魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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冬の魔女たち①

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「あ~帰りたい」
 ジャンヌは、吹雪く森の中にいた。

 数時間前

 アガタに聖女の地まで連行され、今椅子に縛われている。
「君が仕事を拒否するから、強硬手段する羽目になるんだよ」
 アガタが言う。
「こういう時に舞い込む仕事が厄介なものばかりじゃないですか」
 怒り混じった声で返す。
「いやいやたまたまだと思うけどな」
 アガタがとぼけるように言う。
「誤魔化さないでください」
「今回は一番相性がいいからよ」
 割り込むように天光の聖女イヴが来る。
「一晩で冬にした魔女なの。つまり、雪と氷を操る魔女。相性的に考えたら、火を使うジャンヌが今回の仕事にぴったりなのよ」
「他に火を使う聖女いるじゃないですか。ラクシュミーとか」
 赤の聖女ラクシュミー・バーイーは火を使う。ジャンヌよりも強い最強の聖女に当たる。
「それに季節を変えるほどならかなり強いですよね。私一人じゃ、難しいと思いますが」
「本当は、二人組ませたかったけど、ラクシュミーは別の仕事に入っているのよ」
「せめて、ラクシュミーが仕事終わってからでもいいです」
「それには引っかからないぞ。その間に逃げるつもりだろ」
――ち、バレたか。
「あまり長めると地形が変わってしまう。早めに対処したいのよ」
『呪い』の影響で地形や気象を変えられることもある。これ以上、『呪い』に汚染された地域を増やさないためにも、早急に対処するのが、イヴの狙いだった。
「だったら、アガタさんも・・・」
 アガタに目と合わせる。
「僕も他の仕事あるからさ」
――一人でやらす気満々だ。協調性とか、仲良くしろとか説教している割にこういう時だけ一人にやらせるんだから。
「仕事終わらせるまでは、帰らせないから」
 イヴが圧をかける。
「はい・・・」
 もう諦めた。


 というわけでこの地に落とされた。
「せめて、もう少し情報が欲しかったよ」
 魔女の情報なんかまったく聞いていない。そんな中に仕事に出すにもほどがある。
 辺り一面が真っ白に覆われている。空も木も土も。
空は日が届かないほど厚い雲に覆われている。十分に『光』は吸収しているが、この様子で魔女と戦っても1日超えるか怪しいところ。
 かなり緊急事態の時は救出してくれないと、さすがにブチ切れる。
 どっちにしても長期戦は避けたい。一日で終わらせる。
 まずは魔女を探さないと思った矢先だった。
 小さな少女が転がってきた。さらに炎も少女の方へ迫る。
 白い炎を投げ、炎をぶつける。
 倒れた少女に駆け寄る。
「大丈夫?」と声をかけるも、思わず目を見開いた。
腰まで長い黒い髪。露出の多い足。白い衣と腰に布紐を巻いた少女だった。
 明らかに普通の少女ではない。こんな寒い中、露出が高く、薄い衣で済むわけがない。
 背後から殺気を感じた。
 少女を抱えて咄嗟に避ける。少女を木陰に隠し、ロザリオを構える。
 いた場所を見れば、見覚えがある男がいた。
頭に布を巻いている。赤目。こんな雪の中、赤い入れ墨が刻んでいる上半身裸。赤い槍を持っている優男。
「あ!聖女!」
 コウガイジだった。
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