216 / 654
悪の軍団①
しおりを挟む
ラ・イルが森の中を歩いていた。
このところ魔女に関わりがなく、清々しく歩いていたが、それは一瞬で終わってしまった。目の前で爆発が起きたからだった。
咄嗟に後ろへ下がる。
「なんだ?」
周囲を警戒する。
「見つけた!カイジンめ!」
少女の声だった。
「カイジン?」
周りを見れば、高い木の頂点に人影が見えた。
「とう!」と声を上げながら、人影は落ちていく。
なぜか音楽が聞こえる。
ついに目の前に人影は着地する。
クマが噛みついたような帽子。茶色と黄色を強調する服。オレンジの髪の少女。
一目見て魔女だと理解した。
「この綿花(めんか)の魔法少女ペルチェ・ル・コトンが正義の鉄槌を与えちゃうぞ!」
ペルチェは、謎の体勢を取る。
瞬時に反対方向に走り込む。
「あ!こら!」
また目の前に爆発が起きた。
「逃げるな。このカイジンめ!」
――なんだ。カイジンって。
どうする。逃げるのは難しい。
「悪人覚悟!」とペルチェは距離を縮める。
逃げるが、足が動かない。足元を見れば、いくつものクマのぬいぐるみに押さえられていた。
いつの間に。
見た目によらずに岩のように重く、動かせない。
ペルチェが目の前にまで来てしまった。
このままでは攻撃を受けてしまう。
ペルチェが杖を振ろうとした時、杖が弾いた。
それは、白い結晶の刃が杖にぶつけたからだった。見たことがある。
足元にいたクマのぬいぐるみにも白い結晶の刃が刺さる。その隙にペルチェから距離を取れば、ペルチェに白い炎が迫ってくる。
白い炎を見て確信した。
「こっち!」
声がした。今はその声に従うしかない。
ペルチェから逃げられた。
「よかった。無事で」
やはり、助けてくれたのは、白の聖女ジャンヌ・ダルクだった。
「ジャンヌ。今度は何して俺を巻き込ませるんだ」
「助けてあげたセリフがそれ」
「何回言わせるつもりだ。魔女に関わりたくないんだ。お前といたら、イヤでも魔女が来るだろうか」
「その分退治してやるけど」
「だったら、俺を巻き込ませないように努力してくれ」
「ん~そうしないと君に会う機会が減るからいや」
ジャンヌは小さく舌を出し、ラ・イルは溜息を吐く。
確かにいつも助けてくれることには感謝しているが、これ以上魔女に関わりたくない。
「イル。何がやったの。街に手配書が貼っていたけど」
「・・・は!?」
「やっぱり知らなかったのね。他の手配書と違って絵と情報が事細かく書いてあったんだよね。まあ、犯人は検討つくけど」
「まだあいつか・・・」
アキセだろう。魔女を使い、策略立てて殺そうとしている。今回は手配書で人間を使って殺すつもりか。頭が痛くなる。
ふと気が付いた。
「まさか。魔女はその手配書を見て俺を狙ってきたのか!」
「正解」
ジャンヌは答える。
「あ・・・」
イルは頭を抱える。
「だから、助けにきたのに。ペルチェも面倒くさいんだから」
「顔見知りか」
「知り合いにしたくないわよ」
「聖女が魔女狩りを怠けるな」
強めに言う。
「聖女だって関わりたくない魔女もいるのよ」
ジャンヌは不貞腐れる。
「分かったよ。ペルチェから離れるまでは一緒にいてあげるから」
「退治はしてくれないのか・・・」
意地でも関わりたくないようだ。
「それだと一緒に狩りを手伝ってもらうってことでいいかしら」
ジャンヌはイタズラな笑みを見せる。
どっちにしても魔女と関わることには変わりがない。状況的に考えれば、ジャンヌと一緒にいた方が安全か。
「分かった。魔女から離れるまでならいいだろ」
「じゃあ、とりあえず、街から離れましょ」
ジャンヌは苦笑しながら歩き出す。
イルは溜息を吐く。
これで魔女と離れるなら仕方がない。
その時、遠くから引き金を引く音がした。
どこから。
音が近づいて来る。音からして弾はジャンヌの方へ向かっている。
このままではジャンヌに当たる。
口より先に体が飛び出し、ジャンヌを突き飛ばす。弾が地面に当たり、陣が浮かぶ。
「これは・・・」
このところ魔女に関わりがなく、清々しく歩いていたが、それは一瞬で終わってしまった。目の前で爆発が起きたからだった。
