魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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聖女になりたかった魔女④

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 泣いているトリスは、叫び声を上げる。
 耳を塞ぐほどの高音の叫び声が響き、兵士たちの頭を飛ばされ、体は人形のように倒れていく。
 ジャンヌは、『光』の浄化により助かった。
 トリスは長い黒い手は前後に動かし、迫ってくる。
 ロザリオで構えるが、ジャンヌを素通りする。
「え?」
 襲わなかった。
 魔女として覚醒しても理性は残っているのか。だとしたら、狙っているのは王様だろう。あの方向は街がある。そして城がある。襲撃する。
 すぐに後を追う。


 トリスが通った後は、ドロっとした黒い水溜りがある。黒い水溜りから『呪い』が漂っている。
 その先に黒い水溜まりの中に誰かが倒れている。近くに見れば、半身溶けているジャックだった。ほとんど骨が見え、体が腐っていた。
 魔女から離れたのか。
「た・・す・・・けて・・・・」
 生きているが、死にかけている。
「おかあ・・・さん・・・を・・・」と言って、ジャックは骨となり、塵となって消えた。
 ジャックは魔女の一部となって消えた。
 トリスは、子供たちを死なせないように取り込んだのだろうか。だとしてももう人間ではなくなり、魔女の一部として生きることになってしまった。
ジャックがジャンヌに助けを求められた。トリスを助けてほしいと。あのままではトリスは救われないと感じたのだろう。
「分かった・・・」



 黒い水溜まりを辿れば、街に入った。昼間の時と違って、赤く染まり、黒いモヤが漂っている。
『呪い』の濃度が高まり、暴動が起きている。建物を破壊し、人は殴り合っている。武器を持って襲っている。一部が人の姿をしていない。
『呪い』の影響を受け、魔族(アビス)化が進行している。急激な魔族(アビス)化は、異形な姿をし、理性を失う。
 トリスが原因なのか。この現状を治めるにしてもトリスを殺すしかない。
 黒い水溜まりは城まで続いていた。
 城の門番が破壊され、城の中へと進入する。玉座にたどり着いた。
「全てはおまえのせいだ!」
 トリスが王様を追い詰めていた。
 壁が破壊されている。壁を壊して玉座に侵入したといったところだろう。
「悲嘆(ひたん)の魔女トリス・スクリームが殺してやる!」
 トリスが王様に手をかけようとした時、白い炎を飛ばし、黒い手を燃やす。
 叫び声を上げる。
 背後からロザリオを刺し込む。
「殺させない!」
 トリスは大きく黒い手を払い、ジャンヌを飛ばす。
 ジャンヌは壁に激突される。
「子供たちを殺させない!」
 トリスは腹から異形な姿をした子供を出す。
 殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで。
 泣きそうな声で子供たちが叫ぶ。
――「僕たちは、シスターが魔女でも一緒にいるよ!だって僕たちのお母さんだもん!」
 変わり果てた子供たちを見て、ジャックや子供たちを思い出す。
 トリスは泣きながら見つめる。
――「私はできる限り子供たちといたいだけです」
 魔女とは思えない笑顔のトリスを思い出す。
「子供を使って動揺を誘うつもり。随分と成り下がったもんね」
ジャンヌはトリスを見下す。
「結局おまえは魔女なんだよ・・・どんなに善意や常識を持っていたとしても・・・手段を選ばないワガママ自己中魔女と変わらないのよ。魔女!」
立ちながらトリスに睨みつける。
「だから。あんたをただのトリスにまでに浄化してやる」
 ロザリオを握り直す。
「もうこれ以上、子供たちを巻き込ませるな」
 ロザリオに白い炎を纏う。
「殺さないでぇええええええええええええええ」
 トリスは腹から子供を伸ばしていく。
 白い炎を纏ったロザリオを大きく払う。
 子供たちを燃やし、トリスを燃やしていく。
「聖女があなたでよかった」
 一瞬聞こえたトリスの声が嬉しそうに聞こえた。
――おまえは魔女なんだよ。だからそんなことを言わないで。
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