魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
208 / 648

檎守の魔女①

しおりを挟む
 ジャンヌは襲ってきた魔獣(モンスター)を真っ二つに切っていた。
「ふ~」
 魔獣(モンスター)と戦ったら、小腹がすいた。
 近くに食べる物がないかと見れば、丁度いいところに林檎がある。林檎を取ろうとした時だった。
 林檎に矢が通った。危うく手に刺さるところだった。
 振り向けば、弓を構えていた男がいた。
茶色の髪。緑の瞳。狩猟の格好で、弓矢を持った青年だった。
 ロザリオに手をかけ、光の刃を作る。
「すみません!」
 男は慌てて謝る。
「あなたは聖女様ですね」
 魔獣(モンスター)の退治を目撃されたからだろう。
「協力してください!」
 青年は、急に頭を下げ、頼み込んできた。


 男はヘンリー・テルと言う。
 ご先祖のウィリアム・テルは頭の上にある林檎を狙ったことで名誉をもらい、それ以降林檎を見るたびに矢で射るようになった。
 ある日、ウィリアムが林檎を食べている魔女に矢を放った。怒った魔女はあるタタリをかけられた。
 子孫繫栄、林檎を見るたびに矢を射なさいと。


「何それ・・・」
 それしか返せなかった。
「林檎を見るたびに矢を射るって・・・」
 あまりにもバカバカしいので確かめる。
 ジャンヌは先ほど射った林檎を拾い、矢を引き抜く。再びヘンリーの前に投げれば、目に留まらない速さで林檎に矢が射る。
「一応本物ね」
 だとしたら。
「だったら、林檎を見なきゃいい話じゃないの」
「それで済むなら聖女様に頼みませんよ」
 ですよね。
「どんなに逃げても林檎から逃れられないんです・・・」
 ヘンリーは悔やむように言う。
「行く先々で林檎を見ない日なんてありませんよ。不自然なところに林檎が実ることもあったんですから」
 運命にまでタタリをかけたのか。
「だったら、弓矢を捨てたら」
「それもしました。それでも林檎を見れば、矢のように体が林檎に突っ込みます」
「え・・・」
 想像しただけで異様な光景だった。
「あまりにも不便な体で・・・それが5代も続きました」
「5代も!」
 思わず声を上げた。
「先祖様の嫁が皆、林檎農園の娘ばかりでした」
「よく続いたわね・・・」
 どんな生活してきたのか、気になる。
「話しを聞く限り、かなりの美人だったようで」
 結局美人に負けたのか。
「けど、俺はこの体質を終わらせたい」
「一応訊くけど、どうして終わらせたいの?」
「林檎が嫌いだからです」
 単純な理由だった。
「そりゃ~毎日見てたら、嫌でも嫌いになりますよ」
 確かに。
「だからその魔女を殺してほしいわけ」
 ヘンリーに訊く。
「それが・・・魔女が分からないんです」
「もう諦めて」とジャンヌはすかさず歩く。
「まだ話があります!」とヘンリーはすがりつく。
「まだあるの~」と呆れる。
「唯一タタリが解ける方法が一つあるんです!」
「訊きたくない訊きたくない。あーあーあー」
 耳を塞ぐ。聞いたらもう引き下がれないような気がする。
 その時、ヘンリーの声が途切れた。振り向けば、ヘンリーが消えていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...