咄嗟に後ろへ下がる。
「なんだ?」
周囲を警戒する。
「見つけた!カイジンめ!」
少女の声だった。
「カイジン?」
周りを見れば、高い木の頂点に人影が見えた。
「とう!」と声を上げながら、人影は落ちていく。
なぜか音楽が聞こえる。
ついに目の前に人影は着地する。
クマが噛みついたような帽子。茶色と黄色を強調する服。オレンジの髪の少女。
一目見て魔女だと理解した。
「この綿花(めんか)の魔法少女ペルチェ・ル・コトンが正義の鉄槌を与えちゃうぞ!」
ペルチェは、謎の体勢を取る。
瞬時に反対方向に走り込む。
「あ!こら!」
また目の前に爆発が起きた。
「逃げるな。このカイジンめ!」
――なんだ。カイジンって。
どうする。逃げるのは難しい。
「悪人覚悟!」とペルチェは距離を縮める。
逃げるが、足が動かない。足元を見れば、いくつものクマのぬいぐるみに押さえられていた。
いつの間に。
見た目によらずに岩のように重く、動かせない。
ペルチェが目の前にまで来てしまった。
このままでは攻撃を受けてしまう。
ペルチェが杖を振ろうとした時、杖が弾いた。
それは、白い結晶の刃が杖にぶつけたからだった。見たことがある。
足元にいたクマのぬいぐるみにも白い結晶の刃が刺さる。その隙にペルチェから距離を取れば、ペルチェに白い炎が迫ってくる。
白い炎を見て確信した。
「こっち!」
声がした。今はその声に従うしかない。
ペルチェから逃げられた。
「よかった。無事で」
やはり、助けてくれたのは、白の聖女ジャンヌ・ダルクだった。
「ジャンヌ。今度は何して俺を巻き込ませるんだ」
「助けてあげたセリフがそれ」
「何回言わせるつもりだ。魔女に関わりたくないんだ。お前といたら、イヤでも魔女が来るだろうか」
「その分退治してやるけど」
「だったら、俺を巻き込ませないように努力してくれ」
「ん~そうしないと君に会う機会が減るからいや」
ジャンヌは小さく舌を出し、ラ・イルは溜息を吐く。
確かにいつも助けてくれることには感謝しているが、これ以上魔女に関わりたくない。
「イル。何がやったの。街に手配書が貼っていたけど」
「・・・は!?」
「やっぱり知らなかったのね。他の手配書と違って絵と情報が事細かく書いてあったんだよね。まあ、犯人は検討つくけど」
「まだあいつか・・・」
アキセだろう。魔女を使い、策略立てて殺そうとしている。今回は手配書で人間を使って殺すつもりか。頭が痛くなる。
ふと気が付いた。
「まさか。魔女はその手配書を見て俺を狙ってきたのか!」
「正解」
ジャンヌは答える。
「あ・・・」
イルは頭を抱える。
「だから、助けにきたのに。ペルチェも面倒くさいんだから」
「顔見知りか」
「知り合いにしたくないわよ」
「聖女が魔女狩りを怠けるな」
強めに言う。
「聖女だって関わりたくない魔女もいるのよ」
ジャンヌは不貞腐れる。
「分かったよ。ペルチェから離れるまでは一緒にいてあげるから」
「退治はしてくれないのか・・・」
意地でも関わりたくないようだ。
「それだと一緒に狩りを手伝ってもらうってことでいいかしら」
ジャンヌはイタズラな笑みを見せる。
どっちにしても魔女と関わることには変わりがない。状況的に考えれば、ジャンヌと一緒にいた方が安全か。
「分かった。魔女から離れるまでならいいだろ」
「じゃあ、とりあえず、街から離れましょ」
ジャンヌは苦笑しながら歩き出す。
イルは溜息を吐く。
これで魔女と離れるなら仕方がない。
その時、遠くから引き金を引く音がした。
どこから。
音が近づいて来る。音からして弾はジャンヌの方へ向かっている。
このままではジャンヌに当たる。
口より先に体が飛び出し、ジャンヌを突き飛ばす。弾が地面に当たり、陣が浮かぶ。
「これは・・・」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説


一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる