魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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宿器の魔女 後半⑥

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 声が聞こえる。
「まだ指輪に戻さないでよ」
「分かったから。そのロザリオを仕舞ってくれないか」
 ジャンヌとアキセの声がした。
「その杖どうしたのよ」
「拉致した人間の持ち物だよ」
 目を開ければ、ジャンヌと布を包んだアキセが目の前に立っていた。
「よかった。気が付いたのね」とジャンヌはアキセの後ろに立っている。
「あぶねー俺の全財産が無くなるとこだった」とアキセはユビワの胸に触っていた。
「いや!」
 アキセを突き飛ばす。
「おまえな!」
 アキセが怒鳴ったが、ジャンヌがアキセの前に光の刃を作ったロザリオを出す。
「俺が魔力使わなかったら、こいつが朽ちるところだったんだぞ。少しは敬えよ」
「その前にユビワちゃんに暴力振るったでしょ」
 ジャンヌは口調強めに言う。
 アキセが冷や汗をかく。
「ジャンヌさん・・・」
 自身の体が薄れていく。トウキにかけられた呪力が失っていく。つまり。
 ユビワは立ち上がり、トウキを見つめる。トウキは上半身しかなく、白い炎に侵食している。
 いつものジャンヌなら止めを刺す。刺さないということは。
「ジャンヌさん。私を待たせてくれたのですか」
 ジャンヌに尋ねる。
「もうあの魔女には呪力がない。その内消えるわよ」
「これしか終わらせなかったんですよね・・・」
「私がやらなくてもここまで人を殺し、街まで作っているんじゃ、他の聖女に退治しているわよ」
「そうですよね・・・」
 ユビワは消えていくトウキに近づき、膝をつく。
「一緒に・・・やりたかったな・・・」
 まだ意識が残っている。
「私も一緒にやってみたかったです」
 トウキの想いに答えた。
「もっとお話しをしたかったです。それに・・・友達にしてくれてありがとうございます・・・」
 消えていくトウキの手を握る。
 顔を見えなかったが、笑ったように見えた。



 トウキは消える。ユビワは指輪に戻った。
 その時、アキセが走り、指輪を拾う。身についていた布が風に飛ばされた時には、アキセは服を着ていた。
 指輪をはめ、服を召喚したのだろう。
「いい加減コルンに返したら。今でもユビワの叫び声が聞こえそうよ」
「全財産が全部入っているんだ。俺が困る。では、これで」
 アキセは足を強く踏み、煙が発生した。
「はいはい」と呆れるように言う。
 アキセがいつも逃げる手段で使う煙。ロザリオで煙を払えば、アキセはいなかった。
「たく」と肩をすくめる。
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