魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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聖女に憧れる少女⑦

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 2日たった。
ジャンヌは、城の客室のベッドの上で窓を眺めていた。
 魔女を倒したが、怪我をしてしまった。サーラがお詫びをさせてくださいと申し訳なさそうに何度も言った。
 ジャンヌ自身もサーラに後ろめたいことがある。サーラのご厚意を受け取り、城で治療することにした。
 諸悪の根源のアキセは行方不明。多分おそらく。
「大丈夫ですか」
 声をした方へ向けば、セザールが見舞いにきた。
「ええ。それなりに」
「あなたのことは内密にしました」
「助かる」
 聖女が存在すれば、何かと面倒くさくなる。
「そもそもサーラ様の家出や暗殺事件は外部に流せません。ついでです」
「そう。お姫様は?」
「今、陛下と婚約者の元で話をしております」
 今回の騒動で話しているのだろう。
 それに城に入ってからサーラとはまだ会っていない。合わせる顔がないのだろう。
「失礼しますが。聖女様には感謝と迷惑をかけたので、口に出すつもりはございませんが、申し上げます」
 セザールは言う。
「サーラ様にも非がありますが、憧れた方に無言で顔を叩くというのはいかがなものかと」
 感情的になりすぎた。嫌な自分と重なってしまい、あの態度を取ってしまった。やり過ぎたと反省はしている。
「私も感情的だった」
「謝罪ならサーラ様にお願いします」
「聖女に対して強気で言うのね」
「私は、サーラ様の執事です。多少の指導はしますが、守るのも私の仕事です」
 セザールは強気で言う。
「あの子は恵まれているわね」
その時、ドレスを着たサーラが部屋に入ってきた。
「似合っているわよ。お姫様らしくて」
 サーラが視線を合わそうとしない。
「本当に申し訳ございません・・・」
 申し訳なさそうな顔だった。
「あなたの謝罪は何度も聞いた」
「はい・・・」
「私も悪かった」
「そんな!今回のことは私が見勝手な行動が起こしたのです・・・」
 サーラは視線をそらす。
「責任と負い目を感じているならもういいよ」
 口を柔らかく言う。
「あなたの気持ちに分からないことはない」
「え・・・」
「私も憧れていた聖女がいたから分かる」
「し・・・聖女様も?」
「そう。私も見てほしくて、認めてほしくて。でも結局それは自己満足に納まりたかっただけだったの」
 悟るように言う。
「迷惑をかけるまで自分を認めてほしいって、どんな目立ちたがり屋なんだよって思ったよ」
 サーラがびくついている。サーラも感じたようだ。
「だから。認めてもらえる自分じゃなくて、自分でいられる自分で歩いていけばいいかなってさ」
 サーラを見つめる。
「自分でいられる自分というのは?」
「それは、あなたが見つけるものよ。人によって答えが違うもの。見つかっていなければ、探すしかないのよ。これが師匠としてのアドバイスよ」
「せ・・・師匠」
「聖女が私でよかったわね。ここまで付き合ってくれるなんてないわよ」
 他の聖女なら無視しているかもしれない。
「あと、私はジャンヌよ。この名で呼んでいいから」
「はい!」
 サーラは嬉しく返事する。


 夜。
 よし、ジャンヌはすっかり寝ている。
 『なんでも遮断マント』で姿をここまで姿を隠していた。
 筋肉質な女どものキャバクラの仕返ししようと考えていた。丁度サーラがジャンヌの地雷を踏んでしまった時に思いついた。ロザリオを盗み、サーラに魔女を戦わせ、ジャンヌを苦しめようと。作戦はうまくいった。もう少し長く痛めつけてほしかったが、死ぬのは困る。だからあの時、思わず魔女を魔術で吹き飛ばした。
今は療養中だ。体が動けないほどに。動いたとしても魔力で『光』をこっそり奪えばいい。じっくり楽しもう。
 寝ているジャンヌに手を出そうとした時だった。
 顔を掴まれる。
「待ってた~」
 指の隙間からジャンヌの笑顔で見つめる。
「ちょ・・・待った。まず話合おう」
「話し合う~」
 ジャンヌの口調が強くなった。
「何を話し合うつもりだったの?」
 笑顔で顔をさらに強く掴んでくる。
「イタイイタイイタイです!」
「私からロザリオを奪い、サーラを魔女に退治させようとしてどういうことなの?」
 強くなってきた。顔に食い込んできた。
「正直に言いなさい」
 ドスの入った声で言う。
「すみません・・・俺をあのキャバクラに入れた仕返しにやりました・・・」
「だと思った」
 ゴキッ。
「今。骨いった!骨いったって!」
「大丈夫よ。どーせ、次の話でイラつくほどに復活するんだから」
「そんなメタいこと言うなよ」
 ロザリオに白い炎が纏ってる。
 殺される。
「おまえ、怪我しているだろ。安静していた方がいいって」
「仕返しはべつばら~」
 ロザリオを握る。
「意味わからないって!」


 その夜は悲鳴が響いたという。
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