174 / 654
宿器の魔女 後半②
しおりを挟む
トウキは、戦闘向けの道具たちを連れ、現場に着いた。現状は思っていた以上に悪い。
飼育場から逃げる人間や道具を襲う人間もいた。しかもこの街で作った武器を手にして。他にも平屋は朽ちている。道具たちは錆をつき、朽ちて倒れていた。
これは明らかに人間ができるものではない。
そこに女が1人立っていた。
「姉さん」とヨロイトが声をかける。
「ここはあたいが相手する。人間をお願い」
「承知」
道具たちは散らばる。
トウキは一人の女を睨みつける。
錆色の長い髪。茶色の瞳。左腕に長い袖。素肌を見せる右腕。足を見せるワンピース。左足に透き通った筒状に装着している魔女だった。
「おまえが人間を逃がしたのか」
鋭い目つきをするトウキ。
「ついでよ。盛り上がってくれると思ったからよ」
魔女は不適な笑みで返す。
「それにしてもこんな子供が責任者なの」
挑発するように言う。
「それが何よ」
「だから、こんな欠陥品ができるのよ」
魔女の手にはカビだらけのカバンを見せる。
「どうしてくれるの。触っただけでカバンを腐らせるって客に売るんじゃないわよ」
「そんなものないわよ!どう考えてもあんたの呪力でしょうが!」
「何よ。客の意見を聞いて商品を生み出すものでしょう。無視するんじゃないよ」
ドスの入った声で魔女が言う。
「まさか。クレームをつけるためにこんな大事を・・・」
怒りがこみ上げる。
商品が気に入らないからという理由で街を襲った。しかもいちゃもん。腹立たしいにもほどがある。
「職人はクレーマーに相手するほど暇じゃねえんだ!この悪質クレーマーが!」
声が枯れるほどに怒鳴るトウキは力強く足を踏む。足元から土が波のように盛りあがり、魔女を襲う。
「木や鉱物。全ての道具は土から生まれる。土を操るあたいが腐らせるだけの魔女に負けるつもりがない!」
トウキは怒声を上げる。
道具を腐らせるなら、土は腐らせることはない。遠距離で攻撃するしかない。
その時、土の波が砂のように粉砕された。姿を見えた魔女は大きく手を振り、錆色の風を生み出す。錆色の風に触れた平屋が一気に腐らせた。
触れてはいけない。
トウキは地面を踏み、咄嗟に土の壁を作る。土の壁が錆色の風を防いだ。
あの魔女は道具を腐らせるわけではないのか。土の壁が崩れた瞬間に離れるも、そこには魔女が消えていた。
「いない」
その時、上空から魔女が降りていく。
土の壁を作った隙に上に飛んだのだろう。
「これはどうかしら」
魔女は、トウキの頭に指をつく。
その時、頭の中が溶けていくように苦しい。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
何も考えられなくなる。意識が無くなる。
「私は風朽(ふうきゅう)の魔女ヒルダ・レイディ。朽ちるのはモノだけじゃないのよ」
ヒルダは不気味に笑う。
飼育場から逃げる人間や道具を襲う人間もいた。しかもこの街で作った武器を手にして。他にも平屋は朽ちている。道具たちは錆をつき、朽ちて倒れていた。
これは明らかに人間ができるものではない。
そこに女が1人立っていた。
「姉さん」とヨロイトが声をかける。
「ここはあたいが相手する。人間をお願い」
「承知」
道具たちは散らばる。
トウキは一人の女を睨みつける。
錆色の長い髪。茶色の瞳。左腕に長い袖。素肌を見せる右腕。足を見せるワンピース。左足に透き通った筒状に装着している魔女だった。
「おまえが人間を逃がしたのか」
鋭い目つきをするトウキ。
「ついでよ。盛り上がってくれると思ったからよ」
魔女は不適な笑みで返す。
「それにしてもこんな子供が責任者なの」
挑発するように言う。
「それが何よ」
「だから、こんな欠陥品ができるのよ」
魔女の手にはカビだらけのカバンを見せる。
「どうしてくれるの。触っただけでカバンを腐らせるって客に売るんじゃないわよ」
「そんなものないわよ!どう考えてもあんたの呪力でしょうが!」
「何よ。客の意見を聞いて商品を生み出すものでしょう。無視するんじゃないよ」
ドスの入った声で魔女が言う。
「まさか。クレームをつけるためにこんな大事を・・・」
怒りがこみ上げる。
商品が気に入らないからという理由で街を襲った。しかもいちゃもん。腹立たしいにもほどがある。
「職人はクレーマーに相手するほど暇じゃねえんだ!この悪質クレーマーが!」
声が枯れるほどに怒鳴るトウキは力強く足を踏む。足元から土が波のように盛りあがり、魔女を襲う。
「木や鉱物。全ての道具は土から生まれる。土を操るあたいが腐らせるだけの魔女に負けるつもりがない!」
トウキは怒声を上げる。
道具を腐らせるなら、土は腐らせることはない。遠距離で攻撃するしかない。
その時、土の波が砂のように粉砕された。姿を見えた魔女は大きく手を振り、錆色の風を生み出す。錆色の風に触れた平屋が一気に腐らせた。
触れてはいけない。
トウキは地面を踏み、咄嗟に土の壁を作る。土の壁が錆色の風を防いだ。
あの魔女は道具を腐らせるわけではないのか。土の壁が崩れた瞬間に離れるも、そこには魔女が消えていた。
「いない」
その時、上空から魔女が降りていく。
土の壁を作った隙に上に飛んだのだろう。
「これはどうかしら」
魔女は、トウキの頭に指をつく。
その時、頭の中が溶けていくように苦しい。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
何も考えられなくなる。意識が無くなる。
「私は風朽(ふうきゅう)の魔女ヒルダ・レイディ。朽ちるのはモノだけじゃないのよ」
ヒルダは不気味に笑う。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~
月芝
ファンタジー
庭師であった祖父の薫陶を受けて、立派な竹林好きに育ったヒロイン。
大学院へと進学し、待望の竹の研究に携われることになり、ひゃっほう!
忙しくも充実した毎日を過ごしていたが、そんな日々は唐突に終わってしまう。
で、気がついたら見知らぬ竹林の中にいた。
酔っ払って寝てしまったのかとおもいきや、さにあらず。
異世界にて、タケノコになっちゃった!
「くっ、どうせならカグヤ姫とかになって、ウハウハ逆ハーレムルートがよかった」
いかに竹林好きとて、さすがにこれはちょっと……がっくし。
でも、いつまでもうつむいていたってしょうがない。
というわけで、持ち前のポジティブさでサクっと頭を切り替えたヒロインは、カーボンファイバーのメンタルと豊富な竹知識を武器に、厳しい自然界を成り上がる。
竹の、竹による、竹のための異世界生存戦略。
めざせ! 快適生活と世界征服?
竹林王に、私はなる!

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています


もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

素直になる魔法薬を飲まされて
青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。
王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。
「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」
「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」
わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。
婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。
小説家になろうにも投稿しています。

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる