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入れ替わっちゃった④

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「私が助けてあげたんだよ。敬いなさいよ」
 ウィムは胸を張る。
「何。あの魔女と手を組んだわけ?」
 (アニエスの中にいる)ジャンヌは、アキセにジト目で見つめる。
 いろいろと悪知恵を働く魔女となぜ組むのか、(ジャンヌの中にいる)アニエスも思う。
「あ・・・あー」とアキセが視線をそらす。


 1時間前。


「何が目的だ?」とアキセはウィムに問いかける。
「え~どうしようかな~返してもいいし。脅迫してもいいし」
「このアマ!」
 口調強めで返す。
「今君は何をしたい?あの二人を取り戻したい。指輪も取り戻したい」
 ウィムは笑顔で煽るように言う。
「分かり切ったことを・・・」
「別に断ってもいいんだよ。指輪なしでほぼ人間と変わらない君が、あの知性が低い赤人と戦えるなら」
「ぐ!」
 紅孩児はバカだか、戦闘力は高い。指輪がなければ、ほぼ人間と変わらない。
「分かった。協力してあげる」
「何が企んでいるだろ」
「え~そんなに疑うと時間が過ぎるよ。今何してるのかな。あんなことやこんなこととか。先に越され・・・」
「分かった!協力する!」
 あれだけは譲れない。
「今回は助けてあげる。それまではこれ預けるね」
 ウィムは手に持っていた入れ替わりボールを見せる。


――なんて言えない。


 アキセが黙り込む。
 ウィムと何かしらの条件で組んでいると見えた。
「代わりに答えてあげる」
 ウィムが言い出す。
「あ!」とアキセが一番に反応する。
「それはね。指輪まで盗まれて、何もできない内にセックスさせられるのが嫌だからだって」
「おま!」
「だと思った」とドスの入った声でジャンヌは手を鳴らす。
「やはり」とアニエスは冷めた目で見つめる。
「おいおい。結果的に助けただろ。そこで怒るのはおかしいだろうが!」
「おまえの動機が気に入らない」
「そこ!そのくらい目をつぶってよ!」
 これから喧嘩が始まりそう。これでは話が進まない。
「あなたたちの痴話げんかはそこまでにしてくれませんか」
「ああ!」
 ジャンヌは、ドスの入った声で言う。
「そこのクズとウィムが組むというのは、他にもあるのでは。もしかして持っているんですか。入れ替わりボールを」
 アニエスはウィムに問いかける。
 ウィムは、イタズラな笑みで返す。
「分かっちゃったか。そうよ。持っているよ」
 ウィムは入れ替わりボールを見せびらかす。
「二人を助けるまでは預かる話だったの。目的は達成したということでこれ返すね」
 ウィムがアキセに渡そうとした。
「ちょっと待った!渡すなら私にして!」とジャンヌが声を上げるが。
「あ!手が滑った」
 片言で言うウィムが入れ替わりボールを投げる。
 確実にわざとな投げ方だった。入れ替わりボールは、伸びている紅孩児に向かっていた。
「させるが!」
 アキセは瞬時に召喚した銃を撃つ。弾は、入れ替わりボールに当たり、爆発する。
 一瞬頭が真っ白になった。唯一取り戻せる手段が目の前でなくなったからだ。
「あんた!何してくれるのよ!」
「ふざけないでください!」
 アニエスとジャンヌは、責めるようにアキセに怒鳴る。
「え・・と・・・つい反射的に・・・」
「まさか。あのボールに当たったの」
「・・・」
 だから、ウィムと組んでいたのか。さらに組む理由が納得した。
「おまえら・・・」
 紅孩児が目を覚まし、鋭い目つきで立ち上がる。
 爆発音で目を覚ましたのだろう。
「どうしたの?」
 ウィムが何事もなかったように紅孩児に声をかける。
「あ!ウィム!」
 顔なじみだった。
「手伝おうか」
 ウィムが寝返る。
「寝返り女が!」とアキセが言う。
「それはあんたも一緒だろうか」とジャンヌが突っ込む。
 紅孩児とウィムがこそこそと話している。紅孩児が指を指しながら何かを言っている。
 話をつけたのが、ウィムが唐突に鈴の音と共に大風を起こす。
 風が強すぎて腕を顔の前に出し、視界を確保する。大風の中、ウィムが迫る。ウィムは足を上げ、顎に蹴り上がる。かなりの衝撃で立つこともできず、倒れそうになるも、地面につくことがなかった。それは背後に口の端を上げる紅孩児がアニエスの体を受け取っていたからだった。



 風が止んだ。
「あ!」
 (アニエスの中にいる)ジャンヌはアキセと目が合ってしまった。それは、アキセの腕を掴んでいたからだった。
「違う!あの二人の行動が読めたから、離れないように・・・」
「ふ~ん。本当にそれが本当の理由か」
 アキセはからかうように言う。
「調子に乗るな!」
 アキセを殴る。
「たく。また私の体が誘拐されるって・・・」
 風が止めば、(ジャンヌの中にいる)アニエスとコウガイジにウィムもいない。どう考えても、アニエスはまた誘拐された。
「またあの魔女を取り戻すのか?戻す手段なくなったんだぞ」
「壊した張本人が言うか!」と怒鳴るジャンヌは倒れてしまう。
 体の中の拒否反応が起きながらも、無理やり体を動かした。もう体が限界だろう。
「あ~あ。もう死ぬのか」
 アキセが軽く言う。
「他人事だと思って・・・」
 少し切れ気味に言う。
 しゃがみこむアキセは倒れるジャンヌに手を掴まれ、体を起こす。
「何よ・・・」
 真剣な眼差しで見つめるアキセが近づいてくる。もうアキセの行動が読めた。
「絶対にイヤ」
「最後くらい素直になれよ」
 右手で顔を触り、左腕で体を支えられる。
 別の体だとしても、動けないからといって好き放題触られるのはイヤ。
「素直に嫌なの」
「可愛くね」
 口を近づけようとする。
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