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宿器の魔女 前半⑤
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「冗談じゃねえ!」
アキセは足を大きく上げる。
アキセの靴は踏めば、煙が包まれる仕組みになっている。煙を出して逃げるつもりだろう。アキセと一緒にいたため、どこに道具があるのかも分かる。
トウキはアキセの行動に察したのか、アキセの股間に蹴る。
「あ・・・」
アキセは青ざめ、足を内股にして痛みを抑えている。
「簡単に逃がすと思う」
トウキは見下ろす。
「うわ!姉さん。怖いことするな」とタイコマは言う。
「何よ。男はそこが弱点でしょう!あ!男は大抵これ効くから覚えた方がいいよ」
「は・・・」
まあ、いつかは使ってみましょう。
「そうだ。ヌノノはキリクンを呼んでね」
「あいよ」とヌノノは、どこかに飛んでいった。
「じゃあ行こう!」
トウキに引っ張られる。
トウキの家はとても大きかった。2階立ての木造建築だった。
アキセはヨロイトとタイコマと一緒に隣の建物へと消えた。
ユビワはトウキに引っ張られるまま、家に入り、客間のような部屋に案内される。部屋は、奥に大きい窓の前に机。その前に長机とその両端に長椅子が配置されている。
「本当は和室にしたかったけど、お客さんに合わせてこっちの生活様式に変えているんだ。ここでキリクンが来るまでゆっくりお話しよう」
トウキは窓の前の机の上に乗る。
「そうですね」
ユビワは近くの椅子に座る。
なるべく情報収集しよう。
「いくつか質問してもいいですか?」
「いいよ。ドンと来て」
では、遠慮なく。
「ヨロイトさんたちから話を聞きましたけど、ここは人を使って商品に変えていると」
「そうだよ」
トウキは答える。
「まずは飼育場で解体するでしょ。皮とか骨とかね。商品になりそうなものをね。でも、肉は食材になるしかないから、別に売るの」
「それって需要あるんですか?」
「意外に結構あるんだ。魔女でしょ。魔族(アビス)に半獣人(デミ・ビースト)に。それに人間からも買ってくれるの。いや~分からないものだよね~」
トウキは軽く笑う。
「そうですね」
買取手は想像ついたが、まさか同族である人間でも買取るとは世の中分からないものだ。
「人間はどこから収穫しているんですか?」
「やけに人間を気にするのね」
「少し気になったので」
「まあいいけど、捕獲とか買取とかかな。あとは、道具に対して虐待をした人間を捕縛したりとかね」
「道具に虐待?」
「そう。道具を雑に扱ったり、壊したり、捨てたりもね。悪いことしたら罰を与えるもんでしょ」
微妙にコルンにも該当するような気がする。モノを作りすぎて、使われなかった物もいくつかある。
「それにそんな道具たちを治してここに働いているの」
だから慕われているのか。ここに来るまでも道具たちがトウキに声をかけていた。
「だから皆さん。トウキさんに慕われていましたね」
「そりゃそうよ!あたいは人気者だもん」
トウキは自信満々に言う。
「そういえば、私はトウキさんに会ってもいないのに人の姿になれたのは・・・」
「あたいの呪力が街の外まで影響が出たってことね。時々あるのよ。旅人がこの領域に入った途端に道具が人になることもないからさ。そういう時、ヨロイトたちの仕事で保護してもらってるの。その一人がユビワちゃんだったのよ」
「では、なぜ私だけ?その領域に入れば、道具が皆人になるものでは?」
「道具には長く使われるほど道具にも力が宿るの。あたいはその力を引き出しただけ。ユビワちゃんの場合は、それだけの力があったから、領域に入っただけで人になれたのよ」
「そういうことですか」
人になれた理由に理解ができた。
「質問を答えたから、あたいからも話していいかな」
「ええ」
「一緒に工場を大きくしない?」
「え!?」
まさか、魔女からの仕事の勧誘になりました。
「行く宛がなかったら、一緒にやろうよ!」
元々コルンの元へと帰るために、ジャンヌと一緒に魔女を退治するつもりだった。これは思わない展開だった。
「え~と・・・」
「来たわよ~」
その時、扉から別の声がした。
扉がドンと開ける。
女に近く、男に近い声。鳥兜の頭と人の体を持っていた。オカマが入っている。
「お待たせ」
「待ってたよ~彼女はキリクン。ハサミだったから、切るのは得意なの」
「そうでしょうね」
「あら。何この子可愛いじゃないの。新人さ~ん?」
キリクンが見つめる。
「指輪だったから、ユビワちゃんよ」
トウキが紹介する。
「キリクン。悪いね。他の仕事入っていたのに」
「いいのよ。姉さんの頼みなら。いい材料が来たっていうんでしょ。見せて~」
