魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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宿器の魔女 後半②

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 トウキは、戦闘向けの道具たちを連れ、現場に着いた。現状は思っていた以上に悪い。
 飼育場から逃げる人間や道具を襲う人間もいた。しかもこの街で作った武器を手にして。他にも平屋は朽ちている。道具たちは錆をつき、朽ちて倒れていた。
これは明らかに人間ができるものではない。
 そこに女が1人立っていた。
「姉さん」とヨロイトが声をかける。
「ここはあたいが相手する。人間をお願い」
「承知」
 道具たちは散らばる。
 トウキは一人の女を睨みつける。
 錆色の長い髪。茶色の瞳。左腕に長い袖。素肌を見せる右腕。足を見せるワンピース。左足に透き通った筒状に装着している魔女だった。
「おまえが人間を逃がしたのか」
 鋭い目つきをするトウキ。
「ついでよ。盛り上がってくれると思ったからよ」
 魔女は不適な笑みで返す。
「それにしてもこんな子供が責任者なの」
 挑発するように言う。
「それが何よ」
「だから、こんな欠陥品ができるのよ」
 魔女の手にはカビだらけのカバンを見せる。
「どうしてくれるの。触っただけでカバンを腐らせるって客に売るんじゃないわよ」
「そんなものないわよ!どう考えてもあんたの呪力でしょうが!」
「何よ。客の意見を聞いて商品を生み出すものでしょう。無視するんじゃないよ」
 ドスの入った声で魔女が言う。
「まさか。クレームをつけるためにこんな大事を・・・」
 怒りがこみ上げる。
 商品が気に入らないからという理由で街を襲った。しかもいちゃもん。腹立たしいにもほどがある。
「職人はクレーマーに相手するほど暇じゃねえんだ!この悪質クレーマーが!」
 声が枯れるほどに怒鳴るトウキは力強く足を踏む。足元から土が波のように盛りあがり、魔女を襲う。
「木や鉱物。全ての道具は土から生まれる。土を操るあたいが腐らせるだけの魔女に負けるつもりがない!」
 トウキは怒声を上げる。
 道具を腐らせるなら、土は腐らせることはない。遠距離で攻撃するしかない。
 その時、土の波が砂のように粉砕された。姿を見えた魔女は大きく手を振り、錆色の風を生み出す。錆色の風に触れた平屋が一気に腐らせた。
 触れてはいけない。
トウキは地面を踏み、咄嗟に土の壁を作る。土の壁が錆色の風を防いだ。
 あの魔女は道具を腐らせるわけではないのか。土の壁が崩れた瞬間に離れるも、そこには魔女が消えていた。
「いない」
 その時、上空から魔女が降りていく。
 土の壁を作った隙に上に飛んだのだろう。
「これはどうかしら」
 魔女は、トウキの頭に指をつく。
 その時、頭の中が溶けていくように苦しい。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 何も考えられなくなる。意識が無くなる。
「私は風朽(ふうきゅう)の魔女ヒルダ・レイディ。朽ちるのはモノだけじゃないのよ」
 ヒルダは不気味に笑う。
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