魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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入れ替わっちゃった①

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 なんでこんなことになったのでしょうか。
 目の前には、会いたくない人がいる。
以前、速忍の魔女ヤオトメ・クノの知り合いが作ったという『奴隷首輪』をつけさせられたアキセ・リーガンという者がじろじろと見つめている。
「何、じろじろ見ているんだ。ジャンヌ」
 どうやら、私、爽律(そうりつ)の魔女アニエス・ソナタ・ウェンディは、白の聖女ジャンヌ・ダルクと入れ替わったそうです。


 広大な森。涼しい風が優しく触っていく。アニエスが気持ちよく空を優雅に飛んでいた時だった。
 森から飛んできた青い球体が顔に当たる。まるで巨大な石に当たったような衝撃でそのまま気を失ってしまう。
目を覚ませば、森の中だった。どうやら森の中に落ちてしまったようだ。妙に体が重い。
「何、やっているんだ?」
 以前、会ったアキセ・リーガンが見下ろす。
「あなたは!」
 瞬時に立ち上がる。
「アキセ・リーガン!」
 以前、『奴隷首輪』をつけ、いやらしいことをしようとした男。
 追い払うためにすぐにハープ弓を召喚しようとしたが。
「あれ?」
 出ない。
「どうして!」
 どうやっても出ない。なぜ。
「お!その声でちゃんと名前を呼んでくれたのか。こんな嬉しいものはない」
 アキセは腕を組んで、顔を縦に振る。
「てか、さっきから何をやっているんだ。ジャンヌ」
「ジャンヌ?」
 首をかしげる。白の聖女ジャンヌ・ダルクのことだろうか。
「おいおい。自分の名前も忘れたのか。ジャンヌ」
「あなたは人違いにもほどがあります」
「だから。何とぼけているんだ。自分の顔でも見ろ」
 アキセは、手から鏡を出す。
 鏡の中には白の聖女ジャンヌ・ダルクしかなかった。
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
 どうやら、白の聖女ジャンヌ・ダルクに入れ替わったようです。


 現在、木の陰で隠れている状態だった。
「来ないでください・・・」
アキセにじろじろと見られている。
「なんだ。急に女らしくなって」
 アキセが近寄ってきた。
 逃げなくては。ケダモノの塊と近づきたくない。空へと逃げようと足を跳ねる。
「あ!」
いつもの癖で、聖女の体になっているので、飛べるわけがない。このまま転んでしまうところ、アキセに腕を引っ張られる。
「とぼけるにもほどがあるぞ」
 アキセは呆れたように言う。
 顔が近い。そもそも男が苦手。男は基本、性欲しか考えられなくて気持ち悪い。関わりたくもないし、触られたくない。
 そんなに見られては。
「う・・・う・・・うわあああああああああああああああ」
 アキセを突き飛ばし、必死に逃げる。


 走ったアニエスは、木に手をつき、呼吸を整える。
 どうしょう。クノを呼んでも絶対気付いてくれない。どうすれば。
「おまえでも可愛いとこがあるんだな」
 振り向けば、アキセがいる。もう追い付いた。
「ぎゃ!」
 逃げようとしたが、また腕を掴まれる。
「おっと。今度は逃がさないぞ」
「離してください!」
 腕を振ろうにも離れない。
 その時だった。
「見つけたぞ!」
 赤目。頭に布を巻いた上半身裸に赤い入れ墨が刻み、赤い槍を持っている男だった。
 また増えた。しかもなんかバカそうな人。
「んだよ~邪魔すんじゃねえぞ。ハゲるたびに知性ところが空気も読めたくなったのか。赤ハゲ」
「俺は紅孩児だ!」
 紅孩児は地団駄を踏む。
「だったらここで!」
 紅孩児の頭が背後から掴まれる。
 それは、鋭い目つきをしたアニエスがいた。しかもアニエスの手に何かを引きづっていた。
「見つけたぞ・・・」
 鋭い目つきでアニエスの顔で睨みつけるジャンヌだった。
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