魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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冬の魔女たち③

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 視界が見えない。動けない。なぜか息は苦しくない。
 アキセの行動が分かっていても、引っかかる自分に嫌気をさす。
 やっと視界が見えたと思えば、アキセが傲慢に座っている。
 殴りたい。
 だか、体中に布状の紐で拘束されているし、言おうにもまだ口まで塞がれて、文句の一つも言えない。これはどう考えてもコルンの発明品だろう。
「お~怒ってる」
「ぐ~!」
 にらみ返す。
「あ~その顔もそそるな~」
「ふががが!」
「まあ、話しを聞けって。ここは、魔女の城だぞ」
 冷静になって周辺を見ればどれも氷で作られ、氷で作ったベッドの上に横になっている。
 いつの間にかアキセに魔女の城に連行されたそうだ。ということは、アキセは魔女と組んでいる。
「分かるように今、俺は魔女の下にいる。けど、ジャンヌのことは話していない」
「ん!」
「今、結界を張っているから、すぐにはバレないさ。まあ君次第になるけど」
 アキセは笑顔で言う。
 いつでも魔女に引き渡すっていうことか。
「おまえもどーせ。魔女狩りに来たんだろ。だったら丁度いいじゃないか。探す手間が省けただろ」
「ぐ!」
「魔女を退治してくれるなら手を組んでもいいんだぜ」
 その時、口だけ外される。
「あの子はどうした!何か目的だ!」
 一番に声を上げる。
「分かった。説明するから大声出すなって。おまえが助けた子供。あれはユキシズクっていう魔女だ」
「やっぱり」
「別に驚かないか」
「予想はつくわよ。で、どうしたのよ」
「さあ。ナターリヤが痛めつけてるじゃないのか」
「痛めつけてる?」
 あんな弱い魔女に。
「どうもナターリヤがユキシズクに恨みがあるようでさ。憂さ晴らしだろうよ」
 魔女同士の喧嘩争いはよくある。だか、ユキシズクはコウガイジに対抗するほど呪力を持っていない。そんな魔女に恨みを持っているとは一体。
 ん。
「ナターリヤって、この城の主の魔女」
「そう。凍美(こおりび)の魔女ナターリヤ・クリュスタルス。この冬を起こした張本人で、俺と赤ハゲにタタリをかけた魔女。だから今その魔女の下にいるんだ」
 コウガイジもか。
「タタリなんてあんたの魔力があれば、取れるでしょ」
 触れれば、なんでも奪える魔力を持っている。タタリを奪えないことがない。
「今諸事情で使えない・・・」
「はあ~」
 呆れてものも言えない。
「いつも思うけど、肝心な時に使えないってどういうことよ!」
「痛いとこつかないで・・・」
 ナターリヤが弱いユキシズクを恨んでいる。アキセは奪う魔力が使えない。これって。
「もしかして、ユキシズクの記憶喪失と子供になるまで呪力をあんたの魔力で奪ったんじゃ・・・」
「・・・」とアキセは視線をそらす。
「図星だな。あんな弱い魔女をわざわざあんたたちを使ってまで捕まえようとしたんだから。ナターリヤが恨みを持っているなら、あんたの魔力を利用した方が、魔女を簡単に捕まえられるからね。だから、あんたの魔力もユキシズクだけに制限されたってことね」
「勘の鋭さに驚くよ。君を誘った理由に納得したか」
「拉致していうか!」
 ふと思い出す。
「だから、あの時胸を触ったのか。タタリを浄化させるために」
『タタリ』は、様々な災難を降りかかる。
 『光』で浄化されないように魔女の中で開発された術『タタリ』を『光』に届かないほど相手の体内に入れられる。『タタリ』は魔女と繋がっているため、魔女が消滅しない限り消えることはない。
「身を呈してやったけど、無駄だった・・・」
 アキセは悔やむ。
『タタリ』を消滅するには、直接『光』で浄化するしかない。ただ白い炎に浴びただけでは解けない。
「けどあの触覚を得た代償だと思えば・・・」
「悔やむところが違うんだけど」
「それが、前にやったみたいにキスをして・・・」
「こ・と・わ・る!」
 はっきり返す。
 直接『光』で浄化するために、キスをしかけた。思い出しただけでも気持ち悪い。
「私に助けを求めるほどってことは、どんなタタリかけられたのよ」
「話さないとダメ?」
「協力してほしいなら、言いなさい」と強めに言う。
「たく」
 アキセは頭をかきながら言う。
「俺の心臓を凍らせるタタリだ」
 なるほど。そういうことか。
「俺の命は魔女の手の中ってこと」
「だったら無視する」
「いうと思ったから言いたくなかった」
――うん。無視して去っていく。
「だからさ。俺も協力してやるからさ。お互いいい条件だろ」
 本当は無視したいところだか。
 『光』が吸収できない。敵の陣の中にいる。どう考えても組んだ方が賢明だか。
「殴ったら、組んでやる」
「せめて終わってからで~」
 その時、氷で作った扉が割れた。
 それはコウガイジが扉を蹴り破ったからだった。
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