魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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字崩の魔女①

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「かえせ・・・かえせ・・・それはわたしのだ!」
 声だけが響き、黒い手が伸ばしていく。

「はあ!」
 アキセは目を覚める。
 冷や汗をかいている。急に呼吸が乱れた。
――なんだ。あの夢は。
「どうしたのよ」
 横にいた女が目を覚める。
「なんでもない・・・」
 視線を女に向けた時、女の顔が文字に変わっていた。


 この小さな街に賢者がいるという。
 魔術師の中でも最高位に当たる賢者が学校を作り、街を立て直したようだ。
 この街のカフェでジャンヌはのんびりコーヒーを飲んでいた。
 実はこの街である事件が多発している。話を聞く限り魔女しか考えられなかった。たまには聖女の仕事しようとカフェから立ち去る時だった。
「あ!ジャンヌさん!」
 訊いたことのある声。声の方を向けば、茶髪にメガネをかけている青年ナタル・イーブラーだった。
魔女の情報を集めた魔女辞典を作るという夢を持っている青年。
 ナタルは無邪気な子供のように手を振る。
――なんでこんなとこに
 ナタルが近づいてくる。
 よし。逃げようとナタルから逃げる。
「え?ジャンヌさんも噂を聞いてここに来たんですよね。魔女狩りに」
 ずがずがとナタルがついてくる。
「とは限らない」
「ここ最近の事件。魔術師が被害者で、どの被害者も動いた文字に襲われていると聞いています。もうこれは魔女しか考えませんね!」
 情報早いな。
「いや。魔女と決定づけないほうがいいって」
 早くナタルから逃げなくては。
「ご一緒してください!」
「いや、邪魔になるからダメ」
「観察するだけです」
「あんたの場合邪魔になるのよ」
「お願いしま・・・す」
 急に言葉が途切れた。
「ん?」
 振り向けば、ナタルが立ち尽くすだけだった。様子がおかしい。
 よく見れば、その場にいた住民も様子がおかしかった。立ち尽くすだけかと思いきや、住民が急に襲いかかる。
「これって・・・」
 その時。
「これをかけろ!」
 思わず受け取る。それは黒い眼鏡のようなものだった。
 今は考えるよりも言われた通りに黒い眼鏡をかければ、人の体に虫のように文字が張り付いていた。
「気持ち悪い!」
 これが人を操られた原因だろう。
 文字は、一文字が複雑に書かれた魔女文字(ウィーンもじ)のようだった。意味は理解できないが、操られているのは間違いない。
 文字の虫は『呪い』でできたもの。人には『光』が効かない。なら、白い炎で文字の虫を燃やす。
 ロザリオで白い炎を放つ。
 白い炎を浴びた文字の虫は燃えていく。文字の虫から解放された人は倒れていく。
 とりあえずは終わったと黒い眼鏡を外す。
「終わった終わった」
 聞いたことのある陽気な声。
「あんたもこの街にいたの」
 声の方を向けば、黒い眼鏡をかけたアキセがいた。
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