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冬の魔女たち⑥
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このままいけば、ナターリヤの頭を貫通するが。
「見つけた!」
コウガイジが現れ、ユキシズクを槍で払おうとするも、煙のようにユキシズクは消えた。
「あれ?」
コウガイジは目が点になった。
ナターリヤは止まり、白い炎の球がナターリヤの肩に当たる。
あのハゲ頭め。頭を狙いそこなった。
ナターリヤが振り向き、床から氷の槍が迫ってくる。
床に白い炎で穴を空き、下へ逃げる。1階の床に着地し、すぐに白い炎を放つ。
ナターリヤが次の攻撃に出ようとした時、ナターリヤの目の前に唐突に出現したガラス玉が落ちる。
以前アキセが使った動きを止める魔術爆弾か。アキセが召喚したのだろう。
ガラス玉が割り、瞬時に陣が浮かび上がる。
ナターリヤの動きが止まり、まともに白い炎を受ける。
ナターリヤを殺すにはまだ足りない。さらに白い炎を放つ。
その時、氷の壁ができる。
氷の壁が溶ければ、白い炎に包まれたナターリヤは氷に包まれた。白い炎を消し、燃えていた傷を氷で再生している。
「せいじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ナターリヤは血走った目で睨みつける。
咄嗟に柱に隠れる。
「どこにいる!出でこい!聖女が!」
ナターリヤは怒声を上げる。城が氷で作られているため、声が響く。
ナターリヤが回復した。
『なんでも遮断マント』で姿が見えないが、もう存在に気付かれている。ナターリヤが警戒し、闇討ちもできない。あとは近づくしかない。
それにコウガイジは確実に邪魔をする。すでにアキセを押さえられている。
「そう。出ないのか」
ナターリヤがアキセを睨みつけた瞬間にアキセが急に苦しんでいる。
タタリが発動したのか。
「そういえば、ウィムが言っていたけど、彼氏らしいわね」
ぴく。これは誘っている。我慢我慢。つーか。ウィムも絡んでいるのか。最悪。部屋で話した時、ウィムのことなんて一言も言っていなかった。わざと言わなかったのか。
それにアキセを人質にするつもりかな。別に死んでもいいけど。本当なら見捨てたい。
でも、ここで逃げたら、ナターリヤが警戒し、殺すチャンスが逃してしまう。
これ以上『光』を消耗するつもりがない。
「乗らないか」
ナターリヤがアキセを見下ろす。
「お前にチャンスをやる」
――あ、嫌な予感。
「聖女を捕獲したら、タタリを解いてやる」
その時、『なんでも遮断マント』が消える。
「な!」
「あの柱の陰です!」
アキセが声を上げる。
ジャンヌは咄嗟に横に飛ぶ。
柱から氷の柱を伸ばしていた。危うく潰されるところだった。
ジャンヌの周りに床から氷の柱に囲まれる。
氷の檻に閉じ込められた。
「ちょっと!何しまうのよ!」
「俺の命が優先!」
「しばくぞ!」
絶対に後で。
「捕まえた」
アキセを恨むところではない。
ナターリヤが嬉しそうに見下ろす。
「火を使う聖女でしょ。溶かしたら。それとも消耗を避けたいのかしら」
逃げなくはないが、『光』の消耗を狙っている。
「さて、どうしようかな」
「ちょっと待った!まだセックスを!」
コウガイジは氷の柱にぶつかり、そのまま壁に激突する。
どうせ死んでいないが心配しない。
「これで聖女を捕まえましたよ」
アキセがへらへらと言う。
「一つとは言っていない」
やっぱり。
「あんた。散々魔女に騙されているんだから、学びなさいよ」
「誰だって自分が優先するだろうが」
――次は見殺す
「お前が隠したユキシズクの『呪い』はどこにある」
ナターリヤが部屋で聞きたかったのはそれだったのか。
「渡したじゃないですか・・・」
「あの女の『呪い』はあれだけじゃない。あるはずだ。出せ!」
アキセがまだ苦しんでいる。
「あら、お取込み中?」
鈴の音と風と共にかざなりの魔女ウィム・シルフが姿を見せる。
「ウィムか・・・」
「お探し物持ってきたわよ」
風に包まれて現れたのは、ユキシズクだった。
「ここは・・・」
ナターリヤと目が合ったユキシズクは怯える。
「あなたが脱獄させて、わざわざ連れてきたのは、どういうことなのかしら」
ナターリヤがウィムに鋭い目つきをする。
確かに弱っているユキシズクが1人で脱獄できるわけがない。誰かが手助けと思ったのだろう。
ウィムがにやっと笑う。
「ここからの展開を見たいから」
「は?」
アキセがユキシズクの目の前に黒い結晶のカースネロを召喚する。
「早く取れ!」
アキセが苦し紛れで叫ぶ。
ナターリヤは邪魔をする。ジャンヌはすぐに檻の隙から白い炎を飛ばす。
気付かれたナターリヤは顔をそり、白い炎を避ける。
「邪魔を・・・」
ナターリヤが言いかけた時だった。
ユキシズクは雪の渦に包まれる。
ナターリヤが氷の槍でユキシズクに伸ばすも、ユキの枝が氷の槍を砕き、ナターリヤの腕を切る。
ナターリヤは距離を取る。
「やっと戻れた」
青い瞳。足までつく長い黒と青が混ざった髪。雪のように白い衣に長い袖は青のグラデーションに染まっている。耳には雪の枝。頭には白いローブをかぶっている少女だった。
「雪華(せっか)の魔女ユキシズクが、季冬を告げに一花咲きましょう」
「見つけた!」
コウガイジが現れ、ユキシズクを槍で払おうとするも、煙のようにユキシズクは消えた。
「あれ?」
コウガイジは目が点になった。
ナターリヤは止まり、白い炎の球がナターリヤの肩に当たる。
あのハゲ頭め。頭を狙いそこなった。
ナターリヤが振り向き、床から氷の槍が迫ってくる。
床に白い炎で穴を空き、下へ逃げる。1階の床に着地し、すぐに白い炎を放つ。
ナターリヤが次の攻撃に出ようとした時、ナターリヤの目の前に唐突に出現したガラス玉が落ちる。
以前アキセが使った動きを止める魔術爆弾か。アキセが召喚したのだろう。
ガラス玉が割り、瞬時に陣が浮かび上がる。
ナターリヤの動きが止まり、まともに白い炎を受ける。
ナターリヤを殺すにはまだ足りない。さらに白い炎を放つ。
その時、氷の壁ができる。
氷の壁が溶ければ、白い炎に包まれたナターリヤは氷に包まれた。白い炎を消し、燃えていた傷を氷で再生している。
「せいじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ナターリヤは血走った目で睨みつける。
咄嗟に柱に隠れる。
「どこにいる!出でこい!聖女が!」
ナターリヤは怒声を上げる。城が氷で作られているため、声が響く。
ナターリヤが回復した。
『なんでも遮断マント』で姿が見えないが、もう存在に気付かれている。ナターリヤが警戒し、闇討ちもできない。あとは近づくしかない。
それにコウガイジは確実に邪魔をする。すでにアキセを押さえられている。
「そう。出ないのか」
ナターリヤがアキセを睨みつけた瞬間にアキセが急に苦しんでいる。
タタリが発動したのか。
「そういえば、ウィムが言っていたけど、彼氏らしいわね」
ぴく。これは誘っている。我慢我慢。つーか。ウィムも絡んでいるのか。最悪。部屋で話した時、ウィムのことなんて一言も言っていなかった。わざと言わなかったのか。
それにアキセを人質にするつもりかな。別に死んでもいいけど。本当なら見捨てたい。
でも、ここで逃げたら、ナターリヤが警戒し、殺すチャンスが逃してしまう。
これ以上『光』を消耗するつもりがない。
「乗らないか」
ナターリヤがアキセを見下ろす。
「お前にチャンスをやる」
――あ、嫌な予感。
「聖女を捕獲したら、タタリを解いてやる」
その時、『なんでも遮断マント』が消える。
「な!」
「あの柱の陰です!」
アキセが声を上げる。
ジャンヌは咄嗟に横に飛ぶ。
柱から氷の柱を伸ばしていた。危うく潰されるところだった。
ジャンヌの周りに床から氷の柱に囲まれる。
氷の檻に閉じ込められた。
「ちょっと!何しまうのよ!」
「俺の命が優先!」
「しばくぞ!」
絶対に後で。
「捕まえた」
アキセを恨むところではない。
ナターリヤが嬉しそうに見下ろす。
「火を使う聖女でしょ。溶かしたら。それとも消耗を避けたいのかしら」
逃げなくはないが、『光』の消耗を狙っている。
「さて、どうしようかな」
「ちょっと待った!まだセックスを!」
コウガイジは氷の柱にぶつかり、そのまま壁に激突する。
どうせ死んでいないが心配しない。
「これで聖女を捕まえましたよ」
アキセがへらへらと言う。
「一つとは言っていない」
やっぱり。
「あんた。散々魔女に騙されているんだから、学びなさいよ」
「誰だって自分が優先するだろうが」
――次は見殺す
「お前が隠したユキシズクの『呪い』はどこにある」
ナターリヤが部屋で聞きたかったのはそれだったのか。
「渡したじゃないですか・・・」
「あの女の『呪い』はあれだけじゃない。あるはずだ。出せ!」
アキセがまだ苦しんでいる。
「あら、お取込み中?」
鈴の音と風と共にかざなりの魔女ウィム・シルフが姿を見せる。
「ウィムか・・・」
「お探し物持ってきたわよ」
風に包まれて現れたのは、ユキシズクだった。
「ここは・・・」
ナターリヤと目が合ったユキシズクは怯える。
「あなたが脱獄させて、わざわざ連れてきたのは、どういうことなのかしら」
ナターリヤがウィムに鋭い目つきをする。
確かに弱っているユキシズクが1人で脱獄できるわけがない。誰かが手助けと思ったのだろう。
ウィムがにやっと笑う。
「ここからの展開を見たいから」
「は?」
アキセがユキシズクの目の前に黒い結晶のカースネロを召喚する。
「早く取れ!」
アキセが苦し紛れで叫ぶ。
ナターリヤは邪魔をする。ジャンヌはすぐに檻の隙から白い炎を飛ばす。
気付かれたナターリヤは顔をそり、白い炎を避ける。
「邪魔を・・・」
ナターリヤが言いかけた時だった。
ユキシズクは雪の渦に包まれる。
ナターリヤが氷の槍でユキシズクに伸ばすも、ユキの枝が氷の槍を砕き、ナターリヤの腕を切る。
ナターリヤは距離を取る。
「やっと戻れた」
青い瞳。足までつく長い黒と青が混ざった髪。雪のように白い衣に長い袖は青のグラデーションに染まっている。耳には雪の枝。頭には白いローブをかぶっている少女だった。
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