魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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悪の軍団①

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 ラ・イルが森の中を歩いていた。
 このところ魔女に関わりがなく、清々しく歩いていたが、それは一瞬で終わってしまった。目の前で爆発が起きたからだった。
 咄嗟に後ろへ下がる。
「なんだ?」
 周囲を警戒する。
「見つけた!カイジンめ!」
 少女の声だった。
「カイジン?」
周りを見れば、高い木の頂点に人影が見えた。
「とう!」と声を上げながら、人影は落ちていく。
なぜか音楽が聞こえる。
ついに目の前に人影は着地する。
 クマが噛みついたような帽子。茶色と黄色を強調する服。オレンジの髪の少女。
 一目見て魔女だと理解した。
「この綿花(めんか)の魔法少女ペルチェ・ル・コトンが正義の鉄槌を与えちゃうぞ!」
 ペルチェは、謎の体勢を取る。
 瞬時に反対方向に走り込む。
「あ!こら!」
 また目の前に爆発が起きた。
「逃げるな。このカイジンめ!」
――なんだ。カイジンって。
 どうする。逃げるのは難しい。
「悪人覚悟!」とペルチェは距離を縮める。
 逃げるが、足が動かない。足元を見れば、いくつものクマのぬいぐるみに押さえられていた。
いつの間に。
見た目によらずに岩のように重く、動かせない。
 ペルチェが目の前にまで来てしまった。
このままでは攻撃を受けてしまう。
 ペルチェが杖を振ろうとした時、杖が弾いた。
それは、白い結晶の刃が杖にぶつけたからだった。見たことがある。
 足元にいたクマのぬいぐるみにも白い結晶の刃が刺さる。その隙にペルチェから距離を取れば、ペルチェに白い炎が迫ってくる。
 白い炎を見て確信した。
「こっち!」
 声がした。今はその声に従うしかない。


 ペルチェから逃げられた。
「よかった。無事で」
 やはり、助けてくれたのは、白の聖女ジャンヌ・ダルクだった。
「ジャンヌ。今度は何して俺を巻き込ませるんだ」
「助けてあげたセリフがそれ」
「何回言わせるつもりだ。魔女に関わりたくないんだ。お前といたら、イヤでも魔女が来るだろうか」
「その分退治してやるけど」
「だったら、俺を巻き込ませないように努力してくれ」
「ん~そうしないと君に会う機会が減るからいや」
 ジャンヌは小さく舌を出し、ラ・イルは溜息を吐く。
 確かにいつも助けてくれることには感謝しているが、これ以上魔女に関わりたくない。
「イル。何がやったの。街に手配書が貼っていたけど」
「・・・は!?」
「やっぱり知らなかったのね。他の手配書と違って絵と情報が事細かく書いてあったんだよね。まあ、犯人は検討つくけど」
「まだあいつか・・・」
 アキセだろう。魔女を使い、策略立てて殺そうとしている。今回は手配書で人間を使って殺すつもりか。頭が痛くなる。
 ふと気が付いた。
「まさか。魔女はその手配書を見て俺を狙ってきたのか!」
「正解」
 ジャンヌは答える。
「あ・・・」
 イルは頭を抱える。
「だから、助けにきたのに。ペルチェも面倒くさいんだから」
「顔見知りか」
「知り合いにしたくないわよ」
「聖女が魔女狩りを怠けるな」
 強めに言う。
「聖女だって関わりたくない魔女もいるのよ」
ジャンヌは不貞腐れる。
「分かったよ。ペルチェから離れるまでは一緒にいてあげるから」
「退治はしてくれないのか・・・」
 意地でも関わりたくないようだ。
「それだと一緒に狩りを手伝ってもらうってことでいいかしら」
 ジャンヌはイタズラな笑みを見せる。
 どっちにしても魔女と関わることには変わりがない。状況的に考えれば、ジャンヌと一緒にいた方が安全か。
「分かった。魔女から離れるまでならいいだろ」
「じゃあ、とりあえず、街から離れましょ」
 ジャンヌは苦笑しながら歩き出す。
イルは溜息を吐く。
これで魔女と離れるなら仕方がない。
その時、遠くから引き金を引く音がした。
どこから。
音が近づいて来る。音からして弾はジャンヌの方へ向かっている。
このままではジャンヌに当たる。
 口より先に体が飛び出し、ジャンヌを突き飛ばす。弾が地面に当たり、陣が浮かぶ。
「これは・・・」
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