魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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双蝶の魔女④

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 白い炎から生まれた鮮やかな虹色の四枚の羽を持つ巨大な蝶だった。
「やったー!パピレナが生まれたー!」
 魔女は跳ね上がるほど喜ぶ。
 燃え切れなかった。『光』が足りなかったか。今は悔やんでいる場合ではない。
 パピレナは足を使って壁を削っている。
 外に出ようとしている。
「まずい!」
 パピレナを外に出すのも危険だか、洞窟の中で潰れてしまうのももっと危険。今は洞窟から逃げようとした時だった。
 ベイヴィルが横から巨大な岩で壁にぶつかる。
 横から岩が飛んできたということは。
 気付いた時には目の前に岩が飛んできた。岩にリボンを絡めて。
 岩は額にまともに受けてしまった。足を踏ん張れず、倒れる。
「死ね」と魔女は、出口へと走っていく。
「ま・・・」
 目の前が暗くなる。


 アタランテはスピカに乗り、森の奥へと走っている。
 魔女が急に消えた。魔女の方で動きがあったからだろう。戦うことをやめ、その場を離れた。
 早くジャンヌと合流しなければ。
 その時、轟音が響く。
「止まって!」
 スピカに言い、スピカは勢いよく止まる。
 音はどこから聞こえているだろうか。
 周囲を見れば、奥に重なった岩山から巨大な蝶が飛び出した。
「何あれ・・・」
 生き物に詳しいアタランテでも見たことがない。魔女が作った獣か。あれが魔女の目的だろう。
 蝶は大きく羽ばたき、空へと飛ぶ。羽ばたきながら粉を振りまく。鱗粉だろうか。その粉は、木や岩山が触れれば、異形な姿に変化していく。
 おそらく住みやすい地形に変えるつもりだ。
 これ以上、『呪い』で汚染された地域を広げないためにも、聖女が対決しなければならない。
 もしかしたら、ジャンヌもあの岩山にいるはず。岩山が崩れていく。
 急いで駆け付けようにも、後ろへスピカは跳ぶ。
 それは、リボンが打ってきたからだった。
 いつの間に先ほど戦った魔女がいた。けど、よく見れば、羽や服も右側になっている。魔女が二人いると思った時だった。
「リリーラ!」と同じ姿をした魔女が飛び出す。
 これで分かった。相手の魔女たちは双子だったということ。
「リリーレ!もう少し時間を稼いでよ!」
「私だって、聖女を行かせる気なかったよ!」
「パピレナが死ぬとこだったんだから!聖女一人やるのも大変なのよ」
 その発言で察した。
 あの魔女はジャンヌと戦ったということ。魔女がここにいるということは。
「小さい芋虫の頃から育てたんだもんね」
「殺すなんて」
「「ねー」」と魔女たちは見つめ合いながら言う。
「先輩を・・・」
 魔女たちを睨みつける。
 スピカが唸る。落ち着けと言っている。
 分かってる。感情に任せてはいけない。魔女の挑発に乗らない。
「あんたも一緒に行かせるよ」
 魔女たちはリボンを構える。
「「双蝶(そうちょう)の魔女リリーラ・パピ・フォンとリリーレ・パピ・フォンが殺してやる!」」



 アタランテは、『スターレット』で弓を作り、青白い矢を放つ。一本の矢から無数の矢が生み出す。
 魔女たちはリボンから金色の粉を巻き、壁のように囲まれ、金色の壁の中へと隠れる。
 もうどこから攻撃するか分からない。この粉のせいか、スピカの鼻も効かない。
警戒するも右から体にリボンが当たる。岩のように重く、耐え切れずにスピカから降ろされる。その瞬間、金色の壁からリリーレがスピカを蹴り、金色の壁の中へと飛ばす。リリーレも金色の壁に入る。
 しまった。分断された。
 リボンが迫る。
 転がりながら、腕輪から青白い刃を伸ばし、すぐに立ち上がるが、右腕にリボンが絡まれる。金色の壁からリリーラが飛び出す。アタランテの腹に蹴りが入り、膝をつく。目の前にリリーレが踵を下ろそうとしたが、横から光の咆哮が迫る。
 リリーレは気付き、踵を上げ、体を回して避ける。
 リリーラの視線が変えた瞬間に、腕輪に手をかざし、矢を放つ。
 リリーラは避けるが、矢に当たったリボンが解かれ、距離を取る。
 スピカが戻ってきた。
「助かった」
 アタランテはスピカに言う。
 スピカが放った光の咆哮で金色の壁を払い、森の中へと戻った。
「ちょっと!ちゃんと仕留めてから参戦しなさいよ」
「あいつ。弱いんだもん。後回し」
「たく!」とリリーラは悪態をつく。
 二人だとややこしい。
 時間をかけたくない。早く助けなければ。
 その時、遠吠えがした。
「何!」
 急に森が騒いでいる。
 木陰から大量発生したベイヴィルやベイヴァ―たちが奥へと走っていく。
――ベイヴィルがこんなにも大量に出現するなんて。
「何よ。これ・・・」
「気持ち悪い」
 魔女たちが困惑している隙に、一矢放つも、リリーラがリボンで叩き落とす。
「ここは退くよ!」
「うん!」
 魔女たちは、森の中へと逃げる。
「待て!」
 追いかけようとしたが、また森が騒いでいる。
ベイヴィルが集まり、巨大に膨らんでいく。徐々に形成され、巨大のドラゴンのようになっていく。
「あれって・・・グリューン・ドレイク?」
 大きい背中に触角が伸び、太い首を持つ大きいドラゴンの頭。2本で立ち、大きい手を持つ緑色の植物のドラゴン。
 あの姿になるには、かなりの数が必要になるため、幻を言われるドラゴンが姿を見せる。
 その時、ベイヴィルから変化したベイヴァ―が近づいて来る。背中にはジャンヌを乗せて。
「先輩!」
 頭から血が出でいるが、傷口は浅いようだ。血が止まっている。
「アタランテ?」
 ジャンヌが目を覚ました。
「先輩!よかった・・・」
 一安心した。
 ベイヴァ―は体を低くし、ジャンヌをゆっくり下ろす。
「アタランテ・・・そうだ洞窟に!」
 ベイヴァ―が唸る。
「あなたがここまで運んでくれたの?」
 ベイヴァ―はすぐに走る。グリューン・ドレイクに向かって。
「あれって・・・」
「先輩。ベイヴィルがさらに集まって変形したグリューン・ドレイクです」
グリューン・ドラゴンが手を伸ばし、ベイヴァ―は手のひらに飛び込む。グリューン・ドラゴンの一部へと融合する。
 グリューン・ドラゴンは吠える。地面が揺れるほどに歩いていく。その先には、あの巨大な蝶がいた。戦うつもりだろう。
「あっちはあの子たちに任せましょ。私たちは魔女狩りに行くよ!」
「はい!」
 ジャンヌはスピカに乗り走っていく。
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