魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
149 / 654

聖女に憧れる少女②

しおりを挟む
 サーラは辺りを見てばかりだった。
「何、気にしているのかな~」
「いいえ。なんでもありません・・・」
 サーラが視線をそらしている。
 確実に何かを隠している。この街で。
おそらくサーラの馴染みのある街なのは確かだ。といってもこの街は、王都への通り道にもなっている。もしかしたら、出身が王都の方かもしれない。
 ここはじっくり探すしかない。仕事に支障が出ないために。
「このところ休んでいないから、しばらく休もうかな~」
 サーラにわざと聞こえるように言う。
「しばらくと言いますとどのくらいですか。明日には出ます?」
 やっぱり怪しい。
「しばらくって言葉の意味分かってる」
「そうですね。明日ではないですね・・・」
 サーラがとても嫌がっている。長居はしたくないご様子。
「もう夜だし。宿を探しましょう」
「そうだな。部屋は二つで俺とジャンヌが一緒ということで」とアキセが横から入る。
「部屋は一つ」と返す。
 絶対に阻止。確実に夜這いするつもりだ。
「んだよ。こいつに教えるのか。3Pでもいいぞ」
 パシっとアキセの顔を叩く。
「3P?」
「いいの。聖女とは関係ないから」
 教えたくない。
「師匠。そんなに嫌ならなんでわざわざ一部屋にするんですか?」
 サーラが訊く。
「師匠じゃない。こいつはね。一緒にいたくないけど、目を離すと何をしてかくか分からない不幸を呼ぶ男なの」
 親指を立て、アキセを指す。
「つまり、この男が現れたら、もう何か企んでいるの。目を離すわけにはいかないの」
「いつもじゃないだろ。素直にいいなよ。アキセ君と離れたくないって」
 耳障りだったのでアキセの顔を掴む。
「イタタタイタイ」
 蔑む目で見つめる。
「師匠・・・」
 さすがにサーラも引いている。
 ダメだ。もうこいつと一緒にいたくない。視界に入るだけでも虫唾が走る。
 その時丁度いい店があった。
「ちょっと待っててね」
 サーラに言い、顔を掴んだアキセを引きずる。店の扉を開け、アキセを投げる。
「イってーな!」
 アキセが怒鳴った途端に首を筋肉質な腕で挟む。
 それは美人とは呼べない筋肉質の女だった。
「え?」
 アキセは青ざめる。
「あら、いい男♡」
 女は、アキセを気にいったようだ。
「朝までよろしく~」
 ジャンヌは静かに閉める。
 そうここは、筋肉女専門のキャバクラだったので、朝までアキセを預けることにした。
 アキセの悲鳴がこんなに気持ちいいことはない。
「そんなに嫌なことされたんですか?」
「朝までかかるわよ」
「遠慮します・・・」


 宿を見つけ、サーラと部屋で寝静まった頃だった。
 物音がする。
 もうアキセが逃げ出してきたのか。やり返すために夜這いといったところか。
 音が近づいてきたところで。
「いい加減にしろ!」
 布団から起き上がり、殴りかかる。
 当たった。
「あれ?」
 アキセかと思ったが、違った。
ただ全体に黒い服を着て、顔も見えていない。体型からして人のようだ。
 その時。
「ジャンヌ!おまえな!」と窓から顔にキス跡と服がボロついたアキセが入ってきた。
 あのキャバクラから逃げたのか。
 アキセは黒服を見る。
「誰?そいつ?」
 アキセも知らないようだ。
「なんだ?あんたが仕掛けたんじゃないのか」
「俺は堂々と夜を狙う」
「あ“あ”!」
 その時、急に煙が発生する
「何よ。これ」
 煙でむせて、咳き込む。
「たく」
 その時、急に風が吹き、煙が晴れた。
 アキセの手元に記号が浮いていた。指飾りで魔術を使ったようだ。
 煙が晴れれば、気絶した黒服が消えていた。
 黒服が煙幕をまいただろうか。
 そういえば、こんなに騒いでいるのにサーラは起きてこない。どれだけマイペースのかと思えば、ベッドの上で寝ていたはずのサーラの姿がない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

処理中です...