魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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宿器の魔女 前半④

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 ユビワは、ヨロイトたちと一緒に街に向かっていた。気絶したアキセも一緒に。
 このままではジャンヌと離れてしまう。
 そこでジャンヌと連絡とれるようにこっそり召喚していた。
 コルンの発明品の一つ。『伝達インコ』。
 見た目が普通の鳥と変わらないが、伝達したい相手へと飛ぶ。専用の腕輪と繋がっており、相手の連絡と取り、案内もできる。
 後は、タイミングを見計らってジャンヌと連絡をとる。
 それまでに情報収集することにした。
「え~と、あなたたちは、その姉さんに動ける体をもらい、仕事をしている。その仕事は、人を連行することでよろしいですか?」
 ヨロイトたちの話をまとめた。
「そう。俺たちの仕事は、この周辺にいる旅人を連行することなんだ」
「俺たち。どっちかって言うと戦闘向けなんだ」
「ぼくっちなんで、手使えないから、何にも作れないんだ」
 作る?
「それでも仕事を与えるから、姉さんは本当にいい頭だよ」
 作るとは。それに旅人を連行するというのは、つまり。
「あの~もしかして人を連行するのはつまり、人を使って何かを作るってことですか?」
「鋭いね」
「そうだよ。商品を作るんだ」とヨロイトは答える。
 魔女がやりそうなことでした。
 コルンも人を使う時もあるので、気には止めない。
「商品とはどんなものですか?」
「そりゃ~姉さんに訊いた方がいいぞ。もう着いた」
 どうやら着いたようだ。
 森を開けば、街があった。近くにある街というのはここのことだろう。人間を誘うために。
 木造の平屋がいくつも並んでいた。
「広いですね」
 あちこちに叩く音。削る音。擦る音など祭りのように音が騒いでいた。
 住人も一部が道具の体を持っている人や獣のような体を持った道具ばかりで、道具を作っていた。道具たちの職人の街のようだった。
「そういえば、人が見ませんね」
「人は、別の場所で飼育と解体しているんだ」
「そうなんですね」
 アキセもそこに連行するだろうか。
 その時、平屋から少女が出た。
「おう。いたいた」とヨロイトが声を上げる。
「姉さん!新入りだ~」とタイコマは言う。
 どうやらヨロイトたちが話していた姉さんのようだ。
 黒い瞳に黒髪を一度輪にしたツインテール。
 フリルな丈。肩を覆う小さなローブ。腕には紐を巻いている12歳くらいの少女だった。
「何。その子!」
 一瞬で目の前にきた。
「かわいい!」
 目をキラキラしている。
「は・・・」
「あ~ごめんね。あたいは宿器(やどりき)の魔女トウキ・ツクモよ。君は?」
「名前はないですが、指輪だったものです」
「指輪だったんだ。じゃあユビワちゃんだ」
「そのままですね」
 勝手につけられました。
「ねえ。友達になりましょ!」
 急に手を握られる。少し硬い感じがする。
 その前に魔女から友達の誘いとは思わなかった。どうしましょう。
「姉さん」
「ん?」
 トウキに声をかけたのはヨロイトだった。
「こいつがユビワちゃんを襲ったものです」
 ヨロイトとタイコマに両腕を掴まれ、アキセはぶら下がっている。
「あれ?どこ?」
 アキセはタイミングよく起きた。
「もしかして、元持ち主?」
 アキセが子犬のようなうるうるな瞳で見つめる。助けてほしいと訴えている。
「思いたくない人です」
 はっきり答える。
「いろいろとひどい目にあったんでしょ。分かるよ。その気持ち」
 トウキに同情される。
「まあ、いろいろと・・・」
 失くしたり、投げたり、この間は犬の歯にはめられたこともあった。雑に扱いすぎる。
「おまえな!主人を見捨てるな!」
 アキセは声を上げる。
「うるさいな。全くこれだから人間は」とトウキは呆れるように言う。
「え~と。姉さん?」
「トウキって呼んで。で何?」
「この街に連行した人間は道具になると聞いておりますが、このクズも同様にするんですか」
「え?今なんつった?」と驚くアキセは言うが、無視する。
「同然!」
 トウキは答える。
「そうだな・・・ん?」
 トウキはアキセを見つめる。
「あ!その手。いい商品になりそう!」
 お目が高い。
 アキセの手は、触れればなんでも奪える魔力を持っている。トウキは気付いたのだろう。
「よし。私の解体部屋にレッツゴー!」
「え!?」とアキセが一番に驚く。
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