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檎守の魔女②
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急に消えてしまった。
いや、どこかに転送した方が正しいか。
なんとなく犯人が思いつくが、考えたくない。アキセだということを。追い払ったとしたらすぐにからかうために現れるはず。それが全くない。
まさかからかうためにアキセはヘンリーを利用する可能性もなくはない。
しばらく気が休めないかもしれない。
ヘンリーがまだ探しにくるはずなので、リンゴが売っている店を探す。リンゴを見れば、必ず矢を放つ。店が騒けば、彼がきたという知らせになる。
後は、アキセだ。
アキセがどこで現れるのが読めない。魔術が効かないコルンの発明品を使うに違わない。
まあ、夜這いしても倍にして返してやる。
警戒しながらもジャンヌは、街にある宿で休むことにした。
結局一晩寝ても何も起きなかった。
――考えすぎたかな。
部屋を出ようとドアノブを回そうとしたが。
「あれ・・・開かない・・・」
鍵がかかっている。まさか。罠にかかってしまった。
すぐにドアを壊そうと蹴破ろうとするが、ドアが開く。
「ほらな。こうやった方が・・・」
そこにアキセがいた。
勢いを殺せず、アキセの股間に蹴りが入る。
「あ」
アキセの顔が青白くなり、股間を抑えて縮こまる。
「う・・・」
男の急所はよく効く。
「しまった。もっと殺意を込めて蹴ればよかった」と低い声で見下ろす。
「そこ・・・謝るとこ・・・」
アキセを無視してジャンヌは周囲を見る。
「無視しないで・・・」
どこかの森の中。自立しているドア。痛がるアキセ。青ざめるヘンリーもいた。
ヘンリーと一緒にいるということは。
「ヘンリー!なぜこいつと組むのよ!」
ジャンヌはアキセを指しながら言う。
「どうしても協力してほしかったんです!」
「タタリをかけた分からない魔女を探せと!」
「違います!相手するだけでいいんです。目的は黄金の林檎です!」
その発言で唖然してしまった。
「黄金の林檎って、不老不死になる林檎のこと?」
金色に輝く林檎で、幻と言われているあの林檎だろうか。
「はい!僕のタタリは、黄金の林檎を射ればいいだけなんです」
「ちょっと待って。黄金の林檎って確か魔女が育てているって聞いたけど・・・まさか・・・」
「ここは、きんしゅの魔女ピルク・アップルツリーの林檎園です!」
魔女の巣窟に連行されたようだ。
「ヘンリー。相手の承諾なしの誘拐は犯罪なの知ってる」
笑顔でヘンリーに言いながら、ロザリオを出す。
「それはアキセのアイディアです。聖女様を協力するにはここまでしないと言っていたので」
「あ“あ”!」
アキセにガンを飛ばす。
「じゃないと・・・来ないだろうか・・・」
またアキセは痛がっている。
「どうやって入ったのよ」
ヘンリーに訊く。
魔女が容易く入れてくれるはずがない。
「冬至の時期に採取した100年ものの林檎酒を枯れた林檎の根本に捧げれば、林檎園に繋がります」
ヘンリーは素直に吐いた。
「ジャンヌさんは、アキセに任せましたけど・・・」
「へ~」
痛むアキセの胸蔵を掴む。
「さあ吐け!」
今後の対策かねて。
「今見て分からないのか・・・」
「いいからどうやって連れてきたのか吐け。さらに潰すぞ!」
「『引っ越し鍵』を使いました・・・」
アキセは素直に吐いた。
やはりコルンの発明品だった。
「鍵穴にさせば、部屋を空間ごと鍵の中に登録するんだ・・・別の鍵穴をさしても、部屋が実現する仕掛けになってる・・・」
「もう少し簡単に言え」
「鍵穴があれば、どこにでも部屋を運べるってこと!」
アキセが少しキレ気味に言う。
「それで適当なドアを召喚して連れてきました・・・」
「そういうこと」
やっと納得した。
「もしかして、毎回騙されているんですか」とヘンリーが訊く。
「毎回じゃないよ~騙された分ちゃんとやり返しているから」
「そうでしょうね・・・」
ヘンリーが入る方法を知っているなら。
「もしかして、ここから出る方法知っているよね?」
笑顔でヘンリーに言う。
「話すな・・・やってもらえないぞ・・・」
アキセがこれ以上余計なことを言わないように胸倉をさらに絞める。
「この林檎園の林檎の木の根元に林檎酒を注げば出られます」
「コラ!」とアキセが声を上げる。
怖気たのか、ヘンリーが素直に吐いてくれた。
「素直でよろしい。よし、出るぞ」
その時だった。
急に暗くなったと顔を上げれば、巨大な手が振り下ろす。
一斉に避ける。
ジャンヌとヘンリーは後ろに避けた。アキセは魔術を使ったようで、いつの間にか背後に回っていた。
木の巨人だった。
頭に枝が生え、鹿のような顔を持ち、手足を持った木の巨人。
「エント?」
木が異形(デミ)化したエントだった。
「やっと痛みが取れた」
アキセの奪う魔力で痛みを奪ったのだろう。
「ち。死に損ないが」
「おまえな!」
「そんなことより」とヘンリーが割り込む。
エントの足元からすり抜けてきたのは、木で作られた仔馬だった。
『呪い』が微量ながら漏れている。使い魔か。
仔馬の口から銃が飛び出す。
