魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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宿器の魔女 後半⑤

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 ジャンヌとユビワは、トウキを追いかけていた。
「見つけた」
 トウキは今でも平屋を土の槍で破壊していた。
「作戦通りお願いね」
「はい!」
 ジャンヌは暴走するトウキに突っ込む。
 暴走するトウキと目が合い、トウキの足元から土の波で迫ってくる。ジャンヌは、白い炎で土の波をただの土に変え、トウキの元へと距離を詰める。
 ユビワはジャンヌとトウキから距離を取る。
 指飾りを召喚する。
 気を指飾りに装着しているカースネロに注ぐ。陣を描きながら、ジャンヌとの作戦を思い返す。


「ヒルダはどこかに隠れてみているはず」
「逃げている可能性は?」
「だとしてもコルンの発明品でここに転送すればいい」
 確かにできなくはないが。
「トウキと戦って消耗した隙にヒルダが私を殺しに来るのが一番の目的よ。絶対に近くで見ているはず。それに私たちが仲間であることも。攻撃の向きを変える魔術ない?」
「ありますけど」
 ジャンヌに答える。
「私が離れたらヒルダはすぐにあなたを襲う。遠距離か直接くるかもしれない。その時にヒルダの呪力を使わせて、その攻撃をトウキにぶつけてほしいの」
 それがジャンヌの作戦だった。
「さっきの土を見て思った。トウキは、土に呪力を混ぜて操っている。『光』で浄化したら土に戻ったのかその証拠。直接じゃないと倒せない。長期戦になる。だから相性が悪いヒルダの呪力を利用する。ただこれは間接的にトウキを攻撃することになる。それでも協力してくれる」
「はい」

 
 ヒルダは、ユビワが邪魔なはず。どんな能力を持っているのか分からない以上、早く殺すはず。
 その時、3時の方向に錆色の風の矢が飛んできた。
 予想通り来た。
コルンの発明品では使えない。魔術で起動を変える。
指飾りで描いた陣を錆色の風の矢に向ける。錆色の風の矢は陣に触れ、方向を変えられた。ジャンヌとトウキの方へ飛ぶ。
「ジャンヌさん!」
 錆色の風の矢は向かうも、別の方向から飛んできた錆色の風の矢にぶつかり、風となって消えた。
「え?」
「あ~やっぱりそういうこと」
 背後に風朽(ふうきゅう)の魔女ヒルダ・レイディが立っていた。
「私の力を利用してあの狂った魔女に攻撃しようとしたところでしょう」
 作戦が読まれた。
 直接攻撃も予想範囲内。すぐに距離を取るもヒルダがすぐに距離を詰められ、腹に蹴り飛ばされる。平屋の壁に当たる。
 立てない。ヒルダの呪力を少し受けてしまった。
 ジャンヌはトウキと相手していて助ける余裕がない。
 体が少しずつ侵食していく。
「こんな子供に邪魔されてたまるか」
 ヒルダは大きく手を払い、錆色の風を放つ。
 陣を描ける余裕がない。
 その時、『左』という文字を含んだ陣が目の前に飛んできた。
「え!?」
 錆色の風が陣に触れ、方向が変わった。
 ユビワは陣が飛んできた方向を向く。
 アキセが杖を構えていた。あの陣はアキセが描いたものだった。
 いけない。
「ジャンヌさん!」
 ジャンヌに声を上げる。
 気付いたジャンヌは、土の波を白い炎で崩し、避ける。錆色の風がトウキに当てる。
 トウキの体にヒビが入り、悲鳴を上げる。
「あああああああああああああああああああああああああああ!」
 ジャンヌはトウキに白い炎を飛ばす。
 その時、ヒルダは逃げようとする。
――トウキを暴走させたあなたを逃がさない。
 エンジェライトの弾の入った銃を召喚し、両手に構えてヒルダに撃つ。
 ヒルダの顔に弾が当たる。
 やはり『光』を含まれたエンジェライトは効いた。
 ヒルダは顔を抑えながら、睨みつける。
「このガキ!」
 その時ヒルダは白い炎に包まれる。
 これでトウキの仇を討てた。
 瞼が閉じる。
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