魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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合体獣戦士ジュウオウガー⑥

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「別に燃やしてもいいけど、どうしてわざわざ?」
 以前、ルシアが持っていた本を白い炎で燃やしたことで呪力が消えた。おそらく今回も同様だろう。
「このままだとこの街が消えるかもしれないんだ」
 エドの発言に首をかしげる。
「それってどういうこと?」
「最初は、図書室にこの本を見つけてからだったんだ。内容も面白くて。皆で読むようになってからこの本と同じようにジュウオウガ―とカイジュウが出てきたんだ。本から飛び出したように」
 それは、ルシアの呪力で実現したのだろう。
「僕とバリーとチャドがジュウオウガ―を操縦して、皆と一緒にカイジュウを倒すことになったんだ。皆で協力してカイジュウを倒して。勝って。嬉しくて。街も守れて。よかったんだ。よかったんだ・・・」
 ん?
「ちょっと待って。操縦者の1人がヨウタって聞いているんだけど」
「違うんだ。ヨウタはこの本に載っている操縦者の名前なんだ。ヨウタがバリーなんだ」
「それって・・・」
「みんな、少しずつおかしくなったんだ。この本の登場人物の名前で呼んたり、性格もその登場人物に変わったりしたんだ。僕なんかエドじゃなくてゲンって呼ばれるんだ」
ルシアの呪力は、ただ実現するだけではないようだ。人格まで変えられるのか。
「誰も皆気付いていないんだ。なんかどれが本物なのか分からなくなってきたんだ。それがだんだん怖くなったんだ」
 エドは小さく震える。
 おそらくエドは、抗体を持っていたからルシアの呪力を免れたのだろう。
「あの本が原因なら、燃やせば消えるかもしれないって、本を探したんだ」
「もしかして本は何冊もあるの?」
 エドは小さく頷く。
「4冊あったんだ。それがいつの間にか本が消えちゃって・・・どうしようもなかったんだ。その時にこの本を見つけた。最終章で書いてあったから、もしかしたら、これで終わるかなって思って読んでみたら・・・」
 エドは言葉を詰まる。
「カイジュウのボスが現れるんだ・・・戦っても強すぎて勝てないんだ。街にも侵入されて、町の皆を食べるんだ。ジュウオウガ―で止め(と)に入るんだけど、ボスにやられるんだ。その時のジュウオウガ―のエネルギーが爆発して、ボスと街と一緒に消えていくんだ」
「え・・・」
 返事を返すまで3秒かかった。
――なんでそんな面倒くさい巨大生物を考えたのよ。この作者は!
 一番に思ってしまった。いや、今はそこに突っ込むところではない。
「これが実現したと思うと怖くて・・・誰も相談できなくて・・・その時、お姉ちゃんとお父さんが話しているところを聞いたんだ。全部魔女の仕業でお姉ちゃんは聖女だって聞いてもしかしたら、解決してくれるかもしれないって」
 それで追いかけてきたのか。
「お姉ちゃんなら、なんとかできるんですよね」
 エドは最後の希望に託すように訴える。
「そうね。私が本を燃やせば、全てが終わるはず」
「本当に!」
 希望が見えたように目が輝く。
「本当に燃やしていいんだね」
 カイジュウも消えれば、防衛手段であるジュウオウガ―も一緒に消える。
「この街を守れるなら・・・」
 エドも覚悟を決めたようだ。
 欲望に目が眩んでいる町長と比べたら、街を守りたいエドの方が純粋でまだ助けたいと思える。その気持ちに答えよう。
「分かった」
「ありがとうございます」
 本をもらおうとしたが、目の前で何かが通り、本が消えていった。
「何?!」
「本が!」
 エドの手に本がなかった。
 ぎいいいいいいいいいいいいいいいと鳴き声。その方向に本をくわえた鳥型のノレッジが飛んでいった。
「魔女め!」
 その時、サイレンが鳴る。
「カイジュウが現れたんだ」
 遠くから黒い影が見える。
「あれ・・・この本に載っていたカイジュウだ・・・・」
 エドが青ざめる。
 エドの足元に穴が空いた。出動の合図だった。
 エドは、その穴を見て怯える。
 恐れていたことが現実になってしまった。あの本を燃やさなければ、結末通りに現実が起きてしまう。
「しっかりして!」
 エドの肩を掴み、目を合わせる。
「あのカイジュウと戦えるのもあなただけなのよ」
「でも・・・負け・・・」
「その前にあの本を燃やす!それまでに時間を稼けばいいから」
 エドは、戸惑った様子だったか、改めて見つめる。
「分かった。絶対に燃やしてね」
 エドは穴の中に入る。
「そのつもりよ」
 ジャンヌは、ノレッジを追いかける。
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