「見せる見せるって。どうする。ユビワも見に行く?」
「ええ」
アキセは足を大きく上げる。
アキセの靴は踏めば、煙が包まれる仕組みになっている。煙を出して逃げるつもりだろう。アキセと一緒にいたため、どこに道具があるのかも分かる。
トウキはアキセの行動に察したのか、アキセの股間に蹴る。
「あ・・・」
アキセは青ざめ、足を内股にして痛みを抑えている。
「簡単に逃がすと思う」
トウキは見下ろす。
「うわ!姉さん。怖いことするな」とタイコマは言う。
「何よ。男はそこが弱点でしょう!あ!男は大抵これ効くから覚えた方がいいよ」
「は・・・」
まあ、いつかは使ってみましょう。
「そうだ。ヌノノはキリクンを呼んでね」
「あいよ」とヌノノは、どこかに飛んでいった。
「じゃあ行こう!」
トウキに引っ張られる。
トウキの家はとても大きかった。2階立ての木造建築だった。
アキセはヨロイトとタイコマと一緒に隣の建物へと消えた。
ユビワはトウキに引っ張られるまま、家に入り、客間のような部屋に案内される。部屋は、奥に大きい窓の前に机。その前に長机とその両端に長椅子が配置されている。
「本当は和室にしたかったけど、お客さんに合わせてこっちの生活様式に変えているんだ。ここでキリクンが来るまでゆっくりお話しよう」
トウキは窓の前の机の上に乗る。
「そうですね」
ユビワは近くの椅子に座る。
なるべく情報収集しよう。
「いくつか質問してもいいですか?」
「いいよ。ドンと来て」
では、遠慮なく。
「ヨロイトさんたちから話を聞きましたけど、ここは人を使って商品に変えていると」
「そうだよ」
トウキは答える。
「まずは飼育場で解体するでしょ。皮とか骨とかね。商品になりそうなものをね。でも、肉は食材になるしかないから、別に売るの」
「それって需要あるんですか?」
「意外に結構あるんだ。魔女でしょ。魔族(アビス)に半獣人(デミ・ビースト)に。それに人間からも買ってくれるの。いや~分からないものだよね~」
トウキは軽く笑う。
「そうですね」
買取手は想像ついたが、まさか同族である人間でも買取るとは世の中分からないものだ。
「人間はどこから収穫しているんですか?」
「やけに人間を気にするのね」
「少し気になったので」
「まあいいけど、捕獲とか買取とかかな。あとは、道具に対して虐待をした人間を捕縛したりとかね」
「道具に虐待?」
「そう。道具を雑に扱ったり、壊したり、捨てたりもね。悪いことしたら罰を与えるもんでしょ」
微妙にコルンにも該当するような気がする。モノを作りすぎて、使われなかった物もいくつかある。
「それにそんな道具たちを治してここに働いているの」
だから慕われているのか。ここに来るまでも道具たちがトウキに声をかけていた。
「だから皆さん。トウキさんに慕われていましたね」
「そりゃそうよ!あたいは人気者だもん」
トウキは自信満々に言う。
「そういえば、私はトウキさんに会ってもいないのに人の姿になれたのは・・・」
「あたいの呪力が街の外まで影響が出たってことね。時々あるのよ。旅人がこの領域に入った途端に道具が人になることもないからさ。そういう時、ヨロイトたちの仕事で保護してもらってるの。その一人がユビワちゃんだったのよ」
「では、なぜ私だけ?その領域に入れば、道具が皆人になるものでは?」
「道具には長く使われるほど道具にも力が宿るの。あたいはその力を引き出しただけ。ユビワちゃんの場合は、それだけの力があったから、領域に入っただけで人になれたのよ」
「そういうことですか」
人になれた理由に理解ができた。
「質問を答えたから、あたいからも話していいかな」
「ええ」
「一緒に工場を大きくしない?」
「え!?」
まさか、魔女からの仕事の勧誘になりました。
「行く宛がなかったら、一緒にやろうよ!」
元々コルンの元へと帰るために、ジャンヌと一緒に魔女を退治するつもりだった。これは思わない展開だった。
「え~と・・・」
「来たわよ~」
その時、扉から別の声がした。
扉がドンと開ける。
女に近く、男に近い声。鳥兜の頭と人の体を持っていた。オカマが入っている。
「お待たせ」
「待ってたよ~彼女はキリクン。ハサミだったから、切るのは得意なの」
「そうでしょうね」
「あら。何この子可愛いじゃないの。新人さ~ん?」
キリクンが見つめる。
「指輪だったから、ユビワちゃんよ」
トウキが紹介する。
「キリクン。悪いね。他の仕事入っていたのに」
「いいのよ。姉さんの頼みなら。いい材料が来たっていうんでしょ。見せて~」
「見せる見せるって。どうする。ユビワも見に行く?」
「ええ」
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