「「「え!?」」」
木の仔馬は銃を放つ。
「逃げるぞ!」
アキセは煙幕を巻く。
いや、どこかに転送した方が正しいか。
なんとなく犯人が思いつくが、考えたくない。アキセだということを。追い払ったとしたらすぐにからかうために現れるはず。それが全くない。
まさかからかうためにアキセはヘンリーを利用する可能性もなくはない。
しばらく気が休めないかもしれない。
ヘンリーがまだ探しにくるはずなので、リンゴが売っている店を探す。リンゴを見れば、必ず矢を放つ。店が騒けば、彼がきたという知らせになる。
後は、アキセだ。
アキセがどこで現れるのが読めない。魔術が効かないコルンの発明品を使うに違わない。
まあ、夜這いしても倍にして返してやる。
警戒しながらもジャンヌは、街にある宿で休むことにした。
結局一晩寝ても何も起きなかった。
――考えすぎたかな。
部屋を出ようとドアノブを回そうとしたが。
「あれ・・・開かない・・・」
鍵がかかっている。まさか。罠にかかってしまった。
すぐにドアを壊そうと蹴破ろうとするが、ドアが開く。
「ほらな。こうやった方が・・・」
そこにアキセがいた。
勢いを殺せず、アキセの股間に蹴りが入る。
「あ」
アキセの顔が青白くなり、股間を抑えて縮こまる。
「う・・・」
男の急所はよく効く。
「しまった。もっと殺意を込めて蹴ればよかった」と低い声で見下ろす。
「そこ・・・謝るとこ・・・」
アキセを無視してジャンヌは周囲を見る。
「無視しないで・・・」
どこかの森の中。自立しているドア。痛がるアキセ。青ざめるヘンリーもいた。
ヘンリーと一緒にいるということは。
「ヘンリー!なぜこいつと組むのよ!」
ジャンヌはアキセを指しながら言う。
「どうしても協力してほしかったんです!」
「タタリをかけた分からない魔女を探せと!」
「違います!相手するだけでいいんです。目的は黄金の林檎です!」
その発言で唖然してしまった。
「黄金の林檎って、不老不死になる林檎のこと?」
金色に輝く林檎で、幻と言われているあの林檎だろうか。
「はい!僕のタタリは、黄金の林檎を射ればいいだけなんです」
「ちょっと待って。黄金の林檎って確か魔女が育てているって聞いたけど・・・まさか・・・」
「ここは、きんしゅの魔女ピルク・アップルツリーの林檎園です!」
魔女の巣窟に連行されたようだ。
「ヘンリー。相手の承諾なしの誘拐は犯罪なの知ってる」
笑顔でヘンリーに言いながら、ロザリオを出す。
「それはアキセのアイディアです。聖女様を協力するにはここまでしないと言っていたので」
「あ“あ”!」
アキセにガンを飛ばす。
「じゃないと・・・来ないだろうか・・・」
またアキセは痛がっている。
「どうやって入ったのよ」
ヘンリーに訊く。
魔女が容易く入れてくれるはずがない。
「冬至の時期に採取した100年ものの林檎酒を枯れた林檎の根本に捧げれば、林檎園に繋がります」
ヘンリーは素直に吐いた。
「ジャンヌさんは、アキセに任せましたけど・・・」
「へ~」
痛むアキセの胸蔵を掴む。
「さあ吐け!」
今後の対策かねて。
「今見て分からないのか・・・」
「いいからどうやって連れてきたのか吐け。さらに潰すぞ!」
「『引っ越し鍵』を使いました・・・」
アキセは素直に吐いた。
やはりコルンの発明品だった。
「鍵穴にさせば、部屋を空間ごと鍵の中に登録するんだ・・・別の鍵穴をさしても、部屋が実現する仕掛けになってる・・・」
「もう少し簡単に言え」
「鍵穴があれば、どこにでも部屋を運べるってこと!」
アキセが少しキレ気味に言う。
「それで適当なドアを召喚して連れてきました・・・」
「そういうこと」
やっと納得した。
「もしかして、毎回騙されているんですか」とヘンリーが訊く。
「毎回じゃないよ~騙された分ちゃんとやり返しているから」
「そうでしょうね・・・」
ヘンリーが入る方法を知っているなら。
「もしかして、ここから出る方法知っているよね?」
笑顔でヘンリーに言う。
「話すな・・・やってもらえないぞ・・・」
アキセがこれ以上余計なことを言わないように胸倉をさらに絞める。
「この林檎園の林檎の木の根元に林檎酒を注げば出られます」
「コラ!」とアキセが声を上げる。
怖気たのか、ヘンリーが素直に吐いてくれた。
「素直でよろしい。よし、出るぞ」
その時だった。
急に暗くなったと顔を上げれば、巨大な手が振り下ろす。
一斉に避ける。
ジャンヌとヘンリーは後ろに避けた。アキセは魔術を使ったようで、いつの間にか背後に回っていた。
木の巨人だった。
頭に枝が生え、鹿のような顔を持ち、手足を持った木の巨人。
「エント?」
木が異形(デミ)化したエントだった。
「やっと痛みが取れた」
アキセの奪う魔力で痛みを奪ったのだろう。
「ち。死に損ないが」
「おまえな!」
「そんなことより」とヘンリーが割り込む。
エントの足元からすり抜けてきたのは、木で作られた仔馬だった。
『呪い』が微量ながら漏れている。使い魔か。
仔馬の口から銃が飛び出す。
「「「え!?」」」
木の仔馬は銃を放つ。
「逃げるぞ!」
アキセは煙幕を巻く。
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