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聖女に憧れる少女⑤
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「サーラ様。準備しますので、休んでください」
セザールは静かに部屋を出る。
部屋はサーラだけになった。
聖女には憧れていた。女でありながら、旅をしながら魔女を退治していく。その生き方がかっこよくて、羨ましい。自由でもっと世界を見てみたい。けど、結婚すれば、もう国の外へも出ることもなく、聖女になって旅をする夢もなくなる。そんな時に聖女であるジャンヌに会えて、チャンスだと思えた。これで夢は叶えるって。
でも、ジャンヌを怒らせてしまった。何も言ってくれなかった。
動機のせい。見込みがないから。分からない。分からない。分からない。
「あ~あ。ジャンヌもひどいことするよな」
セザールではない。声をした方に振り向けば、長椅子に寄り沿うアキセが立っていた。
「あなたは、聖女様に付き纏っているトラブルメーカーですね」
「そんな認識していたのか」
アキセは嫌そうに返す。
「ジャンヌは、今の君には聖女になれないって思ってるんだ。だから証明すればいいんだけ」
アキセの手に十字架を持っていた。
「これは・・・」
ジャンヌが持っていた十字架だった。
「ジャンヌの聖剣」
「聖剣?」
「聖女になれば、使える代物だ」
「これを使えば・・・」
十字架を受け取る。
「そういえば昨日、魔女が出たって言っていたな」
街から離れた森の中。
細い木がいくつも生え、空を覆うほどの枝が広がっている。
「この辺りで魔女の目撃情報があったそうです」
「ふ~ん。お。早速来たぞ」
その時、森の奥から紫色の雷の槍がいくつも飛んできた。
十字架を握る。
ジャンヌのように十字架に光の刃ができる。十字架に集中する。それでも十字架のままだった。
「なんで!」
もう目の前まで紫の槍が迫ってきた。
「うわ!」
しゃがみ込み、紫の槍は背後の木に刺さった。
「これをどうすれば・・・」
訊こうにもアキセはいなかった。
顔に何かがかすった。触れば、赤い血が付いていた。
「え・・・」
一瞬頭が真っ白になりかけた。呼吸が乱れる。また奥から紫の槍が迫ってくる。
「いやああああああああああああああああああ」
その場から死に物狂いで走る。
逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ殺される。
その時太ももにかすり、そのまま倒れる。
足を見れば、太ももの皮がえぐられ、血が流れていた。
「あ・・・あ・・・」
さらに呼吸が乱れる。
紫の槍が雨のように降ってくる。
もう逃げられない。死の覚悟を決め、目をつぶった時だった。
痛みがない。死んでない。
「大丈夫?」
声がした。
目を開ければ、ジャンヌが立っていた。
「師匠・・・」
「これで分かったでしょ。あんたには無視だって・・・」
ジャンヌは振り向くことなく、前を立つ。
その時、木に紫の槍が刺さり、木がサーラの方へ倒れる。
動けない。逃げなきゃいけないのに動けない。
ジャンヌに抱かれ、迫る木から後ろへ跳んで避ける。
その時だった。
「う!」
ジャンヌが呻き声を上げる。
倒れた木に当たったわけではない。ジャンヌの足に紫の槍が刺さっていた。足に刺さった紫の槍は白い炎に燃やされた。
ジャンヌは血が流れる足に手を添え、白い炎を結晶化し、血を止めた。
「し・・・聖女様・・・」
「平気よ」
ジャンヌは心配させないように言う。
「私・・・」
その時、奥から音がした。
「魔女のくせに聖女の見分けがつけないなんて。よっぽどセンスがないわね」
魔女に話かけているのだろうか。
「あら、あなた。この間の聖女じゃないの」
頭に2本の角。下半身が紫馬。上半身を鎧。巨大な槍を持っていた。
「あんただったか。らいばの魔女ジネリア・バイコーン」
セザールは静かに部屋を出る。
部屋はサーラだけになった。
聖女には憧れていた。女でありながら、旅をしながら魔女を退治していく。その生き方がかっこよくて、羨ましい。自由でもっと世界を見てみたい。けど、結婚すれば、もう国の外へも出ることもなく、聖女になって旅をする夢もなくなる。そんな時に聖女であるジャンヌに会えて、チャンスだと思えた。これで夢は叶えるって。
でも、ジャンヌを怒らせてしまった。何も言ってくれなかった。
動機のせい。見込みがないから。分からない。分からない。分からない。
「あ~あ。ジャンヌもひどいことするよな」
セザールではない。声をした方に振り向けば、長椅子に寄り沿うアキセが立っていた。
「あなたは、聖女様に付き纏っているトラブルメーカーですね」
「そんな認識していたのか」
アキセは嫌そうに返す。
「ジャンヌは、今の君には聖女になれないって思ってるんだ。だから証明すればいいんだけ」
アキセの手に十字架を持っていた。
「これは・・・」
ジャンヌが持っていた十字架だった。
「ジャンヌの聖剣」
「聖剣?」
「聖女になれば、使える代物だ」
「これを使えば・・・」
十字架を受け取る。
「そういえば昨日、魔女が出たって言っていたな」
街から離れた森の中。
細い木がいくつも生え、空を覆うほどの枝が広がっている。
「この辺りで魔女の目撃情報があったそうです」
「ふ~ん。お。早速来たぞ」
その時、森の奥から紫色の雷の槍がいくつも飛んできた。
十字架を握る。
ジャンヌのように十字架に光の刃ができる。十字架に集中する。それでも十字架のままだった。
「なんで!」
もう目の前まで紫の槍が迫ってきた。
「うわ!」
しゃがみ込み、紫の槍は背後の木に刺さった。
「これをどうすれば・・・」
訊こうにもアキセはいなかった。
顔に何かがかすった。触れば、赤い血が付いていた。
「え・・・」
一瞬頭が真っ白になりかけた。呼吸が乱れる。また奥から紫の槍が迫ってくる。
「いやああああああああああああああああああ」
その場から死に物狂いで走る。
逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ殺される。
その時太ももにかすり、そのまま倒れる。
足を見れば、太ももの皮がえぐられ、血が流れていた。
「あ・・・あ・・・」
さらに呼吸が乱れる。
紫の槍が雨のように降ってくる。
もう逃げられない。死の覚悟を決め、目をつぶった時だった。
痛みがない。死んでない。
「大丈夫?」
声がした。
目を開ければ、ジャンヌが立っていた。
「師匠・・・」
「これで分かったでしょ。あんたには無視だって・・・」
ジャンヌは振り向くことなく、前を立つ。
その時、木に紫の槍が刺さり、木がサーラの方へ倒れる。
動けない。逃げなきゃいけないのに動けない。
ジャンヌに抱かれ、迫る木から後ろへ跳んで避ける。
その時だった。
「う!」
ジャンヌが呻き声を上げる。
倒れた木に当たったわけではない。ジャンヌの足に紫の槍が刺さっていた。足に刺さった紫の槍は白い炎に燃やされた。
ジャンヌは血が流れる足に手を添え、白い炎を結晶化し、血を止めた。
「し・・・聖女様・・・」
「平気よ」
ジャンヌは心配させないように言う。
「私・・・」
その時、奥から音がした。
「魔女のくせに聖女の見分けがつけないなんて。よっぽどセンスがないわね」
魔女に話かけているのだろうか。
「あら、あなた。この間の聖女じゃないの」
頭に2本の角。下半身が紫馬。上半身を鎧。巨大な槍を持っていた。
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