魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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悪の軍団②

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 気が付けば、ジャンヌと離れてしまった。
 魔術で転送したところか。だとしたら、狙いはイルだった。
 魔術なら聖女であるジャンヌには効かない。だか、実弾か魔弾かも判断はできない。当たれば、怪我することは変わりないからジャンヌを突き飛ばした。
 エルフの耳は、遠く音を聞きとれ、遠くからの引き金の音は聞こえた。だか、魔術なら音も消せなくはない。わざとだろう。
 何となく狙撃者が想像してしまう。
 どうする。ジャンヌと合流するか。いや、やめよう。
 一人でいるのも危険だか、聖女であるジャンヌといたら、確実に魔女と関わる。今の内に離れるしかない。
「お。なんだ?」
声をした方へ向く。
 奇妙な3人だった。獣人(デミ・ビースト)かと思ったら違った。獣人ならこんな人間と獣が混ざっていない。
 カマキリ、イノシシ、ニワトリと人間が混ざっていた。
 カマキリの頭と背中に羽、カマキリの刃を手に持つ人間。
 イノシシの頭と足を持つ人間。
 ニワトリの頭と腕に羽を持つ人間だった。
――なんだ。こいつら。
 異獣(エヴォル)や魔獣(モンスター)、獣人(デミ・ビースト)でもない。ハーフにしてもここまで人と獣が綺麗に別れるものか。
「お、こんなところに仲間がいるなんてな」
「仲間!?」
 仲間と思われている。
「何、そこまで驚いているんだ。俺たちはカイジン仲間だろ」
「カイジン!?」
 そういえば、ペルチェもカイジンと言っていた。まさか他の手配書っていうのは、このカイジンのことだろうか。
「丁度いいや。これから帰るとこだから一緒に戻るぞ」
「いや。俺は・・・」
「いいから」
 ニワトリが肩を回される。
「もう仲間が何人もやられているんだ。総統の元に帰らないと」
 総統?魔女だろうか。カイジンを生み出せるとしたら、魔女しか考えられない。すぐに逃げなければ。
 その時、また引き金を引いた音がしたが、弾は木に当たった。
 外れた。
「敵か!」
「逃げるぞ!」
 逃げられなくなった。



「どこに行ったのよ」
 ジャンヌは森の中を走り回っている。
 イルはかばって魔術で転送された。聖女では魔術は無効化される。つまり、狙いはイル。イルに当たるようにわざとジャンヌに狙いを定めた。
これで狙撃者は思いつく。と考えてしまったら、見つけてしまった。
 木の陰でライフル銃を構えている。
「よ~し」
 アキセだった。
 アキセが引き金を引こうとしたので、白い炎をぶつける。
「あつ!」
 引き金を引いたが、狙いは逸れた。
 白い炎に包まれたアキセは体を転がしながら火を消す。
「ジャンヌ!」
 焦げたアキセと目が合う。
「ねえ。誰を狙っているのかしら」
 笑顔でアキセに訊く。
「今回は、賞金を狙っているんだ。邪魔しないでくれ」
 どう考えても言い訳にしか聞こえない。
「その賞金って何かしら」
 口調を強める。
「街に手配書が張ってあってね。その中に私の友人が入っていたの」
 アキセを睨みつける。
「さっきイルを狙ったでしょ。イルを離れされるためにわざと私を狙ったでしょ」
 ロザリオに光の刃を作る。
「手配書もそうでしょう」
「・・・」
 アキセは数秒黙り込み、そのまま飛び出す。
「こら!」
 やっぱり。
 ジャンヌは追いかける。
アキセは銃を小型に召喚し、撃ちだす。弾は地面に当たり、魔法陣が浮かぶ。魔法陣から泥人形が3体現れる。
「しばらく相手しな」とアキセは森の奥へと走っていく。
「こんなもの!」
 ジャンヌは手に生み出した白い炎を大きく振り、泥人形を包む。魔女よりも容易い。白い炎と共に泥人形は消えた。
「私にこんな雑魚を使って・・・」
 切れかかりそうになったが、冷静に考える。アキセがこのタイミングで泥人形を襲わせたこと。
「しまった。見失った・・・」
 アキセを見失った。
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