエルフだった。
「見ものだ」
 ハロルトがほくそ笑む。
 先代を断頭台に体を固定される。
 首切り役人は、オノを振り下ろそうとした時だった。
 オノが弾いた。それは土の柱がオノを飛ばしたからだった。
 ハロルトが精霊(スピリット)を支配しているから、他のエルフたちが精霊術を詩えない。それなのになぜ使える。
 王の様子がおかしい。
 弱弱しいかった体が筋肉質になっていく。顔も若くなっている。
 断頭台が砕けた。
「蘇ったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
 若帰った先代は叫ぶ。
 若返るにしても元気ありまくりでは。
 ハロルトもさすがに驚いている。
「ジジが・・・」
 ハロルトが悪態をつく。
「誰だ!ルーベルム・ガイヤ・レグ・フィールドゲイムを差し置いて戴冠式を挙げた!」
 ルーベルムは、反響するほど声を上げる。
 周辺の貴族が視線をそらそうとする。
ルーベルムがハロルトに睨みつける。
「おまえが私の跡を継ぐのか」
 ルーベルムは見下ろす。
「先代はいい加減隠居なされては?」
「まだまだ1000年は続けられるわああああああああああああああああ」
 元気にあふれる先代でした。
「だか、今は私が!」
 ハロルトが言いかけたところで、背後から口を塞がれる。
それは仮面と大きいマントをつけた者だった。
――まさか
 首に手を添える。
 瞬時に白い炎の刃を飛ばす。
仮面はすぐ背後に下がり、マントを覆いかぶし、姿を消す。
 その時、ジャンヌは床から伸びた根に絡まれ、動きを止める。
 ハロルトの様子がおかしい。喉を抑えている。何度も口を開けても、声がなかった。
声を奪われた。やはり、あの仮面の正体は。
 処刑台から来る先代は詩い、床から根が伸び、ハロルトも拘束される。
 ルーベルムはハロルトの頭を踏む。
 ハロルトも先代に睨みつける。
「声が出ないか」
 ルーベルムは髪を引っ張る。
「ハロルト。反逆罪で拘束する」
 ルーベルムが詩い、風でハロルトの髪を切る。
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