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エルフの国①
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深い森の中にいたジャンヌは行く道を悩んでいた。
この先にエルフの国『フィールドゲイム』がある。エルフの中で侵略、領土を広げている強大な国と聞いている。
そんな国とは関わりたくないから、国を避けていくかと決めた時だった。
急に足元に穴が空いた。
「え?」
穴にしがみつく。
――落ちてたまるか!
その時、穴から根が伸び、体を絡める。
「うそ・・・」
奥へと引っ張られる。
「ここ、どこ?」
周りを見ても、中庭のようだった。
よく見れば、胸までしか地面から上がっていない。これでは手足が動かせない。
絶対アキセに見られたくない。
「おまえが聖女か」
男の声がした。
ガーデンハウスの中にエルフの男が座っていた。
長い金髪に後ろに垂れ結んでいる。琥珀色の瞳。首元にスカーフを巻いている。美優な青年のエルフだった。
「エルフ?」
エルフが連れてきたとしたら、精霊術を使ったということ。それにしても、かなり距離があった。遠隔でもできるものだろうか。
「早くここから出してくれない」
「野蛮な聖女もいると聞いたからな」
――手足が動いていたら、瞬時に首を切るわ。
「この国の次期王になるハロルト・エリア・ルス・フィールドゲイムだ」とエルフは名乗った。
「断る」
「何もいっていないが」
「だいだい想像がつくよ。魔女狩りか掌握させるためでしょ」
国が絡む時は大半魔女狩りと決まっている。それ以外には聖女を掌握させ、国を強くさせる狙いもある。
「確かに魔女狩りもあるが、戴冠式が終わるまで警護してほしいだけだ」
意外な注文だった。
「聖女はそこまでサービスしてないんだけど」
――なんでもかんでも受けてたまるか。
「終われば、解放してもか」
「魔女狩りがある時点で嫌です」
ハロルトは溜息を吐く。
ハロルトが詩うと、周辺の草が紡ぎ、ジャンヌの首に首輪のように貼り付けられる。
「ちょっと!何をしたのよ!」
「俺しか外せない首輪だ。この国から逃げたら首を絞めるようにした」
精霊(スピリット)で作られたものでは『光』で浄化もできない。
前回アキセに首輪のことで騙されたばっかりだったので嫌になる。
「仕事をすれば、解放してやる」
「も~やればいいんでしょ!」とやけくそに言う。
ハロルトが肩を竦める。
「話に訊いていた聖女とは随分と違うな」
どんな話を訊いていたやら。
「本題だ。先代は呪病に侵されている」
「呪病に?」
呪病は、抗体以上に『呪い』を侵されれば、身体に有害をもたらす。
「かなりの重症だ。見た目が人間でいう老いぼれの姿にまで弱っている。老い先が短い」
ハロルトは少し笑う。
エルフは年を取らない。エルフから見たら、滑稽に見えるだろうか。
でも、それって。
「私を連行したのって。先代の病を治させないためにもあるじゃないの」
「勘がいいな。聖女なら治せると先代の従者が聖女を隠密に探している」
先代の従者よりも先に確保したということか。
「あなた。先代を見殺すつもりね」
「先代は俺を恐れたんだ。エルフェイムに覚醒してからな」
「エルフェイム?」
「知らないのも当然だ。確認されているので、4人だけだからな」
ハロルトは間を置いてから言う。
「エルフェイムは、精霊(スピリット)に愛されたエルフのことだ。周辺の精霊(スピリット)を掌握されることになる。他のエルフが精霊(スピリット)術を詩えても精霊(スピリット)はエルフェイムに目がなくなるんだ」
「つまり、精霊(スピリット)が支配することになるから、他のエルフが精霊術を使えなくなるってこと」
「そういうことだ。意外に頭が回るんだな」
少しバカにされたような。
「戴冠式までは今から3日後だ。俺が就けば、候補者や先代、関わった者も一斉に処刑する」
「先代以外も殺すの」
「まだ王座を狙ったらどうする。王位につけば、あとは殺すだけだ。それに残党も何をするか分からないからな」
これはエルフの事情だから、これ以上入らない。止めるつもりもない。
「もしかして、呪病をかけたのって、魔女でしょ」
ハロルトの目が鋭くなる。
「先代が魔女と何かしらしていたのは、分かっていた。どうやら魔女の機嫌をそがれてあのざまだ」
「やけに詳しいのね」
「精霊(スピリット)が教えてくれたんだ」
「そうなの」
本当に。
「俺の行動に気付いたのか。魔女も潜めてしまった。精霊(スピリット)を使っても見つからない」
「どっかに消えたんじゃないの」
「魔女がそんなに諦めないものか」
ごもっとも。
「近い内に魔女が何かしら仕掛けてくるだろう」
ハロルトは詩う。
ジャンヌの周辺の穴が広がり、やっと手足が自由になった。
「話はここまでだ。聖女なら魔女狩りしろ」
「へいへい」
愛そうなく返す。
結局こうなるのか。
この先にエルフの国『フィールドゲイム』がある。エルフの中で侵略、領土を広げている強大な国と聞いている。
そんな国とは関わりたくないから、国を避けていくかと決めた時だった。
急に足元に穴が空いた。
「え?」
穴にしがみつく。
――落ちてたまるか!
その時、穴から根が伸び、体を絡める。
「うそ・・・」
奥へと引っ張られる。
「ここ、どこ?」
周りを見ても、中庭のようだった。
よく見れば、胸までしか地面から上がっていない。これでは手足が動かせない。
絶対アキセに見られたくない。
「おまえが聖女か」
男の声がした。
ガーデンハウスの中にエルフの男が座っていた。
長い金髪に後ろに垂れ結んでいる。琥珀色の瞳。首元にスカーフを巻いている。美優な青年のエルフだった。
「エルフ?」
エルフが連れてきたとしたら、精霊術を使ったということ。それにしても、かなり距離があった。遠隔でもできるものだろうか。
「早くここから出してくれない」
「野蛮な聖女もいると聞いたからな」
――手足が動いていたら、瞬時に首を切るわ。
「この国の次期王になるハロルト・エリア・ルス・フィールドゲイムだ」とエルフは名乗った。
「断る」
「何もいっていないが」
「だいだい想像がつくよ。魔女狩りか掌握させるためでしょ」
国が絡む時は大半魔女狩りと決まっている。それ以外には聖女を掌握させ、国を強くさせる狙いもある。
「確かに魔女狩りもあるが、戴冠式が終わるまで警護してほしいだけだ」
意外な注文だった。
「聖女はそこまでサービスしてないんだけど」
――なんでもかんでも受けてたまるか。
「終われば、解放してもか」
「魔女狩りがある時点で嫌です」
ハロルトは溜息を吐く。
ハロルトが詩うと、周辺の草が紡ぎ、ジャンヌの首に首輪のように貼り付けられる。
「ちょっと!何をしたのよ!」
「俺しか外せない首輪だ。この国から逃げたら首を絞めるようにした」
精霊(スピリット)で作られたものでは『光』で浄化もできない。
前回アキセに首輪のことで騙されたばっかりだったので嫌になる。
「仕事をすれば、解放してやる」
「も~やればいいんでしょ!」とやけくそに言う。
ハロルトが肩を竦める。
「話に訊いていた聖女とは随分と違うな」
どんな話を訊いていたやら。
「本題だ。先代は呪病に侵されている」
「呪病に?」
呪病は、抗体以上に『呪い』を侵されれば、身体に有害をもたらす。
「かなりの重症だ。見た目が人間でいう老いぼれの姿にまで弱っている。老い先が短い」
ハロルトは少し笑う。
エルフは年を取らない。エルフから見たら、滑稽に見えるだろうか。
でも、それって。
「私を連行したのって。先代の病を治させないためにもあるじゃないの」
「勘がいいな。聖女なら治せると先代の従者が聖女を隠密に探している」
先代の従者よりも先に確保したということか。
「あなた。先代を見殺すつもりね」
「先代は俺を恐れたんだ。エルフェイムに覚醒してからな」
「エルフェイム?」
「知らないのも当然だ。確認されているので、4人だけだからな」
ハロルトは間を置いてから言う。
「エルフェイムは、精霊(スピリット)に愛されたエルフのことだ。周辺の精霊(スピリット)を掌握されることになる。他のエルフが精霊(スピリット)術を詩えても精霊(スピリット)はエルフェイムに目がなくなるんだ」
「つまり、精霊(スピリット)が支配することになるから、他のエルフが精霊術を使えなくなるってこと」
「そういうことだ。意外に頭が回るんだな」
少しバカにされたような。
「戴冠式までは今から3日後だ。俺が就けば、候補者や先代、関わった者も一斉に処刑する」
「先代以外も殺すの」
「まだ王座を狙ったらどうする。王位につけば、あとは殺すだけだ。それに残党も何をするか分からないからな」
これはエルフの事情だから、これ以上入らない。止めるつもりもない。
「もしかして、呪病をかけたのって、魔女でしょ」
ハロルトの目が鋭くなる。
「先代が魔女と何かしらしていたのは、分かっていた。どうやら魔女の機嫌をそがれてあのざまだ」
「やけに詳しいのね」
「精霊(スピリット)が教えてくれたんだ」
「そうなの」
本当に。
「俺の行動に気付いたのか。魔女も潜めてしまった。精霊(スピリット)を使っても見つからない」
「どっかに消えたんじゃないの」
「魔女がそんなに諦めないものか」
ごもっとも。
「近い内に魔女が何かしら仕掛けてくるだろう」
ハロルトは詩う。
ジャンヌの周辺の穴が広がり、やっと手足が自由になった。
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