魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
170 / 654

宿器の魔女 前半④

しおりを挟む
 ユビワは、ヨロイトたちと一緒に街に向かっていた。気絶したアキセも一緒に。
 このままではジャンヌと離れてしまう。
 そこでジャンヌと連絡とれるようにこっそり召喚していた。
 コルンの発明品の一つ。『伝達インコ』。
 見た目が普通の鳥と変わらないが、伝達したい相手へと飛ぶ。専用の腕輪と繋がっており、相手の連絡と取り、案内もできる。
 後は、タイミングを見計らってジャンヌと連絡をとる。
 それまでに情報収集することにした。
「え~と、あなたたちは、その姉さんに動ける体をもらい、仕事をしている。その仕事は、人を連行することでよろしいですか?」
 ヨロイトたちの話をまとめた。
「そう。俺たちの仕事は、この周辺にいる旅人を連行することなんだ」
「俺たち。どっちかって言うと戦闘向けなんだ」
「ぼくっちなんで、手使えないから、何にも作れないんだ」
 作る?
「それでも仕事を与えるから、姉さんは本当にいい頭だよ」
 作るとは。それに旅人を連行するというのは、つまり。
「あの~もしかして人を連行するのはつまり、人を使って何かを作るってことですか?」
「鋭いね」
「そうだよ。商品を作るんだ」とヨロイトは答える。
 魔女がやりそうなことでした。
 コルンも人を使う時もあるので、気には止めない。
「商品とはどんなものですか?」
「そりゃ~姉さんに訊いた方がいいぞ。もう着いた」
 どうやら着いたようだ。
 森を開けば、街があった。近くにある街というのはここのことだろう。人間を誘うために。
 木造の平屋がいくつも並んでいた。
「広いですね」
 あちこちに叩く音。削る音。擦る音など祭りのように音が騒いでいた。
 住人も一部が道具の体を持っている人や獣のような体を持った道具ばかりで、道具を作っていた。道具たちの職人の街のようだった。
「そういえば、人が見ませんね」
「人は、別の場所で飼育と解体しているんだ」
「そうなんですね」
 アキセもそこに連行するだろうか。
 その時、平屋から少女が出た。
「おう。いたいた」とヨロイトが声を上げる。
「姉さん!新入りだ~」とタイコマは言う。
 どうやらヨロイトたちが話していた姉さんのようだ。
 黒い瞳に黒髪を一度輪にしたツインテール。
 フリルな丈。肩を覆う小さなローブ。腕には紐を巻いている12歳くらいの少女だった。
「何。その子!」
 一瞬で目の前にきた。
「かわいい!」
 目をキラキラしている。
「は・・・」
「あ~ごめんね。あたいは宿器(やどりき)の魔女トウキ・ツクモよ。君は?」
「名前はないですが、指輪だったものです」
「指輪だったんだ。じゃあユビワちゃんだ」
「そのままですね」
 勝手につけられました。
「ねえ。友達になりましょ!」
 急に手を握られる。少し硬い感じがする。
 その前に魔女から友達の誘いとは思わなかった。どうしましょう。
「姉さん」
「ん?」
 トウキに声をかけたのはヨロイトだった。
「こいつがユビワちゃんを襲ったものです」
 ヨロイトとタイコマに両腕を掴まれ、アキセはぶら下がっている。
「あれ?どこ?」
 アキセはタイミングよく起きた。
「もしかして、元持ち主?」
 アキセが子犬のようなうるうるな瞳で見つめる。助けてほしいと訴えている。
「思いたくない人です」
 はっきり答える。
「いろいろとひどい目にあったんでしょ。分かるよ。その気持ち」
 トウキに同情される。
「まあ、いろいろと・・・」
 失くしたり、投げたり、この間は犬の歯にはめられたこともあった。雑に扱いすぎる。
「おまえな!主人を見捨てるな!」
 アキセは声を上げる。
「うるさいな。全くこれだから人間は」とトウキは呆れるように言う。
「え~と。姉さん?」
「トウキって呼んで。で何?」
「この街に連行した人間は道具になると聞いておりますが、このクズも同様にするんですか」
「え?今なんつった?」と驚くアキセは言うが、無視する。
「同然!」
 トウキは答える。
「そうだな・・・ん?」
 トウキはアキセを見つめる。
「あ!その手。いい商品になりそう!」
 お目が高い。
 アキセの手は、触れればなんでも奪える魔力を持っている。トウキは気付いたのだろう。
「よし。私の解体部屋にレッツゴー!」
「え!?」とアキセが一番に驚く。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

処理